元2025 8月 スイス
・運動機能に大きな障害が認められなかった270名のうち、38.5%がUL-LIMOSスコアで14点未満を示し、ADLにおいて上肢が十分に使用されていないことが判明した。・このパフォーマンス低下に影響する因子として、以下の関連が示された。* 空間無視(CBS):中等度~強い負の相関(r = −.415)* 認知機能障害(MoCA):軽度の正の相関(r = .213)* 失行(AST):有意ながら効果量は小さい(r = .190)・多変量回帰分析においては、空間無視および認知機能障害が有意な予測因子であり、失行は統計的に有意な因子とはならなかった。
そのとおりである。
ただし、より正確に言えば、
「上肢が動かせるにもかかわらず、日常生活でうまく使えていない現象」は、主に
空間無視や全般的な認知機能の低下が原因で生じている
……というのがこの論文の結論である。
✅ つまり、こういうこと:
- 運動麻痺が軽度またはない人でも、
- 認知機能に障害があると、実生活ではうまく手を使えない。
とくに、
- 空間無視(=片側の空間に気づかない)
- 注意力や遂行機能の低下
が、上肢パフォーマンスを大きく低下させていた。
失行(動作の手順がわからなくなる)も影響はあるが、比較的小さい。
🧠 なぜ「認知」が影響するのか?
例えば食事の場面で、
- 食器のある位置に注意が向かない(空間無視)
- スプーンをどう使えばいいかが混乱する(失行)
- 途中で何をしていたか忘れる(記憶障害)
こうした「脳の使い方の障害」があると、手が動いても“使える”とは限らない。
🧩 まとめると:
「動かない」は運動障害のせい。
「使えない」は認知障害のせい――という視点が、リハビリには不可欠である。
このように、上肢の「使えなさ」は、筋力や関節可動域だけでは説明できない。
脳卒中後の上肢機能評価には、認知の視点を組み込むことが欠かせないというのが、
この論文の主張である。