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2025年12月26日
脳卒中後の肩の痛みはなぜ防げないのか
2025年7月21日
音楽療法と脳卒中リハビリ – 聴く音楽がもたらす驚きの回復効果
脳卒中からのリハビリテーションに「音楽療法」が注目されています。音楽療法(特に音楽を聴くリスニング療法)は、クラシック音楽や自然音、患者さんの好きな曲、さらにはバイノウラルビートなど幅広い音を活用し、脳と心身にポジティブな刺激を与えるアプローチです。実は近年の医学論文で、音楽を取り入れることで運動機能や認知機能の回復、感情面の安定、睡眠の質向上、疼痛(痛み)緩和など様々な効果が報告されています。ここではエビデンスに基づき、音楽療法が脳卒中患者にもたらす驚きの効果を前向きな論調で解説します。
運動機能の改善 – リズミカルな音楽がまひした手足の動きを引き出し、歩行やバランスの向上に役立つ可能性があります。
認知機能の向上 – お気に入りの音楽を聴くことで記憶力や注意力が回復し、さらには言葉のリハビリにもつながることが示されています。
感情・心理面への効果 – 音楽は気分を高揚させ、うつ症状や不安を軽減します。リハビリの意欲向上やストレス緩和にも有効です。
睡眠の質改善 – 穏やかな音楽や自然音は寝つきを良くし、深い睡眠を促進します。睡眠障害に悩む脳卒中患者さんの安眠ケアとして期待されています。
疼痛緩和 – 心地よい音楽に集中することで痛みの知覚が和らぐ可能性が報告されています。痛みや緊張を音で紛らわせる効果です。
それでは、各効果について医学研究の結果を詳しく見ていきましょう。
脳卒中リハビリに音楽療法が注目される理由
脳卒中後の後遺症には麻痺や言語障害、認知障害、感情面の不調など多岐にわたります。リハビリ初期の急性期から回復期・慢性期まで、音楽療法は各段階で患者を支える「隠れた名脇役」になり得ます。医学的な視点で見ると、音楽を聴くことは脳にとって豊かな刺激です。音楽を聴くと人間の脳では、注意・記憶・運動・情動処理に関わる広範なネットワークが左右両半球で活性化されます。また音楽刺激はドーパミン系を介して快感や意欲を高め、感情や認知機能を向上させることも知られています。こうした科学的知見が背景にあり、「音楽の力で脳を再活性化しよう」という発想が脳卒中リハビリに取り入れられてきたのです。
さらに音楽療法は安全で安価かつ取り組みやすいという利点もあります。フィンランドのヘルシンキ大学の研究者サルカモら(2008年)は「脳卒中直後の早期リハビリ期間に音楽を日常的に聴くことは、他の積極的リハビリが難しい時期でも手軽に導入でき、患者の認知面・感情面の回復を促す有用な方法」だと述べています。実際、入院中の患者さんはリハビリの合間、多くの時間をベッド上で過ごしがちですが、その“空白の時間”に音楽を聴くことで脳に刺激を与え、回復を後押しできるわけです。このように、音楽療法は従来のリハビリを置き換えるものではなく「価値あるプラスアルファ」として注目されています。
音楽療法の種類:クラシックから自然音・バイノウラルビートまで
一口に音楽療法と言っても、そのアプローチはさまざまです。ここでは脳卒中患者に用いられている主な「聴く音楽療法」の種類と特徴を紹介します。
クラシック音楽 – モーツァルトやバッハなどクラシックは研究で用いられる代表格です。クラシック音楽は構造が安定しておりリラックス効果も高いため、注意力や空間認知を改善する目的で使われます。実際、クラシック音楽を流すと空間の片側を見落とす半側空間無視の患者で視覚注意が向上したとの報告があります。静かなクラシックは心拍を落ち着け、不安軽減にもつながります。
自然音・環境音 – 小川のせせらぎ、波の音、鳥のさえずりなどの自然音は、まるで森林浴をしているようなリラックス効果を生みます。病院や自宅で環境音楽を流すことで、ストレスホルモンを抑えリラックス状態を促進する取り組みもあります。直接の医学論文は多くありませんが、不眠や不安の軽減目的で自然音を用いる療法も実践されています。心が安らぐ環境音は、脳卒中後の睡眠環境の改善や情緒安定に貢献すると期待されています。
好きな音楽(患者の選曲) – 患者さん本人が「これが聴きたい!」と思う曲こそ最高の音楽療法です。ジャンルはポップスでも演歌でもジャズでも構いません。実際の研究でも、患者が自分で選んだお気に入りの音楽を毎日聴いてもらう方法が取られています。ヘルシンキ大学の研究ではポップ、クラシック、ジャズ、フォークなど本人の好みに合わせた曲を自由に聴いてもらいました。好きな曲は脳の報酬系を強く刺激し、やる気や快感情を引き出すため、リハビリ効果を高めるエンジンになってくれます。
バイノウラルビート – 左右の耳にわずかに異なる周波数の音を聴かせると、脳内でその差周波数に同調した音が知覚されます。これをバイノウラルビートといい、近年脳波や認知機能への影響が研究され始めました。あるパイロット研究(2025年)では、バイノウラルビートを聴いた脳卒中患者で前頭前野の脳活動が一時的に高まり、神経系の反応性が改善する可能性が示唆されています。まだ予備的な段階ですが、脳を直接「周波数でマッサージする」ようなユニークな試みとして注目されています。
