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2018年7月7日

心房細動患者が気をつけるべき季節は


Seasonal variation in the risk of ischemic stroke in patients with atrial fibrillation: A nationwide cohort study
2018  6月  台湾

脳卒中や心筋梗塞などの心血管疾患は季節の影響をうけ、特に気温の低い秋や冬に発生率が高くなる。

心房細動患者に限定したときの季節と脳卒中リスクについてしらべてみたそうな。


台湾の国民健康保険研究データベースの心房細動患者289559人を3年間フォローして得た34991人の脳梗塞事例について季節と気温との関連を解析したところ、


次のようになった。

・気温のもっとも低い季節である冬に脳梗塞の発生率がもっとも高くなり、月あたり0.33/100人だった。

・夏とくらべたとき 春の脳梗塞リスクは1.10倍で、冬は1.19倍だった。秋は夏とほぼ同じだった。

・1日の平均気温が30℃のときとくらべて20℃を下回ると脳梗塞があきらかに増えた。

大規模調査により心房細動患者の脳梗塞発生率が気温が下がる冬に高いことが確認できた、


というおはなし。
図:心房細動が脳梗塞になりやすい季節

感想:

寒いと赤血球や血小板、血液粘度とかが高まって血がかたまりやすくなるメカニズムがあるんだって。

2018年7月6日

FASTキャンペーンは効果あったのか?


Medical Attention Seeking After Transient Ischemic Attack and Minor Stroke Before and After the UK Face, Arm, Speech, Time (FAST) Public Education Campaign
2018  7月  イギリス

一過性脳虚血発作(TIA)や軽微な脳卒中症状をほうっておくと24時間以内に5%が、30日以内に40%が脳卒中を再発するという。

脳卒中の初期症状を識別する Face, Arm, Speech, Time の「FASTキャンペーン」により 重症の脳卒中患者のレスポンススピードは改善された。

しかしTIAや軽微な脳卒中症状の患者へのFASTキャンペーンの効果はわかっていないのでくわしくしらべてみたそうな。


2002-2014にTIAまたは脳卒中になった2243人について調査したところ、


次のことがわかった。

・73.8%がTIAや軽微な脳卒中症状があった患者だった。

・FASTキャンペーンのあと、重症の脳卒中患者が3時間以内に病院にかかる率は高まった。

・しかしTIAや軽微な脳卒中では救急車利用率や24時間以内の病院利用率にキャンペーンの前後で差はなかった。

・188人の患者が90日以内に脳卒中を再発したが、彼らの49.5%は最初のTIA症状のとき病院にゆく必要はないと考え無視した。この率はキャンペーン前後で同じだった。


FASTキャンペーンによる啓発活動はTIAや軽微な脳卒中の患者にたいしてまったく効果的ではなかった、


というおはなし。
図:FASTキャンペーンの効果

感想:

このFAST動画見ても高齢者を想定しているせいか心にひびかない。

脳のお医者さんにとっては脳卒中が世界のはんぶんくらいを占めているから一大事なんだろうけど、
顔のゆがみや手のしびれ 口がもつれる程度のことでいちいち病院にかかっていたら生活できんのよ 一般人は。

振り返ってみるに、出血する1年くらいまえから手の震えを止められなくて、しかも言いたいことがスムーズに出てこなくなってたわ。

2018年7月5日

くも膜下出血で1年後元気だった人の12年後


Prospective study: Long-term outcome at 12-15 years after aneurysmal subarachnoid hemorrhage
2018  7月  スウェーデン

くも膜下出血は脳卒中全体の5%を占め平均年齢は若く死亡率が高い。12%が即死し、30%以上がひと月内に死亡、25-50%は6ヶ月以内に死亡するという。

くも膜下出血のその後について1年以降の長期にしらべた研究はほとんどないので12年以上フォローしてみたそうな。


2000-2003に脳動脈瘤破裂によるくも膜下出血で手術を受けた患者158人について、その1年後と12-15年後の回復度評価Glasgow Outcome Scale(GOS) をおこなった。


次のことがわかった。

・患者は発症時平均年齢55で、女性は114人だった。

・12-15年後、生存していた103人のうち39.9%は回復良好、15.2%が中程度の障害あり、10.1%が重度障害だった。

・23.6%の患者は時間が経つにつれGOSスコアが改善した。

・55人が4年前後で死亡していた。

・患者全体として12-15年後までの死亡率は一般人の3.5倍だったが、

・1年時点で回復良好だった101人(全体の67.3%)に限定すると 生存率曲線は同性同年齢の一般人とおなじパターンを示した。

・若くかつ1年後の高GOSスコアの患者は長く回復良好状態がつづいた。

くも膜下出血の1年以上ののちも機能的回復は続いていた。1年時点で回復良好だった患者の余命は一般人のそれと同レベルだった、


というおはなし。
図:くも膜下出血の生存率曲線

感想:

上の生存率グラフをみておどろいた。1年後の回復良好者のほぼ全員が、その後10年以上にわたり一般人とまったくおなじ軌跡を描いている。

他の脳卒中で こんなはなしはきいたことがない。


おそらくこういうこと↓だとおもう。

くも膜下出血はたとえると偶発的な「事故」のようなもので、運悪くすぐに亡くなってしまう人がいるいっぽう、それ以外はおおむね元気で 「自然に」出血が止まりほぼもとの状態にもどる。

しかも再出血予防手術にはほとんど意味がないっぽいんだ。
その理由↓

1) 再出血予防のクリッピング手術のRCTは存在しない。(by ガイドライン

2) 入院が遅れるほど死亡率は劇的に下がる。

3) もっとも再出血しやすい24時間以内の手術にまったく効果がない。



追記:

Coil vs.Clipでの生存率のちがいは↓

コイルとクリップの生存率の図


2018年7月4日

ボツリヌス療法で上肢機能は改善するのか?


