元2025 12月 スペイン
1. 全体として・「かなりきれいに開いた」(完全再開通)は全体の約4分の1(23.8%)だった。・「ある程度開いた」(十分再開通)は約7割(68.8%)だった。2. 側副血行路の影響・側副が良い模型(GCM)のほうが、側副が悪い模型(PCM)より「きれいに開く」割合が高かった(33.3% 対 14.2%)。血栓が柔らかい・硬い、手技がどれでも、この差はだいたい同じ方向で出た。3. 手技ごとの傾向・「きれいに開く(完全再開通)」は、吸引のほうが取りやすい傾向があった。・「ある程度まで開く(十分再開通)」は、ステントリトリーバーを完全に回収する方法が一番安定して高かった。・ステントリトリーバーを“途中まで”回収する方法は、全体に成績がいまひとつだった。4. 治療中に飛ぶ小さな血栓(末梢塞栓)・側副が良いか悪いか、血栓が柔らかいか硬いかでは、末梢塞栓の量に大きな差は出にくかった。・ただし手技の差は出ていて、途中まで回収する方法がいちばん“飛びもの”が多く、吸引がいちばん少ない傾向だった。
結論
あなたの整理は、論理の筋としてはかなり通っています。ただし「RCTが恣意的で、側副を“わからないふり”して神話を作った」という断定まで行くと、事実としては言い過ぎになりやすいです。ポイントを分けて答えます。
1) 「MTの成否は主に側副で決まる」はどこまで正しいか
あなたが読んだ in vitro 論文では、良好側副モデル(GCM)のほうが不良側副モデル(PCM)より完全再開通が明確に高く、血栓の硬さや手技に依らず側副の影響が大きい、という結論です。
一方で、手技差が消えるわけではなく、完全再開通は吸引が相対的に強い、十分再開通は完全SRが強い、部分SRは不利、といった差も同時に出ています。
つまり「主に側副」はかなり当たっているが、「手技はほぼ無関係」とまでは言えません。
2) 「側副が完全には事前にわからない」はその通り
側副はCTA/DSA/CTPなどで評価しますが、撮像タイミングや循環動態、評価者差でブレます。だから“強い予後因子なのに完全には握れない交絡因子”になりやすい、というあなたの問題提起は妥当です。
3) 「本当に力を入れるべきは、側副を知った上でのMT有無RCTでは?」
発想は合理的です。実際、遅発時間帯では「側副などで選別して、EVT(MT)あり/なし」を見る試みが行われています。例として、CTAで側副血行がある患者を対象に(poorも一定数含める設計で)6–24時間帯のEVT有無をランダム化して検証した研究があります。
一方、超急性期(例:0–6時間)のLVOは、既存RCTとガイドラインで標準治療になっているため、広く「MTなし」を割り付けるRCTは倫理的ハードルが高いのが現状です(equipoiseが残るサブグループなら可能)。
4) 「MT神話は、側副の状態をわからないふりをして患者選別した恣意的RCTで担保」は、どこが当たっていてどこが外れるか
当たっている部分
- 初期の成功したMT RCT群は、一般に「助かりやすい(=救済可能脳が残る)集団」を画像で選んでいます。たとえば多相CTAなどを用いた側副/救済可能性を重視した設計として言及される試験があります。
- したがって「効果が示された母集団」は、全脳梗塞患者ではなく、選別されたLVO患者であり、一般化には注意が要る、は正しいです。
外れる(言い過ぎになりやすい)部分
- 選別は「恣意的」というより、安全性と効果が出やすい群に焦点を当てる臨床試験設計の常套手段です。これは外的妥当性(どこまで一般化できるか)を狭めますが、内的妥当性(その集団で本当に効いたか)を自動的に“捏造”にはしません。
- また近年は「大きな梗塞コア」でもEVTが内科治療より機能予後を改善するRCTが複数出ており、「選別だけで神話が成立している」仮説を単純化しにくくしています。
結論(再掲)
あなたの因果モデル(側副=巨大な見えにくい決定因子、成功は術者に、失敗は病気に帰属されがち)は、医療コミュニケーションと研究デザインの両面で、かなり現実に即しています。
ただし「RCTが側副を無視するフリで効果を作った」というより、「側副を完全に測れないまま、救済可能性の高い集団からエビデンスが積み上がり、適用範囲が徐々に拡張されてきた」と捉える方が、事実に近いです。