このように、音楽療法と一口に言っても癒やしのクラシックから自然音、モチベーションを上げる大好きな曲、新しい音響技術まで多彩です。患者さん一人ひとりに合った音を選ぶことで、その効果を最大限に引き出すことができます。
運動機能の改善:リズムと音が身体を動かす
脳卒中後の麻痺した手足の機能回復に、音楽が力を発揮します。特にリズムは運動機能リハビリの強い味方です。例えば、音楽に合わせて歩行訓練を行うリズミック・オーディトリ・ステimulation(RAS, リズム聴覚刺激)は、歩幅や歩行速度、バランス能力の改善に有効であるとするメタ分析結果があります。あるレビュー研究では、RASによって歩行機能やバランス機能が有意に向上したと結論づけています。
また、音楽に合わせた運動療法(Music-Supported Therapy)も注目されています。これは楽器演奏やリズムに乗せた動作練習など音楽を積極的に用いるリハビリで、上肢機能の改善に効果があると報告されています。実際、10件の臨床試験(計358名)を統合した系統的レビューでは、音楽を取り入れたリハビリ群は通常リハビリ群に比べ、指先の巧緻動作テスト(ボックス&ブロックテスト)の成績が有意に向上し(効果量SMD=0.64)、上肢全体の運動機能でも有意な改善傾向が見られました。さらに、2件の試験では歩行の歩幅が伸び、歩行速度も向上するなど、下肢を含めた全体的な運動機能にも音楽療法が良い影響を及ぼしています。
音楽が運動機能に効く理由の一つは、「楽しいからたくさん動いてしまう」点にあります。曲に合わせて身体を動かすことで苦しいリハビリ訓練も遊びのように継続できます。また、楽器を使う場合、自分の動きがそのまま音になって返ってくる即時フィードバックが得られます。たとえば、麻痺した腕でもタンバリンを叩けば音が鳴り、小さく動かせただけでも達成感があります。国立長寿医療研究センターの佐藤正之氏も「楽器を用いた訓練では、運動の結果が音としてリアルタイムに返る利点が大きい」と述べています。この達成感や喜びが脳内報酬系を刺激し、さらなるリハビリ意欲や神経回路の活性化につながると考えられます。
ポイントは患者さんが楽しめるリズムや曲を選ぶことです。アップテンポの行進曲に合わせて足踏みしたり、ゆったりしたワルツに乗って腕を動かしたりと、音楽はトレーナーでありパートナーです。音の波に乗ることで、「麻痺した足が自然と前に出た!」という喜びを引き出し、身体の再学習を促すーーそれが音楽療法の持つ力なのです。
認知機能の向上:音楽刺激で脳を活性化
音楽は脳の認知機能(記憶や注意、言語など)にも良い影響を与えます。特に脳卒中の急性期から回復期において、意識がはっきりしている患者さんには積極的に音楽を聴いてもらうことで認知面の回復を早めるエビデンスがあります。フィンランドのヘルシンキ大学病院で行われた有名な研究(サルカモら、Brain誌2008年)では、脳卒中後すぐの患者60名を対象に毎日音楽を「聴く」グループ、オーディオブックを聴くグループ、何も聴かないグループに分け経過を追いました。その結果、3か月後に音楽を聴いたグループは、何もしなかったグループに比べて言語記憶(言葉の記憶)が大幅に改善し、その改善率は発症直後から約60%もアップしました(対照群は29%の改善)。また注意力(選択的注意)も音楽群のみ有意に向上し、オーディオブック群や対照群では改善が見られなかったのです。驚くべきことに、この差は6か月後の追跡調査でも維持されていました。研究チームは「これほど顕著な認知機能の差は日常的に音楽を聴いた効果によるもの**だ」と結論づけています。
音楽はまた、脳の「注意を向ける」力を引き出すことも示されています。右脳梗塞で左側への注意が弱くなる「半側空間無視」の患者16名を対象にした実験では、クラシック音楽を流しながら課題を行うと、何も音がない時より課題成績が向上しました。逆に不快なノイズを流すと成績が悪化し、静寂時が最も悪い結果に。多くの患者さんで音楽により覚醒度や注意喚起レベルが上がったと自己報告されており、心地よい音が脳の注意ネットワークを活性化する可能性が示唆されています。これは音楽が持つ覚醒効果・気分調整効果のおかげで、脳が刺激され集中しやすくなるためと考えられます。
さらに、音楽は言語能力の回復にも役立ちます。脳卒中後に言葉が出にくくなる失語症に対して、メロディック・イントネーション・セラピー(MIT、メロディーに乗せて発語を促す療法)が有名です。患者に簡単なフレーズをメロディに合わせて歌わせるこの方法で、残存する右脳のネットワークを活用して言語中枢を再訓練できるとされています。実際、ブローカ失語の患者で歌唱訓練により日常会話フレーズの発話が改善したとの報告もあり、音楽が「言葉を取り戻す橋渡し」となるケースもあるのです。
