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2025年8月6日

手は動くのに、使えない――脳卒中リハビリの盲点とは?

2025  8月  スイス


脳卒中後の上肢機能障害は極めて高頻度に見られるため、リハビリテーション領域では上肢の運動機能を評価する指標としてFugl-Meyer Assessment(FMA-UE)が広く用いられてきた。

しかし近年、FMAにおいて高得点を示すにもかかわらず、実生活上では上肢をほとんど使用していない患者が一定数存在することが報告されている。

このような「運動機能は温存されているのに、パフォーマンスが伴わない」という乖離現象が、急性期から存在するのか、そしてその背景に何があるのかは十分に解明されていない。

そこで、この現象の原因として認知機能障害(特に空間無視、遂行機能障、失行)が関与している可能性に着目し、急性期脳卒中患者を対象にくわしくしらべてみたそうな。

2025年1月31日

くも膜下出血の悲劇!生存者の自殺リスクが75%増加する事実

2025  1月  フィンランド


くも膜下出血(aSAH)を経験した後、生存者の多くは不安やうつを抱える。しかし、aSAH後の自殺リスクについては十分な研究が行われてこなかった。

そこで、aSAH生存者の自殺リスクが一般人口と比べてどの程度高いのかをくわしくしらべてみたそうな。

2023年12月29日

体幹トレーニングの真実:脳卒中リハビリの未来?

2023  12月  イギリス


効果的な体幹のコントロールは、座位や立位でのバランスに不可欠な要素であり、頭部や四肢を動かし、機能的な作業を遂行するために重要である。

脳卒中では、体幹のコントロールが障害されることがあり、脳卒中に関連したバランス、筋機能、協調性、位置感覚の障害の影響を受ける。

体幹コントロールの回復は、脳卒中リハビリテーションの重要な目標であるので、その有効性をくわしくしらべてみたそうな。

2023年9月21日

若いのに働けない?脳梗塞と脳出血、どちらが危険なのか

2023  9月  シンガポール


若年成人(18~50歳)の脳卒中は全症例の15%に過ぎないが、長期的な社会的影響はおおきい。

脳卒中後の職場復帰(RTW)は、重要なリハビリテーション目標である。しかし良好な機能的転帰を達成しているにもかかわらず、おおくの若年成人がRTWに至っていない。

そこで、脳梗塞と脳出血とでその後のRTWをくらべてみたそうな。

2023年7月30日

クロピドグレル投与:脳卒中の回復妨げる?

2023  7月  オーストラリア


クロピドグレルは世界で最も処方されている抗血小板薬の一つであり、脳梗塞予防に用いられている。

クロピドグレルはP2Y12受容体への拮抗を介して抗血小板活性を発揮する。

クロピドグレルの当初の臨床試験では考慮されていなかったことがある。

じつはP2Y12受容体は脳の免疫細胞であるミクログリアにも発現しており、この受容体が細胞損傷部位へのミクログリアの移動を促している。

ミクログリアのP2Y12受容体が阻害されると、ミクログリアは損傷部位に移動する能力を失い、必要な修復プロセスを遂行できなくなる。

この影響をたしかめるべく、脳卒中後のマウスにクロピドグレルを投与して、運動能力や認知機能の回復、生存率や体重、血管や免疫の変化についてくわしくしらべてみたそうな。

2021年3月31日

実行機能障害には眼球運動トレーニング

2021  3月  中国


脳卒中患者のほとんどが眼球運動になんらかの障害を抱えるという。

また、認知機能の1つである実行機能に障害を持つ者も8割近くにおよぶ。

眼球を正常位置に保持できない 適切に動かせない、などの問題がおきると、
手と眼球との協調動作が困難になり、
読んだり手を動かしたりが億劫になる、
さらに視覚記憶や立案 決定能力が低下して、
実行機能に障害があらわれる、と考えられる。

