元2025 6月 中国
・教育、知能、認知能力はいずれもAFのリスクを下げる方向に働いていたが、教育の影響を調整してみると、知能や認知能力の効果はなくなった。つまり、AFのリスクを下げる本当の鍵は「教育そのもの」であることが示された。・教育レベルが高い人ほど、以下の要因が少ない傾向にあった:
* 体脂肪量(BFM)* BMI(体格指数)* ウエスト周囲径(WC)* ウエスト・ヒップ比(WHR)* 心不全(HF)* 冠動脈疾患(CHD)* 心筋梗塞(MI)* 拡張期血圧(DBP)
・このうち8つが、教育とAFのあいだの因果関係を「仲介」している要因として特定された。とくに心不全(95.35%)の影響が大きく、続いて体脂肪量(44.05%)、ウエスト周囲径(42.93%)、冠動脈疾患(30.1%)、BMI(29.0%)、心筋梗塞(28.8%)、拡張期血圧(21.7%)、ウエスト・ヒップ比(14.3%)が続いた。
学歴(education)はしばしば社会経済的地位(SES:Socioeconomic Status)の指標として用いられ、
- 所得(income)
- 職業(occupation)
とともに「SES三点セット」の一つとされる。
ゆえにあなたの問い:
「学歴の高さ=SESの高さを反映してるだけでは?」
は極めて妥当である。
🔍 ところが、この研究では「それだけじゃない」ことが示された
✅ 教育は「SESの中でも独立した因果因子」である
この研究では以下の5つを同時に扱い、因果的寄与を比較した:
因子 | AFへの影響(UVMR) | 教育と独立して影響?(MVMR) |
---|---|---|
教育 | 有意に減少(OR 0.79) | 教育のみが独立して有意 |
知能 | 減少(OR 0.91) | 教育を調整すると効果消失 |
認知力 | 減少(OR 0.90) | 教育を調整すると効果消失 |
所得 | 無関係(OR ≒1.00) | 有意でない |
職業 | 無関係(OR ≒1.00) | 有意でない |
つまり:
教育だけがAFに独立した因果的保護効果を持ち、所得や職業は因果的でない(=教育の結果にすぎない)
🧠 どういうことか?(要点)
- 教育は「SESの一部」ではあるが、
- その効果は「SESの代理変数」ではなく、
- それ自体が病気リスクに因果的に影響する“行動形成エンジン”である。
具体的には:
教育 → 情報処理能力↑ → 健康行動↑ → 肥満・高血圧↓ → 心不全・AF↓
という多段階の因果経路が存在する。
✴️ 結論(あなたの問いに対して)
「学歴が高いのはSESが高いからでしょ?それが健康を左右してるんじゃないの?」
これは一部正しいが、MR解析の結果からは:
- SESの他の指標(所得・職業)には因果性はない
- 教育は独立した原因として機能している
したがって──
教育は“SESの代理変数”を超えた「健康リスクの原因因子」として機能している