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2025年12月17日

日本のリハビリ神話に待った 「重症ほど効く」の裏側を検証する

2025  12月  日本


脳卒中の急性期では、「できるだけ早く、できるだけ多くリハビリをすることが大切」と言われている。

しかし現場では、
・たくさんリハビリをしても、あまり良くならない人
・かなり重い状態なのに、意外と回復する人
が混ざっている。

これまでの研究は、「リハビリを多くすると、全体として良くなるのか」という平均的な見方が中心だった。

そこで、「リハビリが本当に効く人と、そうでない人がいるのではないか」
「どんな人がたくさんリハビリをすると得をするのか」
をはっきりさせるべくくわしくしらべてみたそうな。

2025年7月31日

リハビリ病院の落とし穴──歩数は足りてる、でも脳は動かない

2025  7月  カナダ


脳卒中のあと、体の機能を回復させたり、再発を防ぐには、ある程度の強さをともなう運動、いわゆる有酸素運動が役立つことが知られている。

アメリカ心臓協会(AHA)などのガイドラインでは、心拍数が平常よりしっかり上がる中等度の運動を、1回20分以上、週に3〜5回行うことがすすめられている。

ただし、リハビリ病棟に入院している間に、実際にどれくらいの人がそのレベルの運動をしているのかは、これまであまり調べられてこなかった。

そこで、脳卒中でリハビリ中の患者がどのくらい歩いているのか、また、どれほどの時間、有酸素運動といえる強さの活動ができているのかをくわしくしらべてみたそうな。

2025年6月30日

「脳卒中後の機能障害における比例回復則――早期のリハビリは要らないのか?

脳卒中後の機能回復に関して、「比例回復則(proportional recovery rule, PRR)」と呼ばれる経験則が報告されています。これは、多くの脳卒中生存者において失われた機能の約70%が数か月以内に自然回復するというもので、初期障害の程度から最終的な回復量を高い精度で予測できる可能性を示唆しています

本レビューでは、この法則が成立する領域と限界、神経学的根拠、反証や批判、リハビリ介入の影響、および自然回復に関する議論について、信頼性の高い英語論文をもとに整理します。


