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2025年12月20日

血栓回収は本当に効いている? 成否を分けていたのは「側副血行路」だった

2025  12月  スペイン


脳梗塞で血管が太いところ(大きな血管)が詰まったとき、血のかたまりを取る治療(機械的血栓回収術=MT)が行われる。

しかし、同じように治療しても「すぐにきれいに開く人」と「開きにくい人」がいる。その差に関係しそうなものの一つが、詰まった先へ血を回す“迂回路”である側副血行路(そくふくけっこうろ)である。

そこで、側副血行路が良いか悪いかで、MTの成功率や、治療中に飛ぶ細かい血栓(末梢塞栓)がどれくらい変わるのか、さらに手技(吸引中心か、ステントリトリーバー中心か)で違いが出るのかをくわしくしらべてみたそうな。



・3Dプリントで作った脳の血管模型(in vitroモデル)を使った。側副血行路が充実している模型(GCM)と、側副がほとんどない模型(PCM)の2種類を用意した。
・中大脳動脈(M1)に、長さ10mmの人工血栓を詰めた。血栓は「柔らかめ」と「硬め」の2タイプを使った。
・治療のやり方は、無作為に3つの手技に分けた。

1. 直接吸引(カテーテルで吸って取る)
2. ステントリトリーバー部分回収(途中まで引き込む回収)
3. ステントリトリーバー完全回収(しっかり引き込んで回収)
   ・評価は主に「どれだけきれいに再開通できたか」を見た。完全に近い再開通(TICI 2c–3)と、ある程度の再開通(TICI 2b–3)を分けて判定した。さらに、治療中に飛んだ小さな血栓の量もフィルターで回収して測定した。
   ・合計240回の実験を行った。



次のようになった。

1. 全体として
   ・「かなりきれいに開いた」(完全再開通)は全体の約4分の1(23.8%)だった。
   ・「ある程度開いた」(十分再開通)は約7割(68.8%)だった。

2. 側副血行路の影響
   ・側副が良い模型(GCM)のほうが、側副が悪い模型(PCM)より「きれいに開く」割合が高かった(33.3% 対 14.2%)。血栓が柔らかい・硬い、手技がどれでも、この差はだいたい同じ方向で出た。

3. 手技ごとの傾向
   ・「きれいに開く(完全再開通)」は、吸引のほうが取りやすい傾向があった。
   ・「ある程度まで開く(十分再開通)」は、ステントリトリーバーを完全に回収する方法が一番安定して高かった。
   ・ステントリトリーバーを“途中まで”回収する方法は、全体に成績がいまひとつだった。

4. 治療中に飛ぶ小さな血栓(末梢塞栓)
   ・側副が良いか悪いか、血栓が柔らかいか硬いかでは、末梢塞栓の量に大きな差は出にくかった。
   ・ただし手技の差は出ていて、途中まで回収する方法がいちばん“飛びもの”が多く、吸引がいちばん少ない傾向だった。


この実験では、側副血行路がしっかりしているほうが、MTで血管がうまく開きやすかった。つまり、MTの成績は「道具や手技の差」だけでなく、患者側の“迂回路の強さ”にも強く左右される可能性がある。手技の面では、吸引はうまくいけば“きれいに終わりやすい”一方、ステントリトリーバー完全回収は“ある程度までの再開通を安定して取りやすい”という違いが示された、


というおはなし。

血栓回収って体質ガチャ?



感想:

『MTの成否は、手技や手法にあまりよらず主に側副血行路の状態できまっている。 ただ、側副血行路の状態を事前に完全には知りえない。 うまく回復すれば術者の手柄になり 重篤化すれば病気のせい。
 ほんとうにやるべきは側副血行路の状態をしったうえでのMT有無のRCTなんじゃぁないの? MT神話は側副血行路の状態をわからないふりをして患者選別をおこなった恣意的RCTによって担保されてるんでしょ。』


以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓


結論

あなたの整理は、論理の筋としてはかなり通っています。ただし「RCTが恣意的で、側副を“わからないふり”して神話を作った」という断定まで行くと、事実としては言い過ぎになりやすいです。ポイントを分けて答えます。

1) 「MTの成否は主に側副で決まる」はどこまで正しいか

あなたが読んだ in vitro 論文では、良好側副モデル(GCM)のほうが不良側副モデル(PCM)より完全再開通が明確に高く、血栓の硬さや手技に依らず側副の影響が大きい、という結論です。

一方で、手技差が消えるわけではなく、完全再開通は吸引が相対的に強い、十分再開通は完全SRが強い、部分SRは不利、といった差も同時に出ています。

つまり「主に側副」はかなり当たっているが、「手技はほぼ無関係」とまでは言えません。

2) 「側副が完全には事前にわからない」はその通り

側副はCTA/DSA/CTPなどで評価しますが、撮像タイミングや循環動態、評価者差でブレます。だから“強い予後因子なのに完全には握れない交絡因子”になりやすい、というあなたの問題提起は妥当です。

3) 「本当に力を入れるべきは、側副を知った上でのMT有無RCTでは?」

発想は合理的です。実際、遅発時間帯では「側副などで選別して、EVT(MT)あり/なし」を見る試みが行われています。例として、CTAで側副血行がある患者を対象に(poorも一定数含める設計で)6–24時間帯のEVT有無をランダム化して検証した研究があります。

一方、超急性期(例:0–6時間)のLVOは、既存RCTとガイドラインで標準治療になっているため、広く「MTなし」を割り付けるRCTは倫理的ハードルが高いのが現状です(equipoiseが残るサブグループなら可能)。

4) 「MT神話は、側副の状態をわからないふりをして患者選別した恣意的RCTで担保」は、どこが当たっていてどこが外れるか

当たっている部分

  • 初期の成功したMT RCT群は、一般に「助かりやすい(=救済可能脳が残る)集団」を画像で選んでいます。たとえば多相CTAなどを用いた側副/救済可能性を重視した設計として言及される試験があります。
  • したがって「効果が示された母集団」は、全脳梗塞患者ではなく、選別されたLVO患者であり、一般化には注意が要る、は正しいです。

外れる(言い過ぎになりやすい)部分

  • 選別は「恣意的」というより、安全性と効果が出やすい群に焦点を当てる臨床試験設計の常套手段です。これは外的妥当性(どこまで一般化できるか)を狭めますが、内的妥当性(その集団で本当に効いたか)を自動的に“捏造”にはしません。
  • また近年は「大きな梗塞コア」でもEVTが内科治療より機能予後を改善するRCTが複数出ており、「選別だけで神話が成立している」仮説を単純化しにくくしています。

結論(再掲)

あなたの因果モデル(側副=巨大な見えにくい決定因子、成功は術者に、失敗は病気に帰属されがち)は、医療コミュニケーションと研究デザインの両面で、かなり現実に即しています。

ただし「RCTが側副を無視するフリで効果を作った」というより、「側副を完全に測れないまま、救済可能性の高い集団からエビデンスが積み上がり、適用範囲が徐々に拡張されてきた」と捉える方が、事実に近いです。



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