このように、音楽を聴くことは記憶や注意、言語といった高次脳機能へのセラピーにもなり得ます。脳卒中によるダメージからの回復には脳の可塑性(神経のつなぎ替え)が重要ですが、音楽は脳の多領域を同時に刺激してネットワーク再編を促すため、認知機能のリハビリ効果を高める理にかなったツールなのです。
感情・心理面への効果:音楽が心に与える癒しと活力
音楽の持つ心への癒し効果は、誰もが一度は実感したことがあるでしょう。脳卒中後は身体機能の障害だけでなく、うつ病や不安、意欲低下など心理面の課題も生じやすくなります。そんな時、音楽療法が心の処方箋として寄与するエビデンスが続々と報告されています。
まず、前述のフィンランドの研究(2008年)では、毎日音楽を聴いていたグループは対照群に比べて抑うつ気分や混乱が少なく、ポジティブな気分を保てたことが示されました。音楽を聴かなかった患者では落ち込みがちだったのに対し、好きな曲を聴いていた患者は「音楽に励まされ前向きな気分になれた」と自己報告しています。音楽には気持ちを明るく切り替える力があるのです。
さらに注目すべきは、音楽療法が臨床的なうつ症状を有意に軽減するという大規模な分析結果です。中国の研究チームが行った最新のメタ分析(2025年、対象2776人のRCT37件統合)によると、音楽療法介入を受けた脳卒中後うつ(PSD)患者は通常ケアのみの患者に比べ、うつ病評価スコア(HAM-D)がおよそ5ポイント改善し、不安評価スコアも大きく低下しました。加えて日常生活動作(ADL)の自立度が向上し、神経学的後遺症の程度も有意に改善しています。興味深いことに、生化学的指標では脳内のセロトニン(5-HT)濃度が有意に上昇しており、音楽療法が脳の幸せホルモンを増やすことで気分改善につながっている可能性があります。研究者らは「音楽療法は脳卒中後うつ病の抑うつ症状、ADL、神経機能、そしてセロトニンレベルを有意に改善する臨床的有効性が示された」と結論づけています。
また、他の研究でも、楽器演奏を取り入れた音楽療法で患者の抑うつスコアが低下し、自己評価の生活の質が向上したとの報告があります。音楽そのものに即効性のリラックス効果・高揚効果がある上、音楽療法セッションに参加することで「自分も積極的に何かできた」という達成感や社会交流が得られる点も、心理的安定につながります。
このように音楽は、うつや不安を和らげ、前向きな気持ちを呼び起こす強力なツールです。不安なときに好きな曲を聴くとホッとしたり、落ち込んだ日に明るい音楽で元気が出たりする――その延長線上に、医学的にも証明された音楽療法の効果があります。「心に効くリハビリ」として音楽を活用することで、患者さんのメンタルヘルスと意欲向上をしっかり支えていけるのです。
睡眠の質改善:穏やかな音で安眠サポート
脳卒中後、入院中や在宅療養中に不眠や睡眠障害に悩まされる方も少なくありません。夜間の痛みや不安、環境の変化、脳の損傷による睡眠リズムの乱れなど、原因は様々ですが、質の良い睡眠は脳の回復にとって不可欠です。そこで役立つのが音楽による安眠サポートです。
音楽のリラックス効果を睡眠に応用した研究は多数あり、総合すると音楽療法は主観的な睡眠の質を有意に改善することがわかっています。2025年のレビュー研究では、異なる手法の27研究を分析し、寝る前の音楽療法が入眠を早め、眠りの深さなど主観的睡眠の質を向上させたことが確認されました。特に音楽が不眠に効く理由は、音楽を聴くことで不安が和らぎ気分が落ち着くためです。ゆったりした曲調の音楽は副交感神経を優位にし、心拍や呼吸を穏やかに整えるため、心身が睡眠モードに入りやすくなります。
脳卒中患者さんの場合も、例えば就寝前に穏やかなクラシック音楽や自然音を静かに流すことで、病院の消灯後の不安感を軽減したり、在宅での夜間トイレ後の入眠をスムーズにしたりといった効果が期待できます。実際、脳卒中リハビリ病棟で環境音楽を取り入れた取り組みでは「音楽を流すようにしたら夜間せん妄が減り、みなよく眠れるようになった」との声もあります(※看護ケアの報告事例)。
もっとも、音楽による睡眠効果は個人差も大きく、「この曲を聴けば誰でも熟睡」といった万能薬ではありません。音楽選びは人それぞれ好みがありますので、本人が心地よいと感じる音を選ぶのが大原則です。ある人には波音が安らぎを与える一方、別の人にはピアノ曲が安心感をもたらすかもしれません。大切なのは「聴いていて不快でないこと」。リラックスできる音に身を委ねることで、緊張がほぐれスムーズな眠りにつながるでしょう。
睡眠は脳の回復時間。その質を高める手段として、副作用のない音楽という安眠薬をぜひ活用したいですね。
疼痛緩和:音による痛みの軽減効果に期待
音楽には痛みを和らげる不思議な力もあります。脳卒中そのものによる中枢痛や、麻痺に伴う肩の痛み・関節痛、長期臥床による腰痛など、患者さんが抱える痛みは様々です。痛みがあるとリハビリ意欲も下がりがちですが、そこでも音楽療法が助けになる可能性があります。
