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2017年10月5日

カロリー制限後の脳卒中とその回復


Caloric restriction stabilizes body weight and accelerates behavioral recovery in aged rats after focal ischemia.
2017  9月  スイス

肥満は脳卒中になる要因の1つである。

事前のカロリー制限が脳卒中後の結果にどう影響するものか実験してみたそうな。


高齢で肥満のネズミに、人為的に脳梗塞にする8週間前からカロリー制限食を与えた。

食べ放題ネズミと比べたところ、


次のようになった。
・脳卒中のあと、食べ放題ネズミの体重は10日後まで減少を続けた。

・しかしカロリー制限ネズミに体重減少は起きず、5日目から体重が急速に増え始めた。

・さらにカロリー制限ネズミでは、複雑な感覚運動スキルや皮膚感受性 感覚運動統合 空間記憶力が必要な課題の動作が改善した。

・同様に、インスリン様成長因子や糖代謝、動脈新生に関連する遺伝子発現が明らかに増加していた。

カロリー制限で体重を適切に保っていた高齢ネズミは脳梗塞後の回復がとても良かった、


というおはなし。
図:高齢ネズミのカロリー制限と脳梗塞体積

感想:

人間様のばあい「肥満パラドックス」ってのがあって、実際は太っているもの勝ち のもよう。

2017年10月4日

ランセット誌:通勤や家事は脳卒中予防にならないの?


The effect of physical activity on mortality and cardiovascular disease in 130 000 people from 17 high-income, middle-income, and low-income countries: the PURE study.
2017  9月  カナダ

身体活動量がおおいと脳卒中など心血管疾患が起きにくくなり死亡率も下がるという報告は数多くある。しかしこれら調査の多くは高所得国の余暇時間の使い方にフォーカスしたものがほとんどである。

そこで、十分な余暇時間をとれない中低所得国を調査対象にいれて非余暇時間(仕事や通勤 家事など)での身体活動量と心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


2003-2010に、カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ、中国、コロンビア、イラン、バングラディシュ、インド、パキスタン、ジンバブエの健康な国民 計130843人から身体活動量についてのアンケートをとり、

平均6.9年間にわたり死亡率 心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞など)の発生をフォローしたところ、


次のことがわかった。
・週当たりの身体活動量が増えるにしたがい死亡率および心血管疾患リスクは低下した。

・この関連は高所得国、中所得国、低所得国に共通で、

・余暇時間、非余暇時間に依らなかった。

余暇時間または非余暇時間にかかわらず、身体活動量がふえると死亡率や脳卒中など心血管疾患のリスクは低下する、


というおはなし。
図:非余暇時間の運動と脳卒中リスク

感想:

都心に職場があると 通勤だけで1日の体力の9割が削がれる。終わりがみえない千日回峰行のようでメンタルがずたずたになる。むかしのはなし

2017年10月3日

ランセット誌:糖質で死亡、動物性脂肪は脳卒中予防


Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study
2017  8月  カナダ

現在の食事ガイドラインでは脂肪は総カロリーの30%未満にして さらに飽和脂肪酸を減らし不飽和脂肪酸に置き換えるよう推奨されている。

しかしこれらガイドラインの多くは肥満が問題化している北米 ヨーロッパを対象とした研究結果にもとづいている。

そこで精製穀物を多く摂る中低所得国を含めて炭水化物と脂肪および脳卒中など心血管疾患との関連を大規模にしらべてみたそうな。


35-70歳、18カ国(カナダ、スウェーデン、アラブ首長国連邦、アルゼンチン、ブラジル、チリ、ポーランド、トルコ、マレーシア、南アフリカ、中国、コロンビア、イラン、バングラディシュ、インド、パキスタン、ジンバブエ、パレスチナ自治区)
の健康な135335人に食事アンケートをおこない、死亡や脳卒中など心血管疾患の発生を7.4年間ほどフォローした結果、


次のことがわかった。

・炭水化物が多いと総死亡率が高かった。

・脂肪はその種類(飽和、不飽和、多価、単価)によらず多く摂ると総死亡率は低く、

・飽和脂肪酸で脳卒中リスクがおおきく下がった。

・飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸は心筋梗塞や心血管疾患死亡率に関連しなかった。

炭水化物を多く摂ると総死亡率が上がるいっぽう 脂肪は総死亡率が低下した。脂肪は心筋梗塞や心血管疾患死亡率と関連せず、むしろ飽和脂肪酸で脳卒中リスクがおおきく低下した。ガイドラインをただちに見直すべき、


というおはなし。

図:脂肪OR炭水化物のエネルギー源とした時の脳卒中リスク

感想:

今日、やたらニュースになっていてきがついた。↓

「糖質制限」論争に幕?一流医学誌に衝撃論文
「炭水化物は危険、脂質は安全」の波紋 (東洋経済オンライン)



糖質制限がいいのはわかった。

「どうぶつ性の脂をとると血液がドロドロになって冠動脈や頸動脈にべったり理論」はどうなちゃうのかな。

2017年10月2日

重症脳卒中患者の予後精度


Predictive accuracy of physicians' estimates of outcome after severe stroke.
2017  9月  オランダ

