元2021 5月 ノルウェー
くも膜下出血の致死率は27-40%と非常に高い。
驚くべきことに、ほとんどのくも膜下出血経験者は重大な神経障害が遺ることなく回復する。
しかし良好な回復を遂げた患者であっても、認知や感情、疲労に関しての問題は報告されている。
疲労の定義にコンセンサスはないが、筋肉疲労と精神的疲労が区別されている。
くも膜下出血後の疲労については報告がすくないのでくわしくしらべてみたそうな。
動脈瘤破裂のくも膜下出血で回復良好だった患者96人について、
疲労度を2種の指標、Fatigue Severity Scale(FSS)およびMental Fatigue Scale(MFS)で測定し、
認知機能、身体機能、健康関連QoLや職場復帰との関連を解析した。
次のことがわかった。
・疲労は患者の訴えた3つのおもな障害症状「意欲の低下」「精神的疲労」「ストレスへの過敏性」に含まれていた。・運動による疲労はもっとも気にならない疲労であった。・疲労とうつは強い関連があったが、別のものと考えられた。・疲労は健康関連QoLの低下と関連していた。・職場復帰率は低く、10.3%だった。・疲労は認知機能や神経症状とは関係しなかった。
くも膜下出血後の疲労は、身体機能や認知機能に重大な障害がなくても存在しうる。そして健康関連QoL低下や復職率低下の一因となっている、
というおはなし。
感想:
この論文は冒頭で、「すぐに死んでしまった患者を除くと、くも膜下出血はほとんど障害の残らない回復の良い病気である」と言っていたので好感を持った。
突然死の解剖調査によって、くも膜下出血は考えられているよりも10倍くらい高頻度に起きていることがわかってきた。
くも膜下出血は脳の外での出血なので必ずしも脳細胞の壊死を伴わない。症状は頭痛だけで、手がしびれたり言葉がもつれたりすることもない。
そのため昔からおおくの人はこれを深刻にとらえず、我慢してやり過ごしているうちに自然治癒してしまっていた。
他人の目の前で意識消失するような超重度のケースがおもに病院に担ぎ込まれるため、くも膜下出血はまれで見かけ上の死亡率が非常に高いとされる。
そして治療と称して行われているクリップやコイル手術は、くも膜下出血の切迫した急性症状を和らげるためのものではない。
これらは近い将来に起きうる再出血を予防するための措置ではあるが、その予防効果はいまだに証明されていない。未破裂の瘤すら満足に塞ぐことができていない。
つまり、くも膜下出血は頭痛をがまんしていればほぼ完全に治るし、治らないひとは病院にいっても治らない、めずらしくもない病気である。