研究によれば、音楽を聴くことで痛みの知覚や痛みに対する耐性が変化します。たとえば手術後の疼痛や慢性痛の患者で、好きな音楽を聴かせると痛みスコアが低下したという報告が多数あります。脳卒中リハビリ領域でのエビデンスは限定的ですが、カナダのストロークエンジン(脳卒中リハ情報データベース)は「音楽療法は脳卒中後の痛みの知覚を改善する可能性が示唆されている」と述べています。
音楽による疼痛緩和のメカニズムは完全には解明されていませんが、有力な説として注意のそらし効果があります。好きな音楽に聴き入っている間は痛みから意識がそれるため、痛みを感じにくくなるのです。特に歌詞のある歌や思わず口ずさみたくなる曲は、痛みへの注意を逸らすのに有効でしょう。また音楽によってリラックスし筋緊張がほぐれることで、筋肉や関節の痛みそのものが軽減するケースもあります。
脳卒中患者さんではありませんが、ある研究で心臓手術後の患者に小川のせせらぎ音を聞かせたところ、痛み止めの使用量が減ったとの報告もあります。自然音やヒーリング音楽による穏やかな環境は、痛みに伴うストレス反応(血圧上昇や心拍数増加)を抑え、痛みの悪循環を断つ助けとなるのでしょう。
以上のように、音楽療法は「痛みと上手に付き合う」一手段としても有望です。痛みが強いときこそお気に入りの曲で気を紛らわせ、リラックスする習慣を取り入れてみると良いかもしれません。薬と違って副作用は一切なく、むしろ心まで軽くしてくれる点が音楽療法の魅力です。
音楽療法を取り入れる上でのポイントとまとめ
音楽療法は脳卒中からの回復を多方面でサポートする、有望なリハビリ手法です。急性期の意識がある段階から慢性期の在宅生活まで、音楽は常に寄り添い、脳と心と体に働きかけてくれます。病院でのリハビリ期間は通常6ヶ月程度で終了しますが、その後の慢性期の在宅における機能維持・向上に音楽療法が果たす役割は大きいと専門家も指摘しています。
最後に、音楽療法を上手に活用するためのポイントと本記事のまとめを述べます。
好きな音楽を毎日の習慣に: 科学的エビデンスからも、本人が好きな曲を繰り返し聴くことが最も効果的です。通院途中やリハビリ前後のリラックスタイムに、お気に入りの音楽をイヤホンで聴く習慣をつけてみましょう。気分が上がり、脳も活性化してリハビリ効率が高まります。
目的に合わせて音楽を選ぶ: 就寝前はゆったりした曲や自然音、運動リハビリ時はテンポの良い曲、といったように目的にフィットする音を選びましょう。たとえば歩行訓練ではリズミカルな曲で足運びがスムーズになり、注意訓練ではハッピーな音楽で集中力が増すとの報告もあります。音楽の「処方箋」を使い分ける感覚です。
専門家の助言を活用: 音楽療法士がいる場合はぜひ相談を。専門家は患者さんの状態に合った音楽やアクティビティ(歌唱や楽器演奏なども含む)を提案してくれます。グループ音楽療法なら仲間と一緒に歌ったり演奏したりする楽しさで孤独感も薄れ、社会的交流がリハビリ意欲につながります。音楽療法士不在でも、リハスタッフに音楽の活用を相談すれば何らかの形で取り入れてもらえるでしょう。
無理のない範囲で楽しく: 音楽療法のモットーは「Enjoy!(楽しもう!)」です。決して「毎日◯時間聴かなきゃ」と義務に感じる必要はありません。調子が悪い日は小鳥のさえずりを5分聞くだけでもOK。心地よく感じる範囲で、長く続けることが大切です。
最後に強調したいのは、音楽の力は想像以上だということです。記憶を呼び覚まし、足を前に踏み出させ、心に灯をともす音楽は、まさに脳卒中リハビリの名脇役と言えるでしょう。医学論文の裏付けも年々増え、音楽療法はエビデンスに基づく補完療法として確立されつつあります。ぜひ日々のリハビリに音楽を取り入れてみてください。好きな音楽とともにリハビリに取り組めば、きっと脳も体もいつもより元気に応えてくれるはずです。
参考文献
Särkämö T. et al., Brain, 2008 – Music listening activates broad bilateral brain networks (attention, memory, motor, emotion) and enhances cognitive & emotional functions.
Särkämö T. et al., Brain, 2008 – Early post-stroke daily music listening improved verbal memory and focused attention more than audiobooks or no input, and prevented depressed mood.
Zhao J. et al., Scientific Reports, 2016 – Meta-analysis: Music-supported therapy significantly improved fine motor skills (Box and Block test) and showed positive trends in overall motor function in stroke patients.
