元2026 7月 日本
脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血では、発症後にけいれん発作を生じることがある。けいれん発作は神経学的転帰を悪化させ、後のてんかんにつながる可能性もある重要な合併症である。
クラゾセンタンは、くも膜下出血後の脳血管攣縮や遅発性脳虚血を抑える薬である。
しかし、クラゾセンタンを投与された患者における入院中のけいれん発作については、十分に調べられていなかった。
そこで、クラゾセンタン投与患者における早期発作と院内後期発作の発生率をくわしくしらべてみたそうな。
2022年1月から2024年12月までに、複数の医療機関で治療された脳動脈瘤性くも膜下出血患者264人を対象とした後ろ向き研究である。
全員がクリッピング術またはコイル塞栓術を受け、その後、脳血管攣縮予防のためクラゾセンタンを投与されていた。
発症から7日目までの発作を「早期発作」、8日目以降の入院中の発作を「院内後期発作」と定義した。退院後の発作は調査していない。また、クラゾセンタンを使用しなかった対照群は設定されていない。
次のことが分かった。
・264人のうち、112人がクリッピング術、152人がコイル塞栓術を受けていた。・早期発作は8人(3.0%)、院内後期発作は4人(1.5%)に認められた。脳血管攣縮は45人(17.0%)、遅発性脳虚血は42人(16.0%)に発生していた。・院内後期発作は80歳以上で多かったが、早期発作と明確に関連する因子は特定されなかった。クリッピングとコイル塞栓術の間にも、発作発生率の有意差は認められなかった。
クラゾセンタンを投与されたくも膜下出血患者では、入院中のけいれん発作は従来の報告より少ない傾向にあった。
ただし、過去の研究とは発作の定義や観察期間が異なり、クラゾセンタン非投与群も存在しない。そのため、発作が少なかった理由をクラゾセンタンの効果と判断することはできない、
というおはなし。
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感想:
『クラゾセンタン承認タイミングですでにやる気マンマンだった施設からクラゾセンタン適用例だけを抽出してきて、まったくの恣意的な判断で「けいれん発作」をカウントして、一般データよりも発生率が低かった、これはクラゾセンタンの血管攣縮抑制効果のおかげかも、、って匂わせている。ようするにそれだけの論文よね。』
以下、医師国家試験正答率98%AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
うん、ほぼそれだけの論文です。
ただし批判として強くするなら、「まったく恣意的」と断定するより、次のように整理すると逃げ道を与えません。
* 承認直後にクラゾセンタンを実際に使用した施設から、投与できた患者だけを集めた
* 投与開始前の超急性期死亡者は除外した一方、投与前に起きた早期発作は含み得る
* 発作判定は統一された前向き基準や中央判定、連続EEGではなく、後ろ向きの診療記録頼み
* 抗けいれん薬の予防投与状況も不明
* クラゾセンタン非投与の同時期対照群がない
* 観察期間や患者構成の違う過去研究と数字だけを比べ、「以前より少ない」とした
* その理由として、クラゾセンタンによる血管攣縮・DCI抑制をそっと持ち出した
したがって、この研究が示したのは、
「クラゾセンタンを投与できた選抜患者のカルテを調べたら、記録されていた院内発作が過去文献の数字より少なかった」
までです。
「クラゾセンタンで発作が減った」は検証していません。むしろ、結論を先に置いて集めた記述疫学に、クラゾセンタンの副次的効果を匂わせる宣伝的考察を付けた論文、と読むのがいちばん近いです。施設が不利な発作を意図的に記載しなかったとまでは証明できませんが、そうした診断・記録のばらつきを排除できない設計なのは確かです。
『利益相反はないの?』
論文上は「利益相反なし」と明記されています。
利益相反欄には、
> All authors have no conflict of interest.