脳卒中の比例回復則


1. 比例回復則が成立する機能領域とその限界点

主要な運動機能(特に上肢の運動機能)は比例回復則が典型的に確認されている領域です。たとえばPrabhakaranら(2008年)は、脳卒中後の上肢麻痺の回復量がおおむね「初期障害量の70%」に収束することを報告しました(上肢Fugl-Meyer評価において、初期評価と3~6か月後の差が最大得点からの70%に相当)。同研究では最重度の麻痺を呈した一部の患者は予測より著しく低い回復しか示さず、これらを除外すると残りの患者群で初期重症度と回復量に0.7の比例関係が成立したとしています。以後の研究でも、上肢機能について異なる国・集団やリハビリ方法にかかわらず一貫して約70%前後の回復率が確認されており、患者の年齢、発症時の重症度、脳卒中のタイプ、リハビリ量といった要因に左右されにくい現象であることが示唆されています。例えばWintersら(2015年)やStinearら(2017年)の報告を含め、近年の5研究(合計500名以上)でこの70%現象が再現されており、非常に高い再現性が示されています。 下肢機能(歩行を含む)についても、同様の回復パターンが報告されています。Smithら(2017年)は下肢運動麻痺も発症後3か月で約70%が回復すると結論付けました。より大規模なコホート研究(EPOSデータ)では、Veerbeekら(2018年)が下肢Fugl-Meyer評価 (最大34点) における6か月後の回復量が平均で64%(95%信頼区間59-69%)に達することを報告し、約87%の患者がこの「比例回復」に当てはまりました 。一方、初期下肢麻痺がきわめて重度(Fugl-Meyer下肢スコアが14点未満)の患者群では非比例な低回復(non-fit)となる例も見られ、同研究では下肢初期点14点未満の患者のうち約35%が70%則に当てはまらない「非回復者」でした。もっとも非回復者の割合は上肢より下肢で低く(上肢で31%、下肢で13%)、これは下肢の降下路が冗長で代償が効きやすいためではないかと議論されています。以上より上肢・下肢の運動機能は比例回復則が成立しやすい領域ですが、完全麻痺に近い重度例ではこの法則が適用できない限界があるといえます。 言語機能(失語症)に関しても、初期の言語障害の重症度が回復量をよく予測することが示されています。Lazarら(2010年)の研究タイトル「脳卒中後の失語症の改善は初期重症度によってよく予測できる」が示すように、失語症の回復も初期評価から一定割合の改善が見込まれる傾向があります。具体的にはWestern Aphasia Batteryなどの言語スコアで重症なほど改善余地も大きいが、その 約70%程度まで回復する例が多いと報告されています。もっとも言語領域では運動ほど症例数が多くないため変動幅も指摘されています。また、半側空間無視など注意機能についても比例回復が当てはまる可能性があり、Marchiら(2017年)やWintersら(2017年)は視空間の偏側注意障害が発症後に平均90%以上という高率で改善することを示し、これも一種の比例回復と捉えられています(95%CIが100%を超えるほどほぼ完全に近い回復が統計的に示唆されました)。さらに認知機能全般についてRamseyら(2017年)は、記憶や遂行機能など様々な領域で「各患者が失った機能の一定割合を取り戻す」という現象がみられる可能性を示唆しています。 以上のように、上肢・下肢の運動機能、言語、空間認知などで比例回復則が報告されています。ただし全ての患者・全ての機能に一律に成立するわけではなく、特に初期障害が極めて重度な場合や生理的な回復メカニズムが阻害された場合には当てはまらないことが明らかになっています。この当てはまらない群(非回復者/non-fitters)の存在が、比例回復則の限界点といえます。 2. 比例回復則を支持する神経科学的・生理学的根拠 脳の自然回復メカニズムが比例回復則の背景にあると考えられています。脳卒中後の最初の数週間~数か月で起こる自然な神経生物学的回復には、以下のような要素が挙げられます:
ジアスキシスの回復: 脳卒中によって損傷を受けた部位だけでなく、遠隔部位の機能低下(ジアスキシス)も生じます。時間経過とともに脳ネットワークの一過性の混乱が正常化するにつれて機能が戻ってくることが知られており、これが回復量の一定割合を占めると考えられます。例えば脳内の低下した血流や代謝が回復し、神経ネットワークの結合性が再正常化すれば運動機能は著しく改善しますが、ネットワークの再統合が不十分だと回復が阻害され比例回復が見られなくなる可能性があります。このことは、脳全体のネットワークレベルで共通の回復メカニズムが作用しており、それがほぼ一律の回復率を生む一因であることを示唆します
重要な神経経路の保存: 皮質脊髄路(CST)の損傷の有無が回復の程度を決定する決定的因子であり、比例回復則の成否を左右します。Byblow & Stinearら(2015年)の研究では、TMS(経頭蓋磁気刺激)で麻痺肢の運動誘発電位(MEP)が記録できる患者(すなわちCSTが機能的に残存している患者)のみが約70%の上肢運動回復を示し、MEPが得られない患者では顕著な回復が起こらないことが示されました。具体的には、発症2週時点の上肢Fugl-Meyerスコアが11点以上の患者(ある程度自主運動が残存)では26週後に約0.7の割合で回復しましたが、初期スコアが10点以下(重度麻痺)の患者ではこの比例回復パターンが成立しませんでした。同様にMEPが存在する群では回復率0.71、MEP陰性群では0~0.7以下に留まるなど、皮質脊髄路の構造・機能的保全性が「回復できる脳」の必要条件となっていました。このことは、脳内に残存する運動ニューロン資源が一定以上あれば、システム全体としてその潜在力の約7割を自律的に取り戻す生物学的プログラムが働く可能性を示しています。逆に主要経路が壊滅的に損傷された場合、脳の可塑的な再組織化にも限界があり、通常の回復メカニズムが機能しない(比例回復則から外れる)と考えられます
