2026年10月23日

脳梗塞治療は弱者が死ぬほど高評価?――「予後良好率」に潜む数字の罠

元
2026  10月  ドイツ


脳梗塞の治療成績は、一般にmRS(修正ランキンスケール)という障害の程度を示す指標で評価される。

mRS 0〜2を「予後良好」、3〜6を「予後不良」とすることが多い。

しかし、脳梗塞になる前からmRS 3〜5だった患者は、たとえ元の状態まで回復しても「予後良好」には分類されない。

これでは、もともと障害のある患者の回復が正しく評価されない可能性がある。

そこで、「発症前の状態に戻れたか」という新たな評価基準の有用性をくわしくしらべてみたそうな。



ドイツの大学病院で2010〜2022年に入院した脳梗塞患者3,724人のうち、必要なデータがそろった2,070人を解析した。
患者を発症前のmRSによって、0〜2の群(1,827人)と3〜5の群(243人)に分けた。
退院時と発症90日後について、従来の予後良好率、発症前の状態への回復率、死亡率を比較した。



次のようになった。

発症90日後の結果は次のとおりであった。

・発症前mRS 0〜2の患者では、47.5%が従来基準で予後良好となり、21.8%が発症前と同じmRSまで回復した。

・発症前mRS 3〜5の患者では、従来基準で予後良好となった人は0%だったが、11.9%は発症前と同じmRSまで回復していた。

・発症前mRS 3〜5の患者の90日死亡率は67.9%で、mRS 0〜2の患者の約23%を大きく上回った。

・一方、90日後の生存者に限れば、発症前の状態への回復率はmRS 0〜2群で28.4%、mRS 3〜5群で37.2%であり、統計学的に有意な差はなかった。

さらに、「発症前の状態への回復」を予後良好に加えると、全体の予後良好率は41.9%から43.3%へ上昇した。


従来のmRS 0〜2という予後良好基準だけでは、発症前から障害のある患者の回復を適切に評価できない。
もともと障害のある患者は死亡リスクが高いものの、生存した場合には発症前の状態まで回復する可能性がある。
従来の予後良好基準に加えて「発症前の状態に戻れたか」を評価し、死亡と機能回復を分けて検討することが必要である、


というおはなし。

予後良好の罠



感想:

『脳梗塞発症まえ、すでにmRS3-5だった弱者群はどんなに治療がうまくいっても全体の良好者数には寄与しえない。むしろこの弱者群が消えてくれるくらいのほうが生存者における良好者割合が高くなる。その結果、副作用のキツイ血栓溶解や血栓回収で弱者が亡くなるのは全然セーフと判断されがちになる。しかしそんな弱者でも殺されずに生き残れさえすれば、良好だった群と同じ程度にもとの状態へ回復することができる。
現在の評価制度は期せずして治療が弱者を殺すよう仕向けている、そういいたいのよねこの論文は。』



以下、医師国家試験正答率98%AIの次の進化版GPT-6の回答コピペ↓



あなたの解釈は、論文が直接述べていることより一歩踏み込んでいる。しかし、評価制度の構造的な危険性を指摘するものとして、重要な論点だと思う。

特に問題なのは、次の非対称性である。

発症前からmRS 3〜5だった患者は、元の状態に戻っても従来の「予後良好」には数えられない。一方、死亡しても同じく「予後不良」である。

つまり、従来の二分法では、この患者が死亡した場合と、元の生活に戻れた場合とが、同じカテゴリーに入ってしまう。

さらに、生存者だけを分母にしてmRS 0〜2の割合を計算すれば、もともとmRS 3〜5だった患者が死亡するほど、見かけの予後良好率が上昇する場合がある。

これは数学的に成立する。ただし、死亡者も含めた全患者を分母にする通常の予後良好率では、死亡によって数値が上昇するわけではない。

そして今回の研究では、発症前mRS 3〜5の患者の67.9%が90日以内に死亡している。しかし、生存者に限れば37.2%が元の状態に戻っており、発症前mRS 0〜2群の28.4%を数値上は上回っていた。ただし有意差はなく、生存者の選択や回復に必要な程度の違いもある。

ここから導かれる重要な疑問は、

「死亡と回復を同じ予後不良に分類する評価基準は、治療による害を見えにくくしていないか?」

ということだ。

ただし、最後の「現在の評価制度は治療が弱者を殺すよう仕向けている」という部分は、論文著者の結論ではない。今回の研究には、血栓溶解や血栓回収が弱者の死亡を増やしたという因果関係を証明する比較がないからだ。

それでも私は、あなたの問題提起には検討する価値があると思う。

それは、治療によって弱者が殺されているという断定ではなく、「弱者の回復が成功として評価されず、死亡による損失も単一の予後良好率では十分に表現されない制度が、治療の利益と害の判断を歪めるのではないか」という仮説である。

そして、この論文が明確に求めているのも、従来の予後良好率だけで判断せず、発症前への回復と死亡率を別々に報告することなのだ。

出典:Schulz et al., Frontiers in Neurology, 2026. [https://doi.org/10.3389/fneur.2026.1866829]



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