さらに、全著者が日本脳神経外科学会の会員で、学会サイトから自己申告のCOI開示書を提出した、とあります。[原論文](https://doi.org/10.2176/jns-nmc.2025-0456)
確認できた範囲では、
* ピヴラッツの企業(イドルシア/現在のネクセラ)からの研究費
* 薬剤提供
* データ解析・論文執筆への企業関与
* 企業社員の共著
はいずれも記載されていません。ただし、独立した「Funding(研究資金)」欄そのものが見当たらず、資金源を「なし」と明記しているわけでもありません。
別の開示として、最終著者のNobuhiro Mikuni氏が掲載誌の編集委員です。ただし、本人はこの論文の査読・採否決定には関与していない、と記されています。
したがって整理すると、
* 金銭的COI:全著者「なし」と自己申告
* 企業関与:論文上は確認できない
* 編集上のCOI:編集委員が共著者だが、審査から除外
* 非金銭的バイアス:まったく別問題
です。
クラゾセンタン承認直後に積極使用していた施設の医師が、「自分たちが導入した新薬の時代には発作も少なかった」と考えることは、企業から一円も受け取らなくても起こります。これは金銭的利益相反ではなく、いわば「クラゾセンタン時代を成功と見たい」という知的・臨床的な当事者バイアスです。通常のCOI申告書では拾われません。
だから、この論文は「企業が書かせた露骨な宣伝論文」ではなさそうですが、「利益相反なし=中立的な研究」とまでは言えません。むしろ、薬への期待そのものが研究の問いと考察を方向づけた可能性を疑う論文です。
『クラゾセンタンって、患者の予後改善にまったく無力なばかりか致命的な副作用と超高額が周知の事実で、1ミリも擁護できる余地がないの。論文にどういう力学が働いたのか気になっちゃったのよ。』
ああ、そこだったのね。なら、この論文に働いた力学は「企業から金をもらった」よりも、承認後に形成されたクラゾセンタン肯定圏による自己正当化に近いと思う。
かなり露骨な材料がそろっている。
* 対象期間は2022~2024年。まさに日本での承認・発売直後である。
* 15の北海道内施設から集めたが、クラゾセンタン非使用例を最初から除外している。
* 各施設のSAH総数、投与率、非投与理由、除外人数を示すフローチャートがない。したがって264例が母集団からどう選ばれたのか分からない。
* 発作の診断基準、EEG実施率、施設間判定、抗発作薬の予防投与も統一されていない。
* それでも異質な過去研究と数字を比較して「発作が少ない」と提示し、クラゾセンタンによる攣縮・DCI抑制との関連を匂わせている。[原論文](https://www.jstage.jst.go.jp/article/nmc/advpub/0/advpub_2025-0456/_article)
とくに象徴的なのは、著者らが「クラゾセンタンは受け入れられた治療になったので、非投与対照群を前向きに設けるのは倫理的・実務的に困難」と述べている点です。
これは、
承認された
→みんな使う
→使わない対照群は倫理的に作れない
→因果効果は検証できない
→過去データより低かったと報告する
→さらに“標準治療”として固定される
という自己強化ループです。承認された事実そのものが、反証不能にする装置として働いている。
さらに気になるのが、投稿時点ですでに出ていた最新の国際第III相REACT試験を引用していないことです。REACTでは、DCIによる臨床悪化は15.8%対17.2%で有意差なし、12週後の予後不良はクラゾセンタン24.8%対プラセボ20.1%と、むしろ数字上はクラゾセンタン側が悪かった。肺合併症25.6%対10.6%、浮腫・体液貯留19.8%対4.0%でもあった。[REACT試験](https://thejns.org/view/journals/j-neurosurg/142/1/article-p98.xml)
この重要な陰性試験を外して、古い試験と日本の肯定的研究だけで「ランダム化試験で攣縮とDCIを減らすことが示された」と書いている。単なる見落としか意図的な引用選択かは断定できないが、論文の物語に都合よく働いているのは確かです。
したがって、私の見立てはこうです。
> 高額で重い副作用を伴う薬を承認直後から積極的に使った臨床ネットワークが、薬の新たな“副次的価値”を探し、発作率の低さを見つけた。因果関係を検証できない設計のまま、クラゾセンタンの効果かもしれないという物語を付け、断定を避ける大量の但し書きによって論文化した。
企業の直接介入がなくても成立します。自分たちが採用した治療を成功と見たい、地域の治療プロトコルを正当化したい、264例の多施設データを業績にしたい、という非金銭的利害だけで十分です。しかも最終著者は掲載誌の編集委員である。審査から外れたと明記されているので不正とは言えませんが、この学術圏の内部で完結している印象は強まります。
ただ、批判を逃げにくくするなら、「予後改善にまったく無力」より、
> クラゾセンタンの機能的予後改善効果は、国際的なランダム化試験で再現されておらず、最新の第III相試験も陰性だった
と表現するほうが強いです。日本の2試験を併合した解析にはmRS 3以上が15.6%対23.4%、p=0.048という、クラゾセンタン側が唯一つかめる細い擁護材料があるからです。[国内第III相試験](https://thejns.org/view/journals/j-neurosurg/137/6/article-p1707.xml)
要するに今回の論文は、薬効を検証した研究というより、クラゾセンタン時代を肯定するための「追加効能探し」に見えます。発作を選んだこと自体が、その力学をよく表しています。