そこで、眼球運動トレーニングによって脳卒中患者の実行機能障害が改善するものか、実験してみたそうな。

2021年1月8日

軽い脳卒中の遂行機能障害とネットワーク

2020  12月  アメリカ


ちいさな梗塞の脳卒中であっても、患者はしばしばその病変位置によらず、遂行機能障害、たとえば注意力、集中力、処理速度の低下をしめす。

この原因メカニズムをしらべるために脳磁図(MEG)を用いて脳のネットワークダイナミクスを計測してみたそうな。

2020年5月9日

被殻出血での血腫量と運動障害


Relationship between Hematoma Volume and Motor Impairment in Putaminal Hemorrhage.
2020  4月  日本

脳卒中が疑われる患者の初期評価にはCTが用いられる。
CT画像を用いた運動転帰の予測は,臨床リハビリテーションのために重要である。
しかし,被殻出血患者の血腫量と運動転帰に関する数少ない論文の報告には一貫性がない。

そこで、発症時CT画像を用いて被殻出血患者における血腫の方向と血腫量と運動転帰の関係を明らかにするために、患者170人をくわしくしらべてみたそうな。

2019年3月24日

3-4年後の社会的認知障害


Social cognition impairments are associated with behavioural changes in the long term after stroke
2019  3月  オランダ

脳卒中のあとの行動変容が患者のQoLにネガティブな影響を与えることはめずらしくない。

これら行動の変化は社会的 感情的に不適切なものがおおく、たとえば相手の感情や考えを理解せぬままひどいことを言ったり無視をしたりする。

このような行動変容の背景には社会的認知障害があると考えられ、脳卒中のあと時間が経っても続くものかは わかっていない。それを確認するためのテストと 患者自身の認識および近親者にもアンケートをとってその乖離度を評価してみたそうな。



発症から3-4年経った自立度の悪くない脳卒中患者119人および健常者50人について、

社会的認知能をしる方法として、
*感情認識(Emotion recognition):顔の画像から感情を読み取る。
*心の理論(Theory of mind):漫画から他者の信念を推し量る。
*共感(Empathy):失礼な扱い(faux pas)をうけた者の気持ちを知る。
*行動調整と抑制(Behaviour regulation and inhibition):ヘイリング文章完成法課題。

の各テストをおこなった。

さらに患者自身とその近親者について遂行機能障害アンケート(Dysexecutive Questionnaire:DEX)を行い関連を解析した。



次のことがわかった。

・脳卒中患者の 感情認識、心の理論、行動調整と抑制テストの結果が健常者にくらべあきらかにわるかった。

・DEXスコアの平均値について、自己評価値と近親者評価値とであきらかな違いはなかったが、

・感情認識、共感、行動調整と抑制スコアの低さと近親者によるDEX評価に関連がみられた。

軽度の脳卒中患者であっても社会的認知障害が長期にみられた。これらの障害は近親者の目にもあきらかであり、行動変容の原因と考えられた、


というおはなし。

図:DEX items


感想:

その種の能力については脳卒中をやるまえのほうがひどかったとおもう。

頭のはたらきがわるくなったことを自覚しているぶん いまのほうが自らを客観視できるようになった。

2018年12月13日

施設送りにされないために必要な能力は


Executive function subdomains are associated with poststroke functional outcome and permanent institutionalization
2018  11月  フィンランド

脳卒中患者の認知機能の低下はじつにありふれていて、とくに実行機能(遂行機能)の障害は問題で、身体が順調に回復できた患者であっても34%が実行機能に障害を持つという報告がある。

実行機能はいくつもの認知機能が関わる前頭葉の高度なはたらきを指すと考えられていて、単一のテストでは評価することはできない。

たとえば、Trail making test は処理速度、Wisconsin card sorting test は注意切り替えと戦略立案、Stroop testは行動抑制、Verbal fluency test は想起検索、に関係するとされ実行機能の評価に用いられる。

そこで実行機能を構成するサブドメインのうち脳卒中患者の機能回復度と関係のふかい要素をみつけるべく くわしくしらべてみたそうな。


脳卒中患者62人について、
発症後3ヶ月と15ヶ月時点での実行機能に関連する7種類のテストをおこない、
生活自立度 mRS, IADLおよび その後の施設送りの有無との関連を解析して
健常者39人の結果と比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中患者は複数の認知機能テストで健常者よりもスコアが低かった。

