元2020 4月 アメリカ
脳動脈瘤の治療は、この20年以上で大きく変化してきた。かつては開頭クリッピングが中心だったが、2000年代以降、血管内治療が急速に広がった。
この変化がすでに落ち着いたのか、それとも今も続いているのかを、未破裂脳動脈瘤の治療もふくめてくわしくしらべてみたそうな。
アメリカの全国入院データベースである National Inpatient Sample、NIS を用いて、1993年から2015年までのデータを解析した。
対象は、未破裂脳動脈瘤またはくも膜下出血と診断された入院患者である。治療法は、開頭クリッピングと血管内治療に分けた。治療件数、退院先、死亡、合併症などを調べ、年ごとの変化を APC、つまり年平均変化率で評価した。
次のことが分かった。
・未破裂脳動脈瘤と診断される入院は、1993年から2015年にかけて約5倍に増えた。一方、くも膜下出血の入院は50%未満の増加にとどまった。・治療法は大きく変わった。破裂動脈瘤に対するクリッピングは減少し、血管内治療は大きく増えた。未破裂瘤でも破裂瘤でも、血管内治療は2000年代以降に急速に普及した。・一方で、くも膜下出血と診断された患者のうち、動脈瘤に対する治療を受けたのは約3分の1にとどまった。この割合は、過去のNIS研究や州レベルの退院データともおおむね一致していた。未治療の患者には、非動脈瘤性のくも膜下出血、重症すぎて治療できなかった症例、高齢や併存疾患のため治療に進まなかった症例などが含まれると考えられた。・しかし、未破裂脳動脈瘤の診断と治療が大きく増えたにもかかわらず、くも膜下出血の発生率はほとんど変わらなかった。発生率は年間およそ12人/10万人で横ばいであった。・破裂動脈瘤では死亡率は低下したが、患者は高齢化し、持病も増え、くも膜下出血の重症度も高くなっていた。また、自宅へ普通に退院できず、リハビリ施設や療養施設などへ移る患者は増えていた。・未破裂瘤では、血管内治療のほうがクリッピングより自宅退院しやすかった。ただし、自宅退院率そのものは1998年以降、大きく改善していなかった。
アメリカの脳動脈瘤治療は、クリッピング中心から血管内治療中心へ大きく移行していた。
しかし、くも膜下出血患者のうち、実際に動脈瘤治療まで進んだのは約3分の1であった。さらに、未破裂脳動脈瘤の診断と治療が大幅に増えても、くも膜下出血の発生率は低下していなかった、
というおはなし。
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感想:
『図1Cをみると、未破裂脳動脈瘤の7割以上は治療していない状態がずーっと続いている。破裂してもいない脳動脈瘤を塞ぐことを支持するRCTは存在しないのだから当然というか低いくらいと思う。面白いのは図1Dで、くも膜下出血でクリップもコイルもしない非治療(No Treatment)が7割でこれまたずーっと続いているのよ。ちなみにもっと新しい報告(https://doi.org/10.1016/j.wneu.2025.124061)だとこの割合は9割になる。いっぱんに、動脈瘤性は全体の8割くらいだから、見つかった瘤のほとんどを治療していないことになる。「くも膜下出血は恐ろしい病気だから、瘤をみつけたら速やかに治療しなければいけない」という建前はあるものの、それに従っているのは狂信的な脳外科専門の病院だけだった、という見方もできるよね。』
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
その見方は、かなり成立する。ただし、ブログで使うなら一段だけ表現を締めたほうがよい。
まず図1Cについては、その読みでよい。未破裂脳動脈瘤では、診断された入院の7割前後が治療されていない。これはむしろ自然である。未破裂瘤を「塞ぐ vs 経過観察する」で明確に支持する大規模RCTは実質的に成立しておらず、TEAM trialも登録不良で80例で中止されている。Cochraneも、未破裂瘤治療については根拠が不十分で、真にランダム化された試験が必要だという立場である。([Cochrane][1])
問題は図1Dである。この論文では、SAH患者のうち動脈瘤治療を受けたのは約3分の1にとどまり、この割合は過去のNIS研究や州レベル退院データの29.0〜32.4%とも一致すると著者らは述べている。つまり「SAHなのにNo Treatmentが約7割」という現象は、この論文だけの偶然ではない。
さらに、一般に非外傷性SAHの約75〜85%、または80〜85%は動脈瘤破裂によると説明される。したがって、「非動脈瘤性SAHが混ざっているから7割未治療に見えるだけ」という説明では足りない。非動脈瘤性が2割前後あるとしても、No Treatment 7割はまだ大きすぎる。([メドスケープ][2])
Pando 2025についても、抄録レベルで確認できる範囲では、2016〜2021年の非外傷性SAHでコイル10.9%、PED/flow diverter 0.65%、残り88%がnonendovascular managementとされている。これはGolnari論文の「No Treatment約7割」よりさらに極端な方向である。([サイエンスポータル][3])
ただし、あなたの文章のうち、「見つかった瘤のほとんどを治療していない」という部分は少しだけ修正したほうがよい。NISでは「SAH入院に治療コードが付いていない」ことはわかるが、「動脈瘤が実際に見つかったのに治療しなかった」とまでは直接わからない。死亡が早すぎた例、転院で治療コードが別入院に分かれた例、重症・高齢・併存疾患で治療対象外になった例、コード上の限界が混ざるからである。
だから、いちばん強く、かつ崩れにくい表現はこうである。
「図1Dで注目すべきなのは、くも膜下出血として入院した患者のうち、同一入院中にクリッピングまたは血管内治療を受けた例が約3分の1にすぎない点である。非外傷性SAHの多くは動脈瘤性とされることを考えると、この治療率は直感的にかなり低い。少なくとも、臨床現場では『SAHなら瘤を見つけてすぐ塞ぐ』という建前が、全国データ上ではそのまま実行されていない。」
「狂信的な脳外科専門の病院だけだった」は、ブログの煽りとしては面白い。ただ、事実認定としては少し強すぎる。より安全に刺すなら、
「この建前に忠実なのは、高度専門施設や、治療に乗せられるよう選別された症例に限られていた可能性がある」
のほうがよい。
さらに鋭く言うなら、
「ガイドラインは瘤を塞げと言う。しかし全国入院データを見ると、現実のSAH医療はそれほど単純ではない。SAH患者の多数派は、少なくともNIS上では、クリップにもコイルにも到達していない。」
この形なら、あなたの主張の芯を残しつつ、論文から逸脱しにくい。🧊
[1]: https://www.cochrane.org/CD013312/STROKE_treatments-unruptured-intracranial-aneurysms?utm_source=chatgpt.com "Treatments for unruptured intracranial aneurysms | Cochrane"
[2]: https://emedicine.medscape.com/article/2500045-overview?utm_source=chatgpt.com "Subarachnoid Hemorrhage: Background, Epidemiology, Etiology"
[3]: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1878875025004176?utm_source=chatgpt.com "Flow Diverter Assisted Embolization of Ruptured Aneurysms is Associated with Increased Hemorrhagic Complications: Prognostic Factors and Outcomes in Neuroendovascular Treatment of Subarachnoid Hemorrhages - ScienceDirect"
