元2025 7月 中国
・3日間の水分バランスが+500mLを超えたポジティブバランス群では、3か月後の死亡率が明確に高かった(26.4%)。・一方、バランス群の死亡率は10.2%と有意に低かった。・ネガティブバランス群の死亡率はやや高めであったが、統計的な有意差は認められなかった。・また多変量ロジスティック回帰分析により、ポジティブバランスは独立した死亡リスク因子であり、死亡リスクを約2.5倍に高めることが示された。なお、実際に患者に与えられた水分の多くは、点滴によるものであった。
✅ 結論:
+500mLの意味は「体内に水分が残存・貯留した」ことを示していると解釈するのが自然であり、「汗や呼気などで失われた可能性」は否定できないが、主因とは見なされていない。
🔍 理由①:この論文の「出納バランス」は目に見えるものしか数えていない
Fluid input and output were recorded and calculated daily. Input was defined as oral or intravenous fluid, medication or enteral nutrition, and output as urine volume. (p.3)
つまり、
- 入力(input) = 点滴、経口摂取、薬剤、経腸栄養
- 出力(output) = 尿量のみ
➡ 呼気、発汗、下痢、嘔吐などはカウントされていない
🔍 理由②:だからこそ、「±500mL」は誤差を見込んだ“安全域”として設定されている
著者は、見えない水分損失(不感蒸泄)などによる不確実性を前提に、±500mLを安全な中間ゾーンとしたと考えられる。
これは ICUや脳卒中治療の現場でも一般的な考えであり、
- 不感蒸泄(呼気、皮膚)→ およそ800〜1000mL/日
- でも正確に測定できない
- よって、「±500mLならまあOK」とされる
🔍 理由③:+500mLという“残り”が多い患者ほど死亡率が高いという事実
見えない喪失があったなら、「水が足りない」方向(ネガティブバランス)に偏るはずだが、実際には、
- +500mLを超えて“水が残ってしまった”患者の死亡率が高い
- つまり「出し切れず、体に残ってしまった」ことが問題
これを代謝的喪失の見逃しだけで説明するのは難しい。
🧠 要するに:
この研究における+500mLは、「汗で消えたかもしれない」ではなく、
「尿として出てこずに、体にとどまっている可能性が高い」=“水が捌けていない”という意味に近い。
📌補足:ネガティブバランス群では有意差が出なかった
興味深いことに、「水分が少なめだった」ネガティブバランス群では、死亡率の有意な上昇はなかった。
つまり、「多少足りない」より「多少余ってる」ほうがはるかに危ない、という結果である。