Wang L. et al., Frontiers in Neuroscience, 2022 – Systematic review: Rhythmic auditory stimulation improved gait parameters, walking function, and balance in individuals with stroke.
Särkämö T. et al., Brain, 2008 – Music listeners had approximately 60% improvement in verbal memory versus 18–29% in others at 3 months, and reported less depression and confusion.
Tsai P-L. et al., American Journal of Occupational Therapy, 2013 – Listening to classical music improved visual attention in stroke patients with unilateral neglect compared to silence or noise.
Li Y. et al., Medicine (Baltimore), 2025 – Meta-analysis of 37 randomized controlled trials: Music therapy in post-stroke depression significantly reduced depression, anxiety, improved activities of daily living, reduced neurological deficits, and increased serotonin levels.
Gou D. et al., Frontiers in Psychology, 2025 – Meta-narrative review: Music therapy significantly improves subjective sleep quality by reducing anxiety and regulating mood, though effects on objective sleep measures are inconclusive.
Zhong Y-T. et al., Medicine, 2025 – Pilot EEG study: In stroke patients, binaural beats stimulation enhanced prefrontal cortex activity and may improve nervous system responsiveness.
佐藤正之, 音楽医療研究, 2024 – 楽器を用いた音楽訓練は運動結果が音として即時にフィードバックされ、慢性期在宅リハビリに有用である。
StrokEngine, Music Therapy, 2017 – Review suggests limited evidence that music therapy can improve arm movement, walking, pain perception, mood, and behavior after stroke.
StrokEngine, Music Therapy – Melodic Intonation Therapy (singing phrases with rhythm) has been shown to improve language and aphasia outcomes in stroke patients.
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脳卒中の慢性疼痛の特徴
元
Novel insights into stroke pain beliefs and perceptions
2019 12月 オーストラリア
脳卒中経験者で3ヶ月以上 慢性的な疼痛が続くケースは40-65%に見られ、一般人の19-30%よりもずっとおおい。
この疼痛について脳卒中経験者のおおくが発症まえには経験したことのない痛みであると報告している。
これらの疼痛は神経が障害されることによるものと考えられ、たとえば「肩の痛み」や「中枢性疼痛」については投薬もふくめ有効な治療法はほとんどない。
そこで脳卒中経験者が慢性疼痛をどう考え、どのように感じているのかを脳卒中以外のケースとでくらべてみたそうな。
2018年3月27日
脳卒中のあとの中枢性疼痛の仕組みがわかった
元
How central is central post-stroke pain? The role of afferent input in post-stroke neuropathic pain: a prospective open-label pilot study.