その他の生物学的要因: Waller変性(損傷後の遠位軸索の変性)や遺伝子多型(例: BDNF多型)、血液脳関門障害に伴う浮腫なども回復に影響を与える可能性があります
。これらは一部の患者で自然回復メカニズムを初期に阻害し、結果的に非回復者となる要因として指摘されています。また脳卒中直後の興奮性/抑制性神経伝達の変化(例えばGABA作動性抑制の増大)も可塑性に影響しうるため、こうした神経生理学的環境の改善が回復率に寄与する可能性があります
以上のように、脳卒中後の自然回復には脳ネットワーク全体の機能回復や主要経路の残存が不可欠であり、比例回復則はそれら生物学的条件が満たされた場合に現れる法則と考えられます。比例回復が「内在的な脳の自己修復能力」を反映するとの観点から、最近ではこの回復則そのものを脳の可塑性や回復能力の指標としてとらえ、さらに神経科学的に解明しようという研究も進んでいます。 3. 比例回復則に対する反証・批判的研究 比例回復則は興味深い法則ですが、一部の研究者は統計的な錯覚やバイアスの可能性を指摘しています。Hopeら(2019年)やHaweら(2019年)は、「初期値に対する回復量(アウトカム-初期値)の相関」という分析手法が数学的カップリング(同じ値が両側に含まれることによる見かけ上の相関)や尺度の上限効果によって本来以上に高い相関・高い説明率を生み出している可能性をシミュレーションで示しました。実際、いくつかの近年の研究で報告された「初期障害から回復を予測できる精度が80~90%以上(R2値)」といった数値は、アウトカムの変動範囲が初期値より小さい場合には統計的に人為的に大きくなり得ると指摘されています。Hopeらは、過去のほぼ全ての研究で報告された極めて強い相関は過大推定であり、実際にはそこまで厳密な「固定の割合回復」現象は存在しない可能性が高いと結論づけました。要するに、「回復が本当に比例的であるかどうか再検証が必要」という慎重な見解です。 また、Haweら(2019年)のStroke誌への報告「Taking Proportional Out of Stroke Recovery(比例という概念を回復から除外する)」では、独自の患者データ解析から回復量の個人差が大きく、単純な70%則では説明できないケースが多いことを示しました。この研究に対しては反論も寄せられていますが、少なくとも「すべての患者が70%回復する」といった単純な解釈は誤解を招くとの指摘がなされています。 さらに、Bowmanら(2021年)は「数値上の結合と上限への収束が70%という見かけの割合を生む危険性」を論じ、統計解析上の注意不足が「70%」という印象的な数字を膨らませた可能性を警告しています。こうした批判を受け、Chongら(2023年)を含む支持派の研究者たちは解析手法を改善した上でもなお比例回復傾向は有意に存在すると反論しており、現在も議論が続いています。 比例回復則への生物学的な反証としては、前述の非回復者(Non-fitters)の存在が挙げられます。およそ10~30%の患者は予測された割合まで回復せず、特に錐体路が高度に損傷された例や多発梗塞で脳の予備能が低下した例ではほとんど改善が得られません。例えば完全麻痺に近い上肢麻痺ではリハビリを尽くしても数点程度しかFugl-Meyerスコアが向上しないケースがあり、これらは「70%ルール」の例外となります。このような非回復者の存在自体は比例回復則の限界を示すものであり、「回復には二つのサブグループ(回復者と非回復者)が存在する」という見方につながっています。現在の課題はどの因子がこの非回復群を規定しているのかを明らかにすることであり、前述のように神経経路の断裂やネットワークの障害が重要と考えられています。非回復群を適切に早期同定できれば、一部の患者には別の戦略(例: 補償的アプローチや先進的治療)を検討するなど、リハ戦略の最適化につながるでしょう。 総じて、比例回復則は多数のデータに支えられた実証的傾向である一方、統計手法や解釈に注意を要し、また全例に普遍ではないといえます。支持・批判双方の研究が発表されており、今後も解析手法の改良や異なる集団・機能への検証が進む見通しです。 4. リハビリ介入が比例回復則に与える影響:早期介入は本当に必要か? リハビリテーション介入が回復率に与える影響は限定的である可能性が示唆されています。複数の研究から、現在行われている通常のリハビリの有無や強度に関わらず、最終的な改善割合は大きく変わらないことが報告されているためです。 Stinearら(2017年)のレビューによれば、上述の70%前後の回復現象はリハビリテーションのアプローチや密度によらず確認されており、療法の種類や集中的訓練の量が回復の「割合」自体を有意に変化させたという証拠は今のところないとされています。実際、Byblow & Stinearら(2015年)は48名の上肢麻痺患者を対象に、発症2~26週の間に一方の群には集中的リハ(2~6週に合計約553分の上肢訓練)を行い、他方の群は通常リハ(平均176分の訓練)とする比較試験データを解析しました。