・行動抑制、注意切り替え、想起検索、戦略立案、処理速度の各項目は患者の生活自立度スコアと相関があった。

・行動抑制、注意切り替え、処理速度は機能回復度と関連が強く、

・とくに 行動抑制力の低さは施設送りとの関連が強かった。

実行機能は脳卒中患者の機能障害と強く関連していた。とくに行動抑制力が低いばあい早くに施設送りになりやすかった、


というおはなし。

図:実行機能のサブドメインとテスト

感想:

行動抑制はストループテストで、たとえば ←の色を問われて「あお」と言いたいところをぐっとこらえて「あか」と答える能力。

これができないと 家族にうとまれ施設に入れられてしまうということか。

2018年12月5日

若年患者の認知能力


Prevalence and short-term changes of cognitive dysfunction in young ischemic stroke patients
2018  11月  オーストリア

55歳未満の若年脳卒中患者は増加傾向にあり、脳卒中ぜんたいの18.6%をしめている。

かれらの回復は身体機能的には良好なものの、認知機能や神経心理的にはかならずしも順調とはいえない。

そこで若年脳卒中患者の認知障害の率とその後をくわしくしらべてみたそうな。


2016-2018に18-55歳で脳梗塞入院した患者114人について、

入院時(BaseLine)と3ヶ月後(FollowUp)での次の各検査をおこない比較した。

認知障害度 Montreal Cognitive Assessment (MoCA)
情報処理速度と注意力 Symbol Digit Modalities Test (SDMT)
遂行機能 Comprehensive Trail Making Test(CTMT)
言語流暢性 Regensburger Wortflüssigkeitstest(RWT)


次のようになった。

・入院時、半数前後が情報処理スピード、遂行機能、注意力、認知機能全般のあきらかな低下をしめした。

・3ヶ月後、言語流暢性を除く認知機能のおおくは改善した。

・しかし3分1のに相当する患者はいまだ認知障害レベルにあり、

・とくに遂行機能、情報処理スピード、注意力に障害が残った。

若年の脳卒中患者には認知機能の低下が高率にみられた、


というおはなし。

図:若年脳卒中の認知症者率
入院時と3ヶ月後の認知障害者率


感想:

でも本人には自覚がないからすぐに自動車運転をはじめる。しかも手足がよわったぶんを補うべく車格アップをこころみる。なんとおそろしいことか。

2018年10月26日

こども脳卒中経験者は計算が苦手 その対策


Does stroke impair academic achievement in children- The role of metacognition in math and spelling outcomes following pediatric stroke
2018  10月  カナダ

子供時代の脳卒中が認知機能にあたえる影響のうち学力面についてはかならずしも一致した見解が得られていない。

そこで、算数、言語、遂行機能の点から脳卒中経験のあるこどもの学力を評価してみたそうな。


6-14歳で脳卒中になり半年以上経つ32人と同齢の健常者32人について、

算数能力、書字能力、遂行機能のうちメタ認知(自身の認知プロセスを認知する)や行動調整能力を測定して比較したところ、


次のことがわかった。

・脳卒中経験者は健常者にくらべ算数、書字、メタ認知、行動調整の能力があきらかに劣っていて、

・とくに紙と鉛筆を使った計算が困難で、40%は障害者レベルだった。

・学力の低下はメタ認知能力とつよく関連していた。

こどもの脳卒中経験者は算数がとくに弱かった。これにはメタ認知能力がつよく関わっていると考えられた、


というおはなし。

図:こども脳卒中の学力

感想:

