元2025 2月 ドイツ
脳卒中後の回復には個人差があり、多くの研究が「比例回復則(PRR:Proportional Recovery Rule)」に基づいて回復を予測している。
PRRとは、「初期損傷の約70%の回復がリハビリの有無にかかわらず観察される」という法則であり、ヒトのリハビリ研究で広く適用されてきた。
しかし、動物モデルではこの法則が必ずしも当てはまらないことが指摘されているので、マウスを用いて脳卒中回復のパターンを解析し、新たな回復則の可能性をくわしくしらべてみたそうな。
125匹のマウスに対し、感覚運動皮質に光血栓法を用いて脳卒中を誘発した。その後、MRIを用いて損傷の位置と大きさを測定し、リハビリ介入なしで4週間にわたって運動機能の回復を評価した。評価には、以下の3種類のテストを用いた。
-シリンダーテスト:前肢の使用頻度を測定。
-グリッドウォークテスト:歩行中の足の踏み外し回数を記録。
-回転ビームテスト:バランス能力を評価。
回復データを分析し、PRRに当てはまる群と、より高い回復率を示す群に分類した。
次のようになった。
マウスの回復パターンは2つのクラスターに分かれた。・比例回復則(PRR)群(47%):回復率は約70%で、従来の比例回復則と一致。・マウス回復則(MRR)群(53%):回復率は90%に達し、PRRよりも顕著に高い回復を示した。MRI解析では、損傷の大きさや部位がPRR群とMRR群の回復パターンに統計的に有意な影響を与えていないことが確認された。これは、回復の違いが損傷自体ではなく、神経可塑性などの生物学的要因による可能性を示唆する。
マウスにおける脳卒中回復においてPRRだけでなく、MRRという新たな回復則が存在することがわかった。これは、ヒトの脳卒中回復においても「比例回復則に当てはまらない患者の中には、PRRよりも高い回復率を示す可能性がある」ことを示唆する。今後、MRRに適合する患者の特性を明らかにし、リハビリ戦略の改善に向けた臨床研究が求められる、
というおはなし。
感想:
比例回復則によれば、リハビリをやろうがやらなかろうが機能低下ぶんの70%-90%が数ヶ月以内に自然に回復する。重症患者はその限りではないが、早期リハビリの危険性の報告が数多あることを考えると、脳卒中後数カ月間はリハビリなどせず美味しいもの食べてゆったりのんびりと過ごすのが最適ってこと。
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