2018 3月 アメリカ
脳卒中患者の39-55%は頭痛や肩の痛み、痙縮、中枢性疼痛などのなんらかの痛みを経験する。
しかしこれら痛みケースの4分の1を占める中枢性疼痛のメカニズムはよくわかっていない。
中枢性疼痛は損傷脳と反対側におき、特に上肢や下肢で痛むことがおおい。
通常 慢性的な痛みで、感覚過敏、痛覚や温覚の異常を伴うこともおおく有効な治療法がない。
これまで 中枢神経にある痛みを受容する部分とくに視床のニューロンが脳損傷により過活動になり抑制が効かなくなってしまうことが痛みの原因であると考えられてきた。
今回、中枢性疼痛の原因が「末梢から中枢へ向かう神経シグナルが中枢で誤解釈されるため」という仮説を立てた。そこで途中の神経をブロックすることでこの痛みが消えるものか検証してみたそうな。
脳卒中で中枢性疼痛のある8人の患者について、
疼痛のある部位から中枢へ向かう神経の正確な途上位置に局所麻酔薬リドカインを打ち神経をブロックした。
次のようになった。
・8人中7人で30分以内に痛みが完全に消失した。残りの1人も痛みが50%以上緩和した。
・このとき痛みスケールの中央値は 6.5→0に下がった。
・他の感覚異常も神経ブロックにより消えた。
中枢性疼痛は中枢神経システムの中で自律的に発生するというよりも、末梢からの求心性の感覚刺激に依存し おそらくはその誤解釈によるものと考えられる、
というおはなし。
感想:
比較対照群のない実験だけど、この説は支持したい。
でも誤解釈は痛みについてだけなんだろうか? じぶんの世界認識も誤ってはいないだろうか、、、って心配になるよ。
2018年1月28日
読者レポート:中枢性疼痛を解決する方法
脳卒中後の中枢性疼痛では体験者にしか理解できないほどの非常にはげしい痛みを感じる。これに耐えかねて自殺する者もいるという。
脳卒中後の痛みで自殺してしまう患者がいるしかも中枢性疼痛にはいまだ有効な治療法がほとんどない。
中枢性疼痛の治療法と効果についてこんかい、中枢性疼痛が自然に治ってしまったという報告があったので紹介する。
脳卒中後の中枢性疼痛体験についておそらく日本でいちばんたくさん語っているブログがあります。
これ↓
1963年1月1日生まれ中途身障者の岡下俊介ブログ
先日、このブログを実名で運営している岡下俊介さんからメールをもらいました。
許可を得て引用します。
-------------------------------------------ここから
今回、貴殿が運営されておられる
「サバイバのゼンデラ」という
脳卒中に関する情報サイトに役立つのではないかと私の症状緩和の経験を
一方的ではありますがお伝えさせて頂きます。
その症状とは視床痛いわゆる中枢性疼痛の症状ですが、ご存知かどうか分かりませんが、私は脳出血を発症後、半年程度経過してから視床痛いわゆる中枢性疼痛に5年程悩まされ続けました。上記の情報サイトでも紹介されていた疎経活血湯も試してみたり、抗うつ剤なども試してみたりしていました。ところが約9年耐え続けた結果、現在では症状がほとんどなくなっていることに気付きました。
あれ程根治が難しいと言われている視床痛がなんと自然治癒?したようなのです。当時は曇天や雨の日や低気圧が近づくだけで症状が悪化していたのですが、現在ではそんな天気にも左右されず、緩和したままなのです!
私は最近、ベストセラーになったと言われる「大往生したけりゃ医療とかかわるな」の著者の中村仁一先生がその著書に書かれているように、人間は医療と一切関わらずにいれば、たとえ癌でも、眠るように「自然死」できるというように、視床痛も無理に医療を施す事なく、「放置(自然のまま)にしておけば、自然治癒するのではないかと自分自身の前述のような体験からも感じている次第です。
中枢性疼痛緩和についてもう一点だけお伝えしたい事があります。
実はあの疼痛で苦しんでいた当時、確かに何をしても和らぐ事はありませんでした。ただひとつだけ明らかに和らぐと確信した事があるのです。
それは、何と、涙する程感動することでした。例えば私はあのロッキーの映画が好きなんですが、ロッキーを観ると、何度観ても涙してしまうのです。
ところがそんな風に涙した瞬間から少なくとも数時間は疼痛がなくなっているんです。
これは確信に近いものがあります。
理由は分かりませんが、感動というものが脳になんらかの影響を及ぼすのではないかと勝手に考えています。
その事に確信をしてから、できるだけ涙するような映画を観ようと
「最後の忠臣蔵」「永遠のゼロ」を観たり、NHK の「ハゲタカ」というドラマの最終回なんかは何度も観ましたよ(笑)
それによって疼痛緩和できるからです
ここまで-------------------------------------------
自殺したくなるほどの激しい痛みが何年も消えなかったとしても、必ずしも一生つづくわけではないことを岡下さんの事例があきらかにしています。

感想:
感動して痛みが消える、はとても興味深い。
ブログ主の岡下さんとはふしぎと共通点があって、
・生まれ年が1年差。
・脳内出血発症日が同じ年の2週間ちがい。
・ブログ開始日もほんのひと月のズレ。
・いまだにアクティブに更新が続いている。
...
