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2026年3月8日

めまいで病院へ行っただけなのに血栓溶解薬? 増え続ける“脳卒中ではない患者”への過剰治療

2026  2月  ノルウェー


めまいは救急外来でよくある症状である。しかし、その多くは良性である一方で、3〜5%ほどは後方循環の脳卒中であり、しかも後方循環脳卒中の最大20%は「めまいだけ」で始まることがある。そのため、良性の前庭障害と脳卒中を見分けることが非常に重要である。

ところが、急性期のCTやMRIは、めまい患者の脳卒中診断では十分に見つけきれないことがあり、HINTSやSTANDINGといったベッドサイド診察のほうが高い診断精度を示すとされている。

一方で、血栓溶解療法をできるだけ早く始めようとする流れは、脳卒中ではない患者にまで治療してしまう危険もある。そこで、めまい患者への血栓溶解療法(IVT)の実態をくわしくしらべてみたそうな。
  


ノルウェーのStavanger University Hospitalで、2016年1月から2022年12月までに急性めまいで救急受診した患者を対象にした。まず、急性めまいで入院した患者数の変化を調べたうえで、その中でもIVTを受けた患者について、救急での振り分け、ベッドサイド診察の内容、IVTの実施状況を分析した。

stroke mimicは、最初は脳卒中疑いでIVTを受けたものの、その後のMRIと神経血管チームの再評価によって、最終的には脳卒中ではなかったと判断された症例と定義した。   

また、診察が適切であったかを後ろ向きに評価した。NIHSSが1点以上なら、NIHSSを確認したあとに緊急CTへ進む流れを適切とし、NIHSS 0点の急性前庭症候群では、CTの前にHINTSを含む耳神経学的診察を行うことを適切とした。必要な診察をしていても、その解釈が間違っていれば不適切と分類した。最終診断は神経血管チームが再評価した。 



次のことが分かった。

・研究期間中、急性めまいで救急入院した患者は4,594例で、全救急入院の1.93%を占めた。年間の患者数は2016年の455例から2022年の819例へと80%増加した。さらに、急性めまいで神経内科に入院した患者の割合も33.2%から49.9%へ上昇した。 

・IVTを受けた急性めまい患者は250例で、そのうち123例は孤立性めまい、つまりNIHSS 0点であった。孤立性めまいに対するIVTは2016年の17例から2022年の32例へ有意に増加しており、とくに2020年と2021年に多かった。一方で、実際に確定した脳卒中の症例数は年3〜7例でほぼ横ばいであった。つまり、IVTは増えているのに、本当の脳卒中は増えていなかった。 

・stroke mimicは、IVTを受けためまい患者のかなり大きな割合を占めていた。とくにNIHSS 0点の孤立性めまいでは、後半の年にはmimicの割合が80%を超えていた。mimicの中身として最も多かったのは末梢性めまいであり、その次に内科的疾患、さらに片頭痛やてんかんなどの神経疾患が続いた。

・また、IVTを受けためまい患者のうち、推奨通りに十分なベッドサイド診察を受けていたのは平均で半数程度にとどまっていた。とくにHINTSの記載が欠けている例が多かった。    

・安全性についてみると、症候性頭蓋内出血はNIHSS 0ではない真の脳卒中群で1例だけであり、mimic群では認めなかった。mimic群での無症候性頭蓋内出血は4例、2.68%であった。  


急性めまいで救急受診する患者と、そうした患者に対するIVTはこの7年間で大きく増えたものの、実際の後方循環脳卒中は増えていなかった。その結果、IVTを受けためまい患者の中でstroke mimicの割合が高くなっており、現在の診療の流れは、診断の正確さよりも治療の速さを優先しすぎている可能性がある、


というおはなし。  

めまいで血栓溶解?



感想:

『FASTキャンペーンをがんばったおかげで、脳卒中でないひとに血栓溶解やりまくっている現状を確認したってことよね。
さいきん軽症脳卒中に血栓溶解すると脳出血おこしてかえって状態が悪くなるって報告をよく目にするけど、めまいでやってきた軽症脳卒中ですらないほぼ健常者に血栓溶解薬あたえても副作用はさほど問題にならないからまあ大目に見て、って理解であってる?』



以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓



半分あっていて、半分は言いすぎです🧭

この論文が確認したのは、
「急性めまいで来た患者に対するIVTが年々増えているが、確定した後方循環脳卒中は増えておらず、増加分のかなりをstroke mimicが占めていた」
ということです。著者らはその原因として、迅速化の圧力、HINTSなどのベッドサイド診察不足、診断プロトコル不徹底を挙げています。なので、
「速く治療する文化の副作用として、脳卒中でない人にもIVTがかなり入っていた」
は、この論文の読みとしてかなり近いです。  

ただし、
「FASTキャンペーンをがんばったせいで」
とまでこの論文が直接示したわけではありません。FASTは本来、顔面・上肢・言語障害の認識を高める文脈で、めまい単独とは少しズレます。この論文が直接言っているのは、院内の意思決定が“診断精度より迅速治療寄りになっていた可能性”です。 

次に副作用のところですが、あなたの
「軽症脳卒中ですらないほぼ健常者に打っても、まあ大目に見てよい」
という理解は、少し危ないです。たしかにこの研究では mimic 群に症候性頭蓋内出血はゼロで、無症候性頭蓋内出血も4例、2.68%でした。症候性頭蓋内出血は NIHSS>0 の真の脳卒中群で1例だけでした。数字だけ見ると、mimic にIVTしてもこのコホートでは重篤合併症は多くなかった、とは言えます。  

でも、そこから
「だから大目に見てよい」
までは飛べません。理由は3つです。

1つ目。この論文自体が、そういう結論ではなく、「不必要な血栓溶解を減らすべき」「患者安全を改善すべき」と締めています。著者の立場は明確に、容認ではなく是正です。 

2つ目。mimic は「ほぼ健常者」とは限りません。中身の多くは末梢性めまいですが、内科疾患、片頭痛、てんかん、精神科、FND、未確定も含まれます。つまり、脳卒中ではないが別の病態はある、という集団です。  

3つ目。この研究は単施設・後ろ向きで、イベント数も少ないです。mimic 群にsICHがゼロだったのは「安全が証明された」ではなく、「この規模では大きな害が目立たなかった」にとどまります。著者ら自身も一般化には限界があると書いています。 

なので、いちばん妥当なまとめはこうです。

この論文は、
「めまい患者へのIVT増加のかなりの部分が誤治療寄りだった」
ことを示した。
そして、
「今回のデータでは mimic へのIVTで重篤出血は多くなかった」
ことも示した。
しかし、
「だからめまいmimicへのIVTは多少打ちすぎても問題ない」
とは言っていない。

かなり雑に言えば、
「害は今回の範囲では小さく見えたが、だから許容してよい、ではなく、診断をちゃんとやって減らせ」
という論文です。




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