思考プロセスのどこでつまずいているのかを振り返る能力の低下が すぐに反映されるのが計算問題。

もうすこし拡大解釈すると、意識が飛んで手足が動かなくなるほどの経験をしてなお「自分なら運転ができる」と確信できるのもメタ認知低下のなせる技。

だから自分の脳が多少なりとも馬鹿になってしまっていると素直に認めることが、対策の第一歩だとおもうよ。

2018年4月15日

泣き笑いを制御できない脳梗塞患者の認知能的特徴


Correlation between cognitive impairment during the acute phase of first cerebral infarction and development of long-term pseudobulbar affect.
2018  3月  中国

とくに理由もないのに 場にふさわしくない大笑いや号泣をしてしまう感情をコントロールできない症状をスードバルバーアフェクト(Pseudobulbar affect : PBA)とよぶ。

PBAは中枢神経系の病気にみられとくに脳卒中患者でおおく、経験者は52%におよび12ヶ月後でも11%に症状がつづくとする報告もある。

またPBAは男性よりも女性で、脳出血よりも脳梗塞で、笑いよりも泣くケースがおおいことが知られている。

そこでPBAになりやすい脳梗塞患者が急性期の認知障害テストに反映されているものか確かめてみたそうな。


脳梗塞の急性期に認知障害を示し 6ヶ月後前後のあいだにPBAと判定された26人と、
PBAでない他の条件がおなじ26人を比較したところ、


次のことがわかった。

・PBAの有無は認知障害検査MoCAスコアに反映されていた。

・とくに 数唱テスト、ストループテスト、時計描画テストのスコアがPBAに関連する要因だった。

脳梗塞の急性期に認知障害を示す患者はPBAの長期リスクが高かった。遂行機能、注意力、視空間能力の障害がPBAに関係していると考えられた、


というおはなし。
図:スードバルバーアフェクトに関連する認知機能

感想:

笑いが止まらない自分を観察する さめた自分がいたことを思い出す。

時計描画能力とどう関係するのか興味ある。

[スードバルバーアフェクト OR 感情失禁]の関連記事

2018年4月5日

両手が一緒にうごいちゃう患者は遂行機能が弱い


Mirror movements are linked to executive control in healthy and brain-injured adults.
2018  3月  フランス

いっぽうの上肢の動きにつられて反対側の上肢が対称的に動いてしまうことを 鏡像運動 (mirror movement)という。

鏡像運動は幼少期によく現れ、成長にしたがい消える。しかし脳卒中の片麻痺患者で起きやすく、健康な者でも特定の条件下で発生させることができる。

脳損傷患者の鏡像運動には注意 抑制機能の問題がかかわっているという報告がいくつかあるので、その関連を詳しくしらべてみたそうな。


健常者24人と脳損傷患者8人について、鏡像運動の頻度と強度、および注意 抑制機能をそれぞれ複数のテストで評価したところ、


次のことがわかった。

・健常者とくらべて脳損傷患者では鏡像運動の頻度と強度がおおきく、注意力に欠陥がみられた。

・さらにすべての被験者で、Trail Making Test に反映される「遂行機能」から鏡像運動の頻度と強度を予測することができた。

鏡像運動と被験者の遂行機能に関連がみられた。脳損傷患者については 注意欠陥のリハビリで鏡像運動を減らすことができるかも、、


というおはなし。

←鏡像運動ビデオ

感想:

鏡像運動は記憶にないけど、手と脚が一緒に動くことはよくあった。

遂行機能」をさいきんよく目にするので関心をもった。

2018年3月31日

脳梗塞で影響をうける健康関連領域トップ3


The most affected health domains after ischemic stroke
2018  3月  アメリカ

脳卒中が軽くすんで日常生活動作が自立できていたとしても、目につかない隠れた障害を抱えて生活の質が低下している患者はすくなくない。

これら健康に関係する複数の領域(身体機能、社会参加、遂行機能、疼痛、疲労、不安、うつ、睡眠 の8領域)が一般人とくらべてどのていど影響をうけているものなのか調べてみたそうな。


脳梗塞患者1195人(平均年齢62、白人81%)について、被験者の主観的な健康度をPROMIS (Patient-Reported Outcomes Measurement Information Syste)という指標を用いて評価したところ、