脳卒中患者の半数以上が2年内に死亡または重度の障害を抱える。

また 院内で死亡するケースのおおくは医師が延命治療を引き揚げたあとに起きる。それゆえ終末期の判断には患者の正確な回復度の予測が必要となる。

そこで発症後間もない重症脳卒中患者の 医師による予後の精度を検証してみたそうな。


くも膜下出血を除く 脳梗塞または脳内出血の発症4日時点での重症患者(BI<6/20)について、
複数医師による6ヶ月後の死亡、生活自立度、QoLの予測と、
じっさいの6ヶ月後のフォロー結果を比較したところ、


次のようになった。

・平均年齢72、60人(脳梗塞30人)の患者を対象とした。

・6ヶ月時点で30人の患者が死亡した。

・生き残った30人のうち1人は死亡すると予想されていた。

・死亡予測された15人のうち14人はほんとうに死亡した。

・回復不良(mRS>3)と予測された46人のうち4人は回復良好だった。

・QoL低予測の8人中5人およびQoL高予測の18人中14人はそのとおりになった。

重症脳卒中患者の担当医師たちによる6ヶ月後の死亡 回復不良予測は正確ではなかった。QoLにいたってはもっと不正確だった、


というおはなし。
図:重症脳卒中患者の予後予測の精度

感想:

上の図の青棒と赤棒がハズレ。死亡予測ですら半数を外している。

実は回復しそうな患者には悪しめの予測(上図の赤棒)が告げられる。これをセルフハンディキャッピングという。

2017年10月1日

くも膜下出血の脳血管れん縮と早期脳損傷とクルクミン


Curcumin mitigates cerebral vasospasm and early brain injury following subarachnoid hemorrhage via inhibiting cerebral inflammation.
2017  9月  中国

脳卒中の5%を占めるくも膜下出血は、そのおおくが脳動脈瘤の破裂によるもので死亡率がとてもたかい。

早期脳損傷(EBI)と血管攣縮が高死亡率のおもな原因と考えられており、酸化ストレスや炎症、細胞死がそのメカニズムに関係している。

いっぽうウコン(ターメリック)に含まれる黄色の成分クルクミンにはおおくの病気で抗炎症 抗酸化作用が確認されており、脳梗塞や脳内出血では神経保護効果がしめされている。

くも膜下出血へのクルクミンの影響をしらべてみたそうな。


視交叉槽に事前採集した血液を注入して人為的にくも膜下出血状態にしたネズミについて、クルクミン(150mg/kg)を注射した。

死亡率や神経症状、血管攣縮、活性酸素反応、炎症性たんぱく質を定量した。


次のようになった。

・クルクミングループで死亡率が低下し 神経症状も緩和され、

・血管攣縮も軽減されていた。

・炎症性サイトカインの過剰発現が抑制され、その転写因子も抑えられていた。

クルクミンには くも膜下出血による脳の炎症を免疫反応の転写因子レベルで抑制することで血管攣縮や早期脳損傷を軽減するはたらきがある


というおはなし。
図:くも膜下出血へのクルクミンの影響

感想:

今夜はカレーライスだ。

[クルクミン]の関連記事

2017年9月30日

女性に不平等な国の脳卒中死亡率


Countries with women inequalities have higher stroke mortality.
2017  9月  韓国

脳卒中からの回復は男女でことなり、生活習慣のほか遺伝やホルモン 解剖生理学的ちがいにも影響を受ける。

さらに女性をとりまく社会環境や法的な不平等によって その回復がさまたげられる可能性もある。

そこで社会の男女格差が脳卒中死亡率におよぼす影響を世界の国別にしらべてみたそうな。


WHOのデータをもちいて176カ国の男女の脳卒中死亡率の比をもとめた。

女性の社会権利についての50項目からなる評価との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・46の国(26.1%)で女性の脳卒中死亡率が男性を上回っていた。

・このうちの29の国(63%)はアフリカのサハラ砂漠以南の地域にあった。

・脳卒中死亡率の男女比は 女性の権利のうちの14項目、たとえば就職、銀行口座の開設、家庭内暴力への罰則、資産保有の権利など と関連がつよかった。

・また、国連開発計画(UNDP)の提唱するジェンダー不平等指数(GII)との関連もつよかった。

世界的に 社会の男女格差が女性の脳卒中死亡率と関連していた、


というおはなし。

図:世界の国の女性の脳卒中死亡率の高さ

感想:

日本はもっとヒドイとおもってたけど、世界的には最良レベルだな。

2017年9月29日

脳卒中の幹細胞治療 フェーズⅡの成果


Phase I/II randomized controlled trial of autologous bone marrow-derived mesenchymal stem cell therapy for chronic stroke.
2017  8月  香港

脳卒中で脳が損傷すると脳室壁で新たに神経細胞が産生されて損傷部位に移動することが知られている。しかしその細胞の多くは数週間で死滅し、定着するものはわずかである。

いっぽう細胞治療では患者自身の骨髄から採取した幹細胞を用いる方法がもっとも期待されている。

今回、発症後1年経った脳卒中患者への細胞治療の安全性と有効性(フェーズⅠ,Ⅱ)についてランダム化比較試験をおこなってみたそうな。

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