元2025 7月 フィンランド
・歌の練習を終えた後、参加者は練習した歌の歌詞をより正確に発声できるようになっていた。また、練習した歌を歌っているとき、右脳の「感覚を感じる場所(中心後回)」と「音の意味をとらえる場所(後上側頭回)」の活動が明らかに増えていた。・とくに後上側頭回の活動は、「ものの名前を言う力(命名能力)」の改善と関係していた。つまり、歌を練習したことで右脳の特定の場所がよく働くようになり、それが言葉の回復に結びついていたと考えられる。
🎤カラオケ屋にこもってひとり頑張ればいいってわけではないの?
結論から言えば、
「カラオケでひとり歌う」ことにも効果はあるが、完全には代替にならない、である。
以下に理由を3つの観点から整理する。
① 神経科学的観点:
● 一人でも脳は鍛えられる
- 音声による発声練習や、歌詞のリズム・メロディを使うこと自体は、言語ネットワークの活性化に効果がある。
- 実際にこの研究でも、自宅用アプリ(Singalonger)を使った「ひとり練習」が含まれていた。
つまり、歌うという行為そのものは脳に刺激を与えるし、一人でも有効ではある。
② 社会的・情動的観点:
● しかし「他人と歌うこと」でしか得られない効果がある
- 他人と声を合わせるとき、脳内ではミラーニューロンや社会的同期化ネットワークが動き出す。
- これは自己だけでなく、他者との関係を脳が意識する状態を生み、情動系や前頭前野にも作用する。
ひとりカラオケでは「声を出す訓練」にはなっても、「他人とのやりとり」や「共感による報酬系活性」は得られにくい。
③ 実際の研究デザインの観点:
● この研究は「集団での歌唱+家庭練習」のセットが前提
- 歌うだけでなく、同じ空間で他人と歌い合うという状況そのものが治療に含まれている。
- 介護者との参加も取り入れられており、「言葉の回復=社会との再接続」という考えが基礎にある。
✴まとめ:
- ひとりカラオケは「トレーニングの場」としては有効。
- ただし、「社会とのつながり」や「情動の活性化」など、言語リハビリにとって重要なもう半分の要素を欠いている。
✅ 結論としては:
まずはカラオケ屋でひとり歌うのもOK。ただし、それだけでは脳も心も半分しか目覚めない。
できれば、誰かと一緒に声を合わせる機会も設けてほしい。
それが、脳卒中後の「ことば」と「つながり」の両方を回復させる道である。