次のことがわかった。

・一般人にくらべあきらかなスコア低下の患者の割合は、睡眠の28%から身体機能63%におよんだ。

・もっとも影響をうけた領域は、身体機能>社会参加>遂行機能の順だった。

・身体障害、低収入、女性、が低スコアの関連要因だった。

・年齢は身体機能の低下と関連していたが、不安 うつ 睡眠障害との関連は低かった。

脳梗塞患者は複数の領域におよぶ健康問題をうったえていた。身体機能、社会参加、遂行機能がもっとも影響をうけた、


というおはなし。
図:脳梗塞で影響を受けるヘルスドメイン

感想:

うつや疲労 疼痛よりも遂行機能への影響がおおきいところが新鮮だ。

[遂行機能]の関連記事

2018年3月21日

Stroke誌 : 脳卒中後の認知機能低下の特徴


Risk Factors for Poststroke Cognitive Decline
2018  3月  アメリカ

脳卒中をきっかけに認知機能の低下スピードが速くなることがわかっている。どういった特徴をもった脳卒中患者がそうなりやすいのかしらべてみたそうな。


45歳以上の22875人を8年間ほどフォローした結果、


次のことがわかった。
・この間に694人が脳卒中になった。

・認知機能全般、新規学習、言語記憶、遂行機能は脳卒中直後に急激に低下した。

・認知機能全般の急激な低下は黒人、男性、心原性またはアテローム血栓性脳梗塞でおおきかった。

・遂行機能の急激な低下は教育歴の短い者でおおきかった。

・脳卒中あと認知機能の長期の低下スピードは、認知機能全般と遂行機能で速く、新規学習、言語記憶では脳卒中前と変わらなかった。

・高齢、脳卒中ベルト(多発地帯)以外の住人、心原性脳梗塞 で認知機能全般の長期の低下スピードがおおきかった。

・遂行機能の長期の低下スピードは高齢、高血圧でない患者でおおきかった。

脳卒中は認知機能の経年劣化過程におおきなインパクトがあった。とくに高齢、心原性脳梗塞で顕著に低下した、


というおはなし。
図:脳卒中による認知機能低下モデル

感想:

上の認知機能モデルで 脳卒中をきっかけに崖のように落ち込んでいるところが「急激な低下」で、その後のスロープの傾きを「長期の低下スピード」と解釈した。

高血圧のほうが遂行機能の低下スピードがゆるいってとこがおもしろい。脳卒中やった人が血圧をがんばって下げるとボケが加速するんじゃないかな。
血圧が低いと死にたくなることが明らかに

2018年1月7日

2年間の認知機能変化を追跡


A 2-year prospective follow-up study of temporal changes associated with post-stroke cognitive impairment.
2018  1月  韓国

脳卒中経験者のおよそ50%は認知障害を経験し、主に処理スピードが低下する。次いで計算力、注意力、視空間認識、言語、遂行機能、記憶力に影響する、という報告もある。

しかしこれら認知機能への影響が時間とともにどのように変わるのか よくわかっていないので調べてみたそうな。


52人の脳卒中患者について、入院直後、3、6、12、24ヶ月後の認知機能をフォローしたところ、


次のことがわかった。
・認知機能のもっとも大きな変化は3-6ヶ月の間におきた。

・認知障害者の割合は23.1%から42.3%の幅があり、3ヶ月後がもっとも多く、6ヶ月後がもっとも少なかった。

・性別(女性)、教育レベル、病変サイズなどが関連要因だった。

脳卒中後の認知機能は3-6ヶ月間にダイナミックな変化を示した。そういうものと理解したうえでのサポートが必要だろう、


というおはなし。

図:脳卒中後2年間の認知障害

感想:

3ヶ月後にボケててもすぐに治るから悲観しなくてもいいよ ってことなのかな。

上図右下は遂行機能。1年以降の低下っぷりに共感できる。

2017年11月24日

TIAやTNAのあと遂行機能が低下する


Executive Function Declines in the First 6 Months After a Transient Ischemic Attack or Transient Neurological Attack
2017  11月  オランダ