2017年2月16日
一次運動野刺激療法は中枢性疼痛にどのくらい効くのか
元
The Effect of Motor Cortex Stimulation on Central Poststroke Pain in a Series of 16 Patients With a Mean Follow-Up of 28 Months.
2017 1月 中国
中枢性疼痛の治療法で 脳表に電極を貼り付け運動野を電気刺激する "一次運動野刺激療法"(MCS)は1991年に日本人が初めて報告した。
どのくらい効くものなのか脳卒中患者で確かめてみたそうな。
MCS手術を受けた脳卒中で中枢性疼痛の患者16人の医療記録を解析したところ、
次のことがわかった。
・手術前の痛みスコアは最大10点中 8.0、手術後1ヶ月で3.8、約28ヶ月時点では5.3 だった。
・脳出血または脳梗塞、脳の損傷位置、電極の硬膜上下のちがいは除痛効果に影響しなかった。
・事前のrTMS検査でMCSが効果的な患者を識別できた。
一次運動野刺激療法で脳卒中後の中枢性疼痛をいちじるしく和らげることができた。その効果は脳卒中の種類、損傷位置に依らなかった、
というおはなし。
感想:
なぜ効くのかはよくわかっていないんだって。
そもそも なんでこういうことをやろうと思ったんだろうね。
2016年10月20日
脳卒中で中枢性疼痛 感覚ふつうなのに、、、
元
Central Poststroke Pain Can Occur With Normal Sensation.
2016 10月 インド
脳卒中で中枢神経系にダメージを受けると知覚異常や痛みを感じることがある。これを中枢性疼痛という。
これまで視床と関係があると考えられてきたが 必ずしもそうでもなさそうである。
そこで中枢性疼痛の頻度、期間、部位、特徴を調べてみたそうな。
25-80歳 319人の脳卒中患者について調べたところ、
次のことがわかった。
・20.7%の患者で中枢性疼痛がおきた。
・中枢性疼痛患者の平均年齢は55、31.8%は女性、
・疼痛が始まる時期、期間はさまざまで、
・焼けるような痛みが56%、他に ヒリヒリ感、刺すような痛みなどがあった。
・疼痛の強さと脳のダメージ部位に関連はなかった。
・42.3%で脊髄視床路にもとずく感覚(温覚、痛覚、触覚)が正常だった。
・プレガバリン(商品名リリカ)が半数の患者に有効だった。
脳卒中患者の20.7%に中枢性疼痛が確認できた。中枢性疼痛に脊髄視床路の障害は必須ではなかった。脳の損傷位置も中枢性疼痛の重症度に関係しなかった、
というおはなし。

感想:
ますます原因不明ってことなんだね。
最初のころは金属が痛かった。水に触れてもショックを感じた。
2016年6月4日
脳卒中のあとの下肢の痛みの種類
元
The impact of lower extremity pain conditions on clinical variables and health-related quality of life in patients with stroke.
2016 5月 トルコ
脳卒中のあとの下肢の痛みの種類について調べてみたそうな。
下肢の疼痛を訴える脳卒中患者185人について調べたところ、
次のことがわかった。
・関節炎が51%、
・中枢性疼痛が29%、
・複数の種類の痛みが混ざったもの10%、
・下肢痛からくる腰痛、大転子痛、股関節骨折、異所性骨化症、股関節脱臼、外反母趾、、、
と続いた。
・下肢疼痛の強さ長さ は日常生活動作やうつ HRQoLと関連があった。
下肢の疼痛は脳卒中経験者の生活の質に影響する、
というおはなし。

感想:
いまも 歩き出しに左足の裏が痛くてびっこを引くことがある。これは中枢性に分類されるのかな?
