元2025 11月 スイス
脳卒中というと手足の麻痺や言語の問題ばかりが注目されるが、実は「嗅覚」と「味覚」の低下がよく起こる。これらの感覚の低下は、食べる楽しさを奪い、食欲低下や栄養状態の悪化につながる可能性が高い。
しかし、脳卒中が嗅覚・味覚にどれほど影響するのかについては、まだ十分に研究されていない。特に、食べ物を「おいしい」と感じる気持ち（食の好み）がどれほど変化するのかも不明であった。
そこで、脳卒中患者の嗅覚・味覚能力と食の好みを、健康な人と比較してみたそうな。
脳卒中患者47名と、同年代・同じ性別の健康な人141名を比較した観察研究である。
嗅覚は12種類のにおいを当てる識別テストで評価し、味覚は甘味・塩味・酸味・苦味を判別するテストを使用した。食の好みは約100種類の食品を9段階で評価した。統計的な有意差はp<0.05と設定した。
次のようになった。
・脳卒中患者は、嗅覚と味覚の両方で健康な人より明らかに低い成績を示した。・嗅覚では、脳卒中患者の50%が「嗅覚消失（anosmia）」に分類され、においの識別力が著しく低下していた。これは健康群の9.2%と比べて非常に高い割合であった（p<0.001）。・味覚では、4種類の味のうち3つ以上を正しく判断できた人は53.5%で、健康群の76.6%よりも少なかった（p=0.006）。特に塩味の正答率は58.1%で、健康群90.8%との差が大きかった（p<0.001）。・さらに、嗅覚と味覚の両方が同時に低下している人は26.2%で、健康群の3.5%より大幅に多かった（p<0.05）。・食の好みについても、乳製品、脂肪食、魚、肉、甘味、うま味など多くの食品群で、脳卒中患者の評価が健康群より低かった。すなわち、嗅覚と味覚の低下は「食の楽しさ」そのものを減らし、食事量の減少や低栄養につながる可能性が高いと考えられる。・なお、回帰分析による追加の検討では、嗅覚の中でも「快いにおい」を識別する力は、左脳側に病変のある患者で特に低下しやすいことが示された（p=0.040）。年齢もリスク因子であった。
脳卒中患者では、嗅覚と味覚の能力が大きく低下し、食の好みも弱くなることが示された。感覚の低下は低栄養や回復の遅れ、生活の質の低下に直結する可能性があるため、リハビリでは運動だけでなく、嗅覚・味覚の評価とサポート、そして食の工夫を含む栄養介入が重要である、
というおはなし。
感想：
『これは自然に治るものなの？』
以下、医師国家試験正答率98％AIの進化版GPT-5の回答コピペ↓
慎重に、だが率直に答える。
結論から言うと
脳卒中後の嗅覚・味覚の低下は“自然に回復する場合もあるが、長期的に残存することも多い”
である。すべての人が自然に治るわけではない。
理由を段階的に整理する。
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回復の可能性についての一般的知見
- 脳浮腫の改善や神経ネットワークの再編により回復するケースがある
発症直後〜数ヶ月は脳の回復力（神経可塑性）が高く、嗅覚・味覚も改善が見られることがある。 - しかし半年〜1年経過すると回復は鈍化し、障害が固定化する可能性がある
嗅覚障害の研究領域では
「改善がみられる場合は多くが最初の3〜6ヶ月」
と説明されることが多い。 - 脳卒中が原因の場合、鼻や舌ではなく脳内の感覚処理領域が損傷しているため、回復は不確実
つまり、風邪・副鼻腔炎の嗅覚障害とは本質的に違い、
「自然治癒率は高くない」。 - 回復の幅が大きく個人差が大きい
年齢、病変部位、病変の大きさ、炎症の残存、リハビリの有無などが影響する。
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今回の論文の示唆と合わせるとどうなるか
論文は回復経過ではなく横断研究であるため、
「治る・治らない」について直接の結論は出していない。
しかし結果では：
- 嗅覚と味覚の両方が長期フェーズ（30日以降〜慢性期）でも多数で低下していた
- つまり 自然回復しないケースが相当数存在する 可能性を示唆している
（この研究の患者群は平均64歳、慢性期の人を含む）
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まとめ
自然に治る可能性
→ ある
自然に治らないケース
→ かなり多い
特に
- 左脳の病変
- 高齢
- 男性
- 虚血性脳卒中
では障害残存のリスクが高い。
したがって
フォローアップ評価とリハビリ・栄養介入が重要
という方向性になる。