その結果、26週後の上肢機能回復率は両群でほぼ同等(集中リハ群β=0.69、通常群β=0.68)であり、リハビリ提供量の違いが回復の割合(約70%)に影響しなかったことが示されました。著者らは「比例回復はリハビリ介入量に対して不変(insensitive)であり、発症直後の自然な神経生物学的プロセスによるものかもしれない」と述べています。この所見は他の観察研究とも一致しており、例えばある前向き研究では発症後6か月までの神経学的改善の約90%は時間経過によって規定されると推定されています。要するに、一定の範囲内でリハビリを行っても行わなくても、「回復する人はするし、しない人はしない」という傾向が強いという示唆です。 では早期の集中的リハビリは不要なのか? この点については議論がありますが、大規模臨床試験の結果は興味深い知見を提供しています。たとえばBernhardtら(2015年)による国際ランダム化比較試験AVERTでは、発症24時間以内に頻回の離床・歩行練習を開始する超早期リハと通常ケアを比較しました。その結果、きわめて早期かつ高頻度のリハ介入を行った群の方が、3か月後の良好な機能転帰の確率がやや低下するという予期せぬ結果となりました。具体的には、「発症直後からの過剰なリハ刺激は却って転帰を悪化させる可能性」が示唆され、著者らは過度に早い動員は脳の回復環境(血圧や脳血流、代謝など)に悪影響を与えるリスクを指摘しています。この試験から得られるメッセージは、「とにかく早ければ早いほど良い」という単純なものではなく、脳の自然回復プロセスとのバランスを考慮する必要があるということです。 もっとも誤解してはならないのは、リハビリ自体の有用性が否定されたわけではない点です。上述の研究は主に「自然回復で達成される神経学的改善率」に焦点を当てていますが、リハビリテーションは機能的自立度の向上や代償手段の習得、廃用症候群の予防など多岐にわたるメリットがあります。早期リハ介入は脳の可塑性を高めうるとの動物・臨床研究もあり、適切なタイミングと強度で行えば自然回復で得られた能力を最大限に引き出し、ADL(日常生活動作)やQOLを向上させることができます。しかし少なくとも「生物学的な回復率そのもの」を押し上げる効果は限定的である可能性が高く、その意味で「急いで詰め込むようなリハビリ」が必須かどうかは再考が必要です。結論として、現在のエビデンスは「標準的なリハを行えば十分」であり、「過度に早期・集中したリハを行っても自然回復以上の上乗せ効果は証明されていない」とまとめられます。 5. 自然回復とリハビリ:早期リハ無しでも回復は見込めるのか? 比例回復則の示すところは、脳卒中後の回復の大部分が脳の自然な治癒プロセスによってもたらされるという点です。極端に言えば「早期リハビリを行わなくても、回復する人はある程度回復する」可能性を示唆するデータもあります。実際、前述のとおり発症後数か月の神経学的改善の7~9割は自然経過で決まるとの報告もあり、リハビリ専門家の間でも「初期改善は自然回復の表れであり、リハ介入はそれを“利用”している側面が大きい」と理解されています。 支持的なエビデンスとして、対照群を設けた動物実験や人間での観察研究があります。Jeffersら(2018年)の研究ではラットにおいて脳卒中後の上肢運動機能が人間同様に一定割合で自然回復することが示されました。ラットには人間のようなリハビリは施されませんが、それでも損失機能の約半分以上を取り戻す傾向が見られたのです。この事実は、生物種を超えた内在的な回復メカニズムの存在を示唆しており、人間においても何もしなくても起こる回復がかなりの部分を占める可能性を裏付けます。 さらに前述のStinearらの解析では、リハビリ量が少ない群でも多い群と同程度の回復を示したことから、たとえ手厚いリハを受けなくても大勢は自然に回復することが示唆されます。臨床現場でも、発症後早期に十分なリハを受けられなかった患者が数ヶ月後には自発的にかなり改善していた、というケースは珍しくありません。特に発症直後は安静優先になりやすい重症患者でも、数ヶ月リハ介入が遅れてから改善がみられる例もあります。これは脳の自己修復力が時間の経過とともに発現するためであり、リハはそれを待ってからでも「追いつける」部分があるとも解釈できます。 とはいえ、リハビリを全く行わなくてもよいという意味では決してありません。 自然回復である程度機能が戻ったとしても、適切なリハ介入がなければその機能を日常生活で最大限生かすことは難しいからです。リハビリは単に機能スコアを上げるだけでなく、脳が再獲得した能力を実用的な動作につなげる訓練でもあります。また廃用による二次的な筋力低下や拘縮を防ぐためにもリハは重要です。従って、「早期リハをしなくても勝手に良くなるから不要」という解釈は誤りであり、正しくは「早期リハによらずとも一定の回復は見込めるが、最終的な機能的自立にはリハ介入が必要」というバランスの取れた理解が求められます。 以上を総合すると、脳卒中後の回復は生物学的にプログラムされた部分と、リハ介入によって最適化される部分の双方から成り立っていると言えます。比例回復則は前者の「プログラムされた自然回復」の存在を示す重要な知見であり、これを踏まえて今後は「自然回復+α」を引き出すリハ戦略や、非回復者を救済する治療法の開発が期待されています。比例回復則そのものもまだ論争中のテーマではありますが、患者の予後予測やリハ計画立案に有用な概念であり、引き続き神経リハビリ分野の研究の焦点であり続けるでしょう。