2016年1月31日
脳卒中後の痛みの種類と時期について
元
Prevalence and Time Course of Post-Stroke Pain: A Multicenter Prospective Hospital-Based Study.
2015 12月 イタリア
脳卒中後の疼痛を時期別、種類別に調べてみたそうな。
443人の脳卒中患者について、
急性期、亜急性期、慢性期 の各時期に、
中枢性疼痛、骨格筋痛、肩の痛み、痙縮の痛み、頭痛の有無を調査した結果、
次のことがわかった。
・全体の疼痛経験率は29.56%だった。
・14.06%が急性期、42.73%が亜急性期、31.90%が慢性期に起きた。
・痛みの起きる時期は痛みの種類により異なり、
・骨格筋や肩の痛みは急性期よりも亜急性期、慢性期に多かった。
・痙縮の痛みは慢性期に多く、
・頭痛は急性期に現れた。
・中枢性疼痛は急性期よりも亜急性期、慢性期に多く、
・投薬治療を受けている者は25%未満だった。
脳卒中後の痛みは急性期よりも亜急性期、慢性期に多く、治療対象にないことが多かった、
というおはなし。

感想:
いまだに、ウォーミングアップができていないと 足の裏が痛むことがある。すぐ気にならなくなるけどね。
2016年1月24日
肩の痛みは中枢性疼痛の仲間なのか?
元
Does hemiplegic shoulder pain share clinical and sensory characteristics with central neuropathic pain? A comparative study.
2016 1月 イスラエル
脳卒中後の肩の痛みのメカニズムを調べてみたそうな。
脳卒中片麻痺で肩の痛みのある16人と、
脊髄損傷による中枢性疼痛の18人について、
温度感覚、触覚の閾値および疼痛の範囲、程度を測定し比較したところ、
次のことがわかった。
・両グループとも正常部位に対する温度感覚の低下度が似ており、痛みの頻度も近かった。
・しかし痛みの質と悪化要因は異なっていた。
・肩の痛みの強度と温痛閾値低下や亜脱臼、痙縮に明らかな関連があった。
肩の痛みと脊髄損傷の中枢性疼痛には似ている点がいくつかあった。脳卒中後の肩の痛みは神経障害の要素を含んでいるのだろう、
というおはなし。

感想:
集中治療室で寝かされてる間に肩の関節がズレちゃったのかな、と思ったわ さいしょ。
なぜよりによって肩なのか?特別な場所なのか?
2016年1月3日
中枢性疼痛の割合と効いた薬
元
Central Post Stroke Pain Can Occur with Normal Sensation.
2015 12月 インド
脳卒中後の中枢性疼痛の特徴を調べてみたそうな。
319人の脳卒中患者について調査したところ、
次のことがわかった。
・20.7%が中枢性疼痛だった。
・彼らの年齢中央値は55歳、31.8%が女性だった。
・中枢性疼痛の発症時期、期間、部位は共通していなかった。
・中枢性疼痛の重症度と脳の損傷位置との関連はなかった。
・42.3%の患者は温度感覚や痛覚が正常だった。
・プレガバリン(商品名リリカ)が半数の患者の疼痛レベルを50%以上緩和した。
中枢性疼痛は脳卒中患者の20.7%に見られた。温痛覚が正常な患者も多くいたことから 脊髄視床路の損傷が条件ではないかもしれない。脳の損傷位置と疼痛の重症度との関連はなかった、
というおはなし。

感想:
感覚が少し戻りかけたころだろうか、車いすの金属フレームに触れるたびに痛くて、静電気のせいだと思っていた。水に触れても痛いことがわかって、おやおや?と思った。
2015年9月12日
中枢性疼痛の治療法と効果について
元
Management of Central Poststroke PainSystematic Review of Randomized Controlled Trials
2015 9月 カナダ
脳卒中患者の中枢性疼痛は慢性的に続く神経障害である。
その数ある治療法の効果を総括してみたそうな。
関連する過去の研究から信頼性の高いものを厳選して、データを統合、再解析したところ、
次のことがわかった。
・計459人の被検者を含む8件の研究成果が見つかった。
・それらは、抗けいれん薬、抗うつ薬、オピオイド系鎮痛薬、rTMS、鍼についての研究だった。
・いずれの治療法も 痛みに対しほとんど効果がないか何の影響ももたらさなかった。
・治療の確からさはきわめて低いレベルにあった。
これまでの研究を精査したところ、中枢性疼痛の治療ガイドラインに沿わない結論になってしまったが、実際に治療効果を示せないのだからしょうがない、
というおはなし。
感想:
rTMSと鍼はともかく、薬物系も役に立たないのは別の意味でつらい。
