元2025 1月 イギリス
脳卒中は高齢者に多い病気とされるが、18~45歳の若年成人でも発症することがある。
若年者は、就労や家庭生活、社会的役割を持つことが多いため、脳卒中後のリハビリには特有の課題がある。しかし、現在のリハビリプログラムは主に高齢者向けに設計されており、若年者のニーズに十分応えられていないのが実情だ。
そこで、若年脳卒中サバイバーのリハビリ経験を包括的に分析した研究をもとに、ポジティブな成果と直面する困難を整理し、若年者向けのリハビリのあり方をくわしく探ってみたそうな。
これは2025年に発表されたスコーピングレビュー「Young Adults Rehabilitation experiences and Needs following Stroke (YARNS)」に基づいている。この研究では、2000年から2022年の間に発表された85本の論文を分析し、若年脳卒中サバイバーのリハビリ体験を体系的に整理した。研究では、身体機能の回復だけでなく、心理的・社会的な影響も含めたリハビリの課題が明らかにされた。
研究では、若年脳卒中サバイバーのリハビリ経験が「ポジティブな成果」と「ネガティブな課題」の両面で報告されていた。以下に、それぞれの代表的な事例を紹介する。
ポジティブなリハビリ成果
・家族との時間の増加ある患者は、脳卒中後に家族と過ごす時間が増えたことで、関係が深まり、心理的な安定につながった。・地域社会への積極的な参加地域のイベントやボランティア活動に関与することで、社会的なつながりを強化できた。・リハビリ施設のグループ活動が心理的安定に貢献リハビリの一環として行われるグループセッションが、仲間意識の形成に役立ち、孤独感の軽減につながった。・ストーリーテリングを通じた希望の回復自らの脳卒中経験を語ることで、前向きな意識が生まれ、希望を持てるようになった。・芸術療法による自己表現の向上失語症や認知障害を持つ患者が、絵画や音楽を通じて自己表現の手段を見つけ、自信を回復した。・ポジティブメンタルトレーニングによる心理的安定不安やストレスを抱えていた患者が、ポジティブメンタルトレーニング(PosMT)を受けたことで、精神的な落ち着きを取り戻した。・リスク管理による健康状態の改善スマートフォンアプリを活用し、血圧や食生活を管理することで、健康維持に成功した患者もいた。
ネガティブなリハビリ課題
・医療スタッフとのコミュニケーション不足リハビリの目標や進捗が十分に説明されず、患者が治療方針を理解できないまま進められることがあった。・リハビリ評価が不十分なまま退院退院時に十分なリハビリ評価が行われず、結果的に回復が遅れたケースが報告された。・リハビリが身体機能回復に偏りすぎる若年者が必要とする社会復帰や心理的ケアが不足し、満足度の低いリハビリを強いられた。・復職後の職場環境の問題復職後に周囲の理解を得られず、過度なプレッシャーを受け、精神的に追い詰められた。・高齢者向けリハビリ施設の環境に適応できないリハビリ施設の利用者がほぼ高齢者であり、若年者が孤立感を感じるケースが多かった。・目に見えない障害への理解不足外見上は回復しているように見えても、集中力の低下や疲労感が続き、職場や家庭で理解を得られなかった。・経済的負担によるリハビリ中断保険適用外のリハビリが高額で、十分な回復を得る前に治療を中断せざるを得なかった。
若年脳卒中サバイバーのリハビリは、身体機能の回復だけでなく、心理的・社会的な課題にも対応する必要がある。しかし、現行のリハビリは高齢者向けに設計されており、若年者のニーズに適していないことが多い。リハビリの成功には、復職支援や心理ケアなど、個々に合った支援体制を整えることが不可欠だ。適切なサポートがあれば、社会復帰や生活の質の向上も十分に可能である、
というおはなし。
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