Does botulinum toxin treatment improve upper limb active function?
2018  6月  イタリア

脳卒中後の痙縮は機能障害や能力障害のおもな原因であり、とくに上肢での影響がおおきい。

痙縮はボツリヌス毒素の筋肉注射により局所的に緩和できる。しかしこれによって上肢機能が改善するかどうかについては結論がでていない。

そこでこれまでの研究を総括してみたそうな。

2018年7月3日

軽症脳梗塞の位置と健康関連QoL


Infarct location is associated with quality of life after mild ischemic stroke
2018  6月  アメリカ

神経症状スコアが高くない「軽症の脳梗塞」は脳卒中患者のほとんどを占める。

軽症にもかかわらず彼らの後遺症や健康に関する生活の質(HRQoL)の低さがもんだいになっている。

梗塞の体積ではなくその位置とHRQoLについての研究はすくないので調べてみたそうな。


平均年齢65、入院時のNIHSSスコアが1前後の軽症患者229人について3ヶ月後のHRQoLを測定し、梗塞位置との関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・梗塞体積の中央値は0.74ccで、36.2%の患者がHRQoLのあきらかな低下を示した。

・HRQoL低下者の56.0%は皮質下梗塞で、また 21.4%は脳幹梗塞であり、

・HRQoLが低下しなかったグループよりもあきらかにそれらの割合が高かった。

・皮質下または脳幹の梗塞でHRQoLが低下するリスクは2.54倍だった。

軽症脳梗塞患者のうち、皮質下と脳幹の梗塞では健康関連QoLの低下が起きやすかった、


というおはなし。
図:健康関連QoLと軽症脳梗塞

感想:

軽症で見た目の障害がないためにQoLのようなわずかな質の変化に敏感になるんだって。(床効果 天井効果)

ぎゃくにいうと、質が問題になるうちはたいして深刻ではないってこと。

2018年7月2日

こども脳卒中の聴覚無視について


Auditory neglect in children following perinatal stroke
2018  6月  アメリカ

半側空間無視では損傷脳の反対側への注意力の低下がおき 視覚以外に聴覚にもおきうる。

また損傷脳が左脳よりも右脳のほうが無視の程度はつよく 長く影響がつづく。

子供の半側空間無視の報告はすくないながら成人にくらべ回復がはやいとする調査がいくつかある。

そこで、出生後28日までの周産期に脳卒中を経験した子供について聴覚無視の特徴をくわしくしらべてみたそうな。


周産期に左脳または右脳の脳卒中を経験した6-16歳の子供26人について、音を聴かせたときの音源の位置推定の正確さと反応速度について測定し、同年代の子供と比較したところ、


次のことがわかった。

・左脳損傷の子供は音源が左方にあるときに位置特定精度があきらかに右方よりも高く、

・反応速度は左方の音源にたいしては年齢にしたがい健常者と同レベルに回復した。
しかし右方音源にたいしては改善しなかった。

・右脳損傷の子供は右方音源の位置特定精度が健常者よりも低く、

・反応速度は音源位置の左右によらず改善しなかった。

・脳の損傷部位に頭頂部がふくまれていると無視の程度がよりおおきかった。

周産期脳卒中を経験した子供の聴覚無視は、左脳損傷では対側に、右脳損傷では両側に起きるのかもしれない。また頭頂部が聴覚的注意に重要な役割をもっていると考えられた、


というおはなし。
図:周産期脳卒中の聴覚無視 頭頂部損傷のケース

感想:

音源に発光機能をもたせると聴覚無視が治りやすくなることから聴覚空間と視覚のキャリブレーションが脳卒中でリセットされたことが聴覚無視の原因かもっていってる。

2018年7月1日

アルコールでおきる脳内出血の種類


Alcohol intake and the risk of intracerebral hemorrhage in the elderly: The MUCH-Italy
2018  6月  イタリア

アルコール摂取と脳内出血との因果関係についてはいまだ結論がでていない。

これを調べるべく脳出血の大規模研究MUCH-Italyのデータを解析してみたそうな。


55歳以上の白人被験者を飲酒量べつに ヘビー、中程度、飲まない、の3グループにわけ、
脳内出血の種類(皮質、深部)との関係を有向非巡回グラフをもちいて解析したところ、


次のことがわかった。

・皮質脳内出血1471人、深部脳内出血1702人と3155人の一般人の記録を解析した。

・ヘビードリンカーの深部脳内出血リスクは1.68倍で、脳内出血トータルのリスクも1.38倍、

・しかし皮質脳内出血と飲酒量との関係はみられなかった。

55歳以上の白人の調査ではアルコール摂取は脳内出血の原因であり、特に深部脳内出血をひきおこすと考えられた、


というおはなし。
図:有向非巡回グラフ 脳内出血とアルコール

感想:

じぶんがなった被殻出血も深部のそれだから あの日以来酒は一滴も飲まない。そのせいか酒飲みへの偏見が助長して酔った親戚をついあおってしまい なんどか険悪になった。

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