参考文献(一部)
Prabhakaran S. et al. (2008). Inter-individual variability in the capacity for motor recovery after ischemic stroke. Neurorehabil Neural Repair, 22(1):64-71. - 上肢麻痺の回復量は初期麻痺量の約70%であり、重度麻痺患者では回復が著しく限定的なことを報告。
Lazar R. et al. (2010). Improvement in aphasia scores after stroke is well predicted by initial severity. Stroke, 41(7):1485-1488. - 失語症改善は初期重症度で良く予測でき、比例的回復パターンを示唆。
Smith M.-C. et al. (2017). Proportional recovery from lower limb motor impairment after stroke. Stroke, 48(5):1400-1403. - 下肢麻痺も約70%が自然回復しうること、非回復者群の存在について報告。
Stinear C. M. et al. (2017). Proportional motor recovery after stroke: implications for trial design. Stroke, 48(3):795-798. - 比例回復現象を踏まえた臨床試験計画の提言。回復率はリハ内容・量によらず一定であることを強調。
Byblow W. & Stinear C. (2015). Proportional upper limb recovery after stroke is predicated upon corticospinal tract integrity. Brain Stimul, 8(2):429-430. - 皮質脊髄路の保全例でのみ上肢機能が約70%回復し、リハ提供量には依存しないことを示した発表。
Hope T. M. H. et al. (2019). Recovery after stroke: not so proportional after all? Brain, 142(1):15-22. - 比例回復則の統計学的妥当性に疑問を呈し、報告された高い決定係数は過大評価の可能性を示した。
Hawe R. L. et al. (2019). Taking proportional out of stroke recovery. Stroke, 50(1):204-211. - 回復の個人差が大きく固定的比例則には当てはまらないとする研究。
Bowman H. et al. (2021). Inflated estimates of proportional recovery from stroke: the dangers of mathematical coupling and compression to ceiling. Stroke, 52(5):1915-1922. - 数学的 coupling により70%という数値が人為的に生まれる危険性を指摘した論考。
Bernhardt J. et al. (2015). Efficacy and safety of very early mobilisation within 24 h of stroke onset (AVERT trial). Lancet, 386(9988):46-55. - 超早期リハの大規模RCT。過度に早い離床は転帰を改善せず、標準ケアで十分である可能性を示唆。


