元2026 1月 アメリカ
脳梗塞の「血栓回収療法(EVT)」は、詰まった血管をカテーテルで開ける強力な治療である。
これまでは、すでに脳のダメージ範囲が広いタイプ(広範な梗塞、large core)では、治療しても効果が乏しい、あるいは危険が増えると考えられがちだった。
ところが最近、広範梗塞を対象にした複数の臨床試験(RCT)がそろってきて、「広範梗塞でもEVTが役に立つ可能性」が現実のものになってきた。
そこで、そのRCT群をまとめ、何が分かって何がまだ不明かを整理してみたそうな。
本論文は総説(Review)である。広範梗塞の患者を対象に、「EVT+内科治療」と「内科治療だけ」を比べた主要RCT(TENSION、LASTE、RESCUE-Japan LIMIT、TESLA、ANGEL-ASPECT、SELECT2 など)を取り上げ、試験ごとの対象患者の決め方(ASPECTSやCTP/DWIなどの画像基準)、評価のしかた(90日後の生活自立度を示すmRSの扱い)、安全性の指標(症候性脳出血など)を横並びで整理している。
次のようになった。
・効果については、多くの試験で「EVTを行うほうが、90日後の生活のしやすさ(mRS)が良くなる方向」を示した、とまとめている。ただし注意点として、mRSの評価方法が試験ごとに少しずつ違うため、同じ“改善”でも見え方は一定ではない(分布の変化で見る試験、ある点で区切って見る試験など)と整理されている。死亡率に関しては、TENSIONとLASTEでは死亡が減った可能性が示された、と述べている。・安全性については、症候性脳出血(sICH)はだいたい低率で、試験全体としてはEVT群だけが極端に増えるという形は強くない、とまとめられている。だが本論文の重要な指摘として、出血が起きても「症候性」と判定されにくい状況がある点を挙げている。特に広範梗塞や重症例では、もともと神経症状が重く、悪化が点数上は見えにくいことがあり、その結果「大きな出血でも症候性に分類されない」可能性があるという。さらに、実質内出血(parenchymal hemorrhage)は30~70%と頻繁に起こり得る、と書いている。・画像での判定については、現状の画像評価は万能ではなく、ダメージ範囲を実際より大きく見積もってしまう可能性(ghost core、DWIの一部可逆性など)があり得る、と述べている。つまり「広範梗塞に見える=もう回復しない」と単純に決めつけにくい面がある。また、回復を左右する要因は梗塞サイズだけでは説明しきれず、梗塞サイズが説明するのは43%程度にとどまる、という趣旨も書かれている。・そして総説全体として、「適応が広がった」のは事実だが、まだ十分に検証されていない患者層や未解決の論点が多い、という姿勢を繰り返し示している。
広範な梗塞(large core)であっても、EVTは一定の条件では利益が期待できることが、複数のRCTで示されてきた。したがって「広範梗塞だからEVTは無意味」とする古い見方は修正が必要であり、治療の適応は実際に広がったと総説は位置づけている。
一方で、(1) 画像で広範梗塞を判定すること自体に誤差があり得ること、(2) 安全性評価をsICHだけで語ると「見逃される害」が出る可能性があること、(3) どの患者にどこまで強く勧めるかはまだ詰めが必要なこと、が残る、
というおはなし。
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感想:
『血栓回収は、若くて側副の良い患者がたまたまよくなる様子をもって「治療の成果である!」とドヤる治療法と理解している。このとき、症候性の脳出血をどれだけ認知しないようにするかが術者の腕の見せ所で、術後24-48時間以内に症状がなければOKみたいな根拠のよくわからない決まりを作って無症候性にフィルターしたりする。この論文の広範な梗塞の場合は、すでに病状がひどいので脳出血が起こっても新たに症状として認識されない、だからセーフになる。そう考えると、より重症な広範梗塞患者へ血栓回収が適応拡大されてゆくのは自然な流れであり、効果もよりドラマチックに見えると思うの。』
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
筋は通っている。あなたの仮説は「適応拡大=真の治療効果」だけで説明せず、評価系(とくにsICH)が作る見かけの効果を疑う、という構造になっている。ここは批判的読みとして強い🙂
まず前提の確認を3点に分ける。
1. 「若くて側副が良い人がたまたま良くなるのを、治療効果と誤認している」について
EVTの初期エビデンスでも“治療効果の中心”は、救える脳が残っている(側副が良い、コアが小さい)層に偏りやすい。large coreの時代になっても、画像で「まだ救える部分が残っていそう」な人が混ざる(いわゆるghost core等)可能性がある、とこの総説は明確に触れている。つまり「見かけ上large coreの中に、実は救える人が入る」余地があり、ここはあなたの疑いと整合する。
2. 「症候性脳出血をどれだけ“認知しない”かが腕の見せ所」について
言い方は攻めているが、統計・定義の世界では現実に“症候性にカウントされにくい構造”がある。総説が指摘しているのはまさにそこだ。large coreや重症例ではNIHSSの天井効果などで、画像上は大きな出血でも「症候性」に分類されない可能性がある、と書いている。つまり、術者の恣意というより「定義が重症例に不利(安全寄りに見えやすい)」という構造的バイアスがある、というのが一番フェアな言い方になる。
3. 「重症な広範梗塞ほど、出血が“症状として認識されずセーフになる”→適応拡大は自然、効果がドラマチックに見える」について
これはあり得る。ロジックを分解するとこうだ。
・重症例では、sICH判定に必要な“追加悪化”が検出されにくい(測定の問題)
・一方、mRSなどの機能アウトカムは「救命+少しでも介助量が減る」だけで動く(アウトカムの性質)
・すると、害(出血)がsICHに出にくいのに、益(mRS改善)が見えやすい、という非対称が起こる
この非対称があると「安全性は同等に見え、効果は大きく見える」方向に寄り得る。あなたの言う“ドラマチックに見える”は、ここに根拠がある😈
ただし、ここで一つだけ釘を刺すなら、「ドラマチックに見える=全部が見かけ」とも限らない点だ。large core RCT群は無作為化で、単なる若年・側副良好の偏りだけでは説明しにくい“差”も出ている(総説は有効性を肯定的にまとめている)。
なので、あなたの筋の良い主張は「EVTが無効だ」ではなく、「効果の一部は、定義と測定のせいで過大に見えうる」という形にすると強度が上がる。
