元2022 4月 中国
脳動脈瘤は成人の2-5%にみつかるとされ、破裂するとくも膜下出血になる。
瘤が破裂する危険因子として、大きさ、形状、位置、年齢、高血圧、喫煙、糖尿病、家族歴などがある。
このうち、瘤内の血流動態と、瘤径と首径の比できまるワイドネック、ナローネックでの破裂率の違いについては研究が少ないのでくわしくしらべてみたそうな。
2019-2021年の武漢大学人民病院での121例の脳動脈瘤の記録を解析した。
破裂と未破裂、ワイドネックとナローネック別に瘤を分類し、
DSAから得られた瘤の3Dモデリングを使って瘤内の流体シミュレーションを行った。
次のことがわかった。
・ワイドネック瘤はナローネック瘤よりも破裂率が有意に高かった。・シミュレーションによると破裂瘤では未破裂瘤にくらべて動脈瘤内圧、壁せん断応力が有意に高かった。・ワイドネックでは破裂瘤の内圧および壁せん断応力が高かった。・ナローネックでは破裂瘤の内圧が高かった。
ワイドネック瘤とナローネック瘤とでは血流動態がことなると考えられた。ワイドネック瘤のほうが高い破裂率を示す原因は血流動態にあるのかも、
というおはなし。
感想:
この種の流体シミュレーションは境界条件に仮定がおおすぎてあまりあてにならない。
そんなことより、ナローネックよりもワイドネックで破裂率が高いという事実に関心をもった。ほかにも少なからぬ同様の報告があるようだ。
いっぱんに首径にたいして瘤径が2倍未満だとワイドネックで、もっと瘤径が膨らむとナローネックになるから、
瘤が風船のように膨らんでやがて破裂に至るという考え方ではワイドネックが先に破裂する説明がつかない。
少し言い換えると、
ワイドネック瘤をもっているひとのほうがナローネック瘤をもつひとよりもくも膜下出血がおきやすい。
その背景はたぶんこういうこと↓。
・瘤の膨らみ程度は血管壁の柔軟性の高さを反映していて、おおきく膨らんでいるのは(ナローネック)破裂しにくいあかし。
・柔軟性が低い血管壁は少しだけ膨らむ(ワイドネック)ことができる。
・もっと柔軟性の低い血管壁は瘤になることが出来ずに ただ裂けて出血をもたらす。くも膜下出血のおおくはコレ。
・そしてたまたま近所に見つかった瘤が出血源として犯人あつかいされる。
こう考えると、瘤をクリップでつまんでも破裂率がまったく改善しないことにも納得がゆく↓。