関連記事:

















2022年12月9日

脳卒中後の認知障害と「認知予備能」

2022  11月  中国


認知予備能は、たとえば損傷をうけていない脳領域が機能を補い、脳損傷が臨床症状に与える影響を緩和する能力を指し、個人によりおおきく異なると考えられる。

これまでの研究はアルツハイマー病を対象にしたものがおおく、脳卒中についても教育年数や職業のみを考慮したものが主であったので、

認知予備能をよりダイナミックに評価できるツールをもちいて脳卒中の重症度と認知機能に認知予備能がおよぼす影響をくわしくしらべてみたそうな。

2021年3月2日

nature.com:認知予備能と脳卒中からの回復

2021  2月  ドイツ


近年、「認知予備能」の考え方が 脳卒中転帰の重要な因子であると言われている。

これを検証するために、認知予備能として教育歴、脳自体の予備能としての年齢、および病変サイズを変数として脳卒中転帰との関連をくわしくしらべてみたそうな。

2020年3月31日

余暇活動が実行機能低下を防ぐ


Cognitive Reserve Attenuates 6-Year Decline in Executive Functioning after Stroke
2020  3月  スイス

脳卒中からその後の6年間の実行機能の低下が、認知予備能によって異なるかどうかを検討した。

2019年12月13日

Stroke誌:認知予備能と脳卒中後の認知障害


Effect of Cognitive Reserve on Risk of Cognitive Impairment and Recovery After Stroke
2019  12月  韓国

脳卒中のあとの認知障害はめずらしくなくやがて認知症になる者もいる。

認知機能の低下の程度は個人差がおおきく、教育歴や職種、社会経済的要因が影響すると考えられる。

この考え方は認知予備能(cognitive reserve)とよばれ、じっさい認知予備能の低さと脳卒中後の認知機能の低下度は正の相関があるとするメタアナリシスもある。

しかしこれまでの研究のおおくは短期的なものがおおかったので、長期にくわしくしらべてみたそうな。

2017年7月27日

脳卒中がらみの認知症が減ってる理由


Decreasing prevalence of dementia in 85-year olds examined 22 years apart: the influence of education and stroke
2017  7月  スウェーデン

認知症のおおくは80歳以降におきる。認知症の発生率は過去40年間 低下傾向にあるというが有病率についてはさだかでない。

そこで20年前と現在とで認知症の有病率の変化、および認知症の原因となる脳血管障害 そして教育との関連を比べてみたそうな。


1986年と2008年の各時点で85歳だった計1065人について 同じ方法で認知症検査を行い 脳卒中や教育歴との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・認知症の有病率は 29.8%→21.7%になり、おもに血管性認知症が減少していた。

・基礎教育以上の割合は 25.2%→57.7% に増加。

・脳卒中経験は 20%→30%に増えたが、脳卒中による認知症の割合は低下した。

・教育歴や脳卒中、出生時期との交互作用が 認知症の有病率につよく関連していた。

認知症有病率の低下は教育の高度化による認知予備能の強化と 脳卒中治療レベルの向上で説明ができる、

というおはなし。
図:

感想:

脳も筋肉みたいなもので鍛えて備えることができるのかもな。

2017年7月20日

無症候性でも頸動脈の狭窄は認知機能障害のもと


Asymptomatic carotid stenosis is associated with cognitive impairment.
2017  7月  アメリカ

高血圧や冠動脈疾患、脳卒中は血管性認知障害の原因となりうる。

無症候性の頸動脈狭窄と認知障害との関連をしらべてみたそうな。


無症候性の頸動脈狭窄(≧50%)患者82人と狭窄のない62人について、複数の認知機能検査をおこない、超音波検査機で狭窄率や脳循環動態を測定したところ、


次のことがわかった。
・両グループで血管リスク因子、教育歴、うつ症状などに差はなかった。

・狭窄グループでは認知機能スコアが低く、特に学習、記憶、運動、処理速度、実行機能が劣っていた。

・狭窄グループの49.4%の患者は認知機能の少なくとも2項目で障害があった。

・脳循環予備能の低い患者は認知機能ぜんぱんでスコアが低かった。

・狭窄率との関連は見られなかった。

無症候性の頸動脈狭窄は認知機能障害と関連があった。狭窄患者の49.4%に複数項目の認知機能障害がみられた。脳の循環予備能や血流量の低下が背景にあると考えられた、



というおはなし。
図:頸動脈の狭窄検査

感想:

これ↓おもいだした。
頸動脈が狭窄すると脳卒中のきっかけになるというけれど、それ以前に頭がすこし弱くなるらしい

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