元2025 7月 韓国
病的笑い・泣き(Pathological Laughing and Crying:PLC)は、脳卒中のあとに突然こらえきれない笑いや泣きが出てしまう症状である。感情そのものがおかしくなるわけではなく、その出し方を調節する仕組みが壊れることで起きる。
なかでも橋(pons)という脳幹の一部を傷めた脳卒中では、PLCが比較的よく見られることが知られている。しかし、橋の損傷がなぜPLCにつながるのか、特に脳のどこに代謝の異常が出ているのかははっきりしていなかった。
そこで、橋脳卒中患者を対象に、脳の糖代謝を調べるPET検査を使ってPLCの背景をくわしくしらべてみたそうな。
2011年から2021年のあいだに入院した、初めて橋脳卒中を起こした患者のうち、発症から6か月以内にPET検査を受けた49人を対象とした。
* PLCが出た人…20人
* PLCが出なかった人…29人
PLCの診断は入院中の記録をもとに行い、重症度はPathological Laughter and Crying Scale(PLACS)というスコアで評価した。PET画像は専用ソフトで解析し、年齢や病変の大きさの影響を取り除いたうえで、両グループの脳代謝を比較した。また、PLCグループの中でスコアと代謝変化の関係も調べた。
次のことが分かった。
・PLCが出た人では、右側の前頭葉の一部(前頭上回)で糖代謝が低下していた。・さらに、PLCの症状が重いほど、右側の側頭葉の一部(中側頭回や下側頭回)でも代謝低下が目立った。・これらの部位は、感情や社会的なふるまいの調整に関わる「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という脳のネットワークの一部である。
橋脳卒中のあとに出るPLCは、橋そのものの損傷だけでなく、右半球の前頭葉や側頭葉の働きが落ちることと関係していた。橋の損傷が遠く離れた脳のネットワークに影響を及ぼし、その結果として感情のブレーキがきかなくなる可能性がある。PLCは単一の部位の障害ではなく、複数の脳のつながりが乱れることで起きる症状であり、治療やリハビリでは橋の病変だけでなく、こうしたネットワークの回復も視野に入れることが大切である、
というおはなし。
感想:
『DMNを整えるためにできることはありますか?』
以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答コピペ↓
はい、直接的に「DMNを鍛える薬」や「DMN専用リハビリ」というものは現時点では確立されていませんが、研究報告や臨床経験からDMNの機能を保つ・整える可能性がある活動はいくつか知られています。
橋脳卒中後のPLCだけでなく、認知機能や感情の安定にも役立つかもしれません。
1. 外部刺激を通じてDMNと他ネットワークのバランスを整える
- 注意訓練(Attention Training)
例:一点集中→周囲全体に注意を広げるなど、注意の切り替え練習
→ DMNは「ぼんやり時」に活発、課題時には静まるので、この切り替えが重要 - マインドフルネス瞑想
雑念を観察して手放す訓練が、DMN過活動の抑制や接続パターン改善に関係する報告あり
2. 社会的・感情的なやりとり
- 会話や物語の理解
物語を聞いて登場人物の気持ちを想像することは、DMNの社会的認知ネットワークを刺激 - 感情表出を安全に試す
喜怒哀楽を表現する練習(音読・演技・音楽セラピーなど)で、感情制御回路を間接的に刺激
3. 身体活動
- 有酸素運動(ウォーキング、エアロバイクなど)
脳血流と代謝を改善し、DMNの結合性維持につながる報告あり - 二重課題運動(歩きながら暗算、歌いながら動作)
課題切り替えによってDMNとタスクネットワークの相互作用を鍛える
4. 視覚・聴覚刺激を活用した神経刺激的アプローチ
- 音楽療法
特に個人の好みや思い出に関連する曲はDMN活動を強く引き出す傾向あり - 視覚イメージ訓練
旅行や過去の体験を頭の中で細かく思い描くことはDMN活性に関与
💡 まとめると
DMNは「休んでいるときに働く脳のネットワーク」だが、ぼんやりしっぱなしではなく、オン・オフの切り替え能力が健康に重要。
注意訓練、マインドフルネス、感情的やりとり、運動、音楽やイメージ刺激などが、DMNの調整に役立つ可能性がある。