脳の局所的な虚血による一時的な神経症状を一過性脳虚血発作(TIA)とよび、局所症状を伴わない神経症状(軽いせん妄や失神)で他に原因が見当たらないものを一過性神経発作(TNA)という。

これらの症状は24時間以内に収まることになっているが、認知機能の低下は長く続く という報告がふえてきた。

そこでTIAとTNA患者について急性脳梗塞のサインである拡散強調MRI(DWI)の結果もふくめて認知機能の長期変化をしらべてみたそうな。


45歳以上で平均年齢65のTIAまたはTNAの患者121人について 認知機能検査で6ヶ月間フォローしたところ、


次のことがわかった。
・患者の60%がTIAで、40%がTNAだった。このうち26%にDWIで病変箇所がみつかった。

・6ヶ月間で遂行機能は低下した。いっぽう注意力は向上し

・処理スピードとエピソード記憶力には変化がなかった。

・DWIで病変の見つかった患者の遂行機能はずっと低いままだった。

・TIAとTNAの区別は認知機能の変化と関係しなかった。

TIAやTNA患者はその後6ヶ月間にわたり遂行機能が低下した。DWIで病変の見つかった患者は遂行機能が低いままだった、


というおはなし。
図:TIAとTNAの見分け方

感想:

TNAはじめて聞いたよ。そもそもDWI+だったら脳梗塞じゃあないのかね。

2017年5月14日

ラクナ梗塞後のアパシーと認知機能障害


Apathy, but not depression, is associated with executive dysfunction in cerebral small vessel disease.
2017  5月  イギリス

脳小血管病はラクナ梗塞などの非常に細い血管の病気をさし、血管性認知症の原因ともなる。

脳小血管病患者にアパシー(無気力)やうつがどのくらいいて、特定の認知機能障害と関連があるものかしらべてみたそうな。


ラクナ梗塞の患者196人と健康な300人についてアパシーやうつ程度を調べる検査、

および記憶、遂行機能、処理速度、見当識のテストを行い比較したところ、


次のことがわかった。
・脳小血管病患者のうち15.8%がアパシーのみを示し、11.8%がアパシーとうつの両方、1.0%がうつのみを示した。

・アパシーがあると認知機能が低下し、とりわけ遂行機能と処理速度が低下した。記憶や見当識とは関連がなかった。

・うつは認知機能の低下とは関連しなかった。

アパシーは脳小血管病によくある症状で遂行機能や処理速度の低下と関連があった、


というおはなし。
図:アパシー、うつと脳小血管病

感想:

いままでアパシーとうつの違いがよくわかんなかったんだけど、すこし見えてきた気がするよ。

2017年5月13日

微小脳内出血の数と位置と認知障害


Space and location of cerebral microbleeds, cognitive decline, and dementia in the community
2017  5月  オランダ

微小脳内出血と認知機能との関連については はっきりとした結論はまだない。

微小脳内出血の個数と位置、認知障害についてしらべてみたそうな。


平均年齢75、認知症でない2602人についてMRIを撮り微小脳内出血を調べ、5.2年後に認知機能テスト(言語性記憶、処理速度、遂行機能)を行い関連を解析したところ、


次のようになった。

・皮質と深部に混在する微小脳内出血があると認知機能テストの3項目すべてでスコアが低下し、とくに言語性記憶と処理速度の低下がおおきかった。

・微小脳内出血が3個以上あると認知機能全般が急速に低下した。

・皮質下に微小脳内出血が3個以上あると処理速度がおおきく低下した。

・位置によらず微小脳内出血が3個以上あると認知症の発生率がとても高かった。

高齢者の微小脳内出血の個数や位置が認知機能の低下とあきらかに関連していた、


というおはなし。
図:微小脳内出血の個数と認知症リスク

感想:

じぶんもそれらしいものがいくつかある。微小どころではないおおきいやつやってるから そのうち認知症かな。

わくわくしてきたぞ。

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