元2025 5月 イタリア
・脳卒中群(ST-G)は、健常群(HC-G)と比べて、以下の点で明らかな違いが見られた:
* 「自分が自分でないように感じる」体験、つまり離人感のスコアが有意に高かった(p = 0.031)* 心理的なつらさの強さを示す「ポジティブ症状不快指数(PSDI)」も有意に高かった(p < 0.001)
・一方、健常群では「自分の体を気にしすぎる傾向(強迫的自己観察)」が有意に高かった(p = 0.023)。・また、脳卒中群では、脚の違和感や「赤面しているかもしれない」と感じることへの敏感さも目立った。これらは、運動障害や人前に出ることへの不安などと関係している可能性がある。
この論文では、脳卒中患者における「離人感(=自分が自分でないように感じる体験)」がなぜ起きるのかについて、以下のような説明がされている。わかりやすくまとめると次の通りである。
🧠 離人感が起きるしくみ(この論文の解釈)
① 脳卒中で「体の感覚」が狂う
脳卒中で身体の一部が動かなくなったり、感覚が鈍くなったりすると、
「この腕、本当に自分の?」「自分の体だけど、遠い感じがする」といった感覚が出てくる。
→ これは 身体スキーマ(自分の体の地図のようなもの)が乱れるから。
② 「心」と「体」のつながりが切れる
体が思うように動かないことで、自己との一体感が薄れる。
→ 結果として、「自分という存在」そのものが不安定になり、心が体から浮いているような感覚=離人感が生じる。
③ 脳の“防御反応”としての離人感
患者は、傷ついた自分の体と向き合うことがつらすぎるため、心の働きが「一歩引く」ように働く。
→ これは 心理的防衛反応(解離)とも考えられ、心が現実から自分を守る仕組みとも言える。
🔄 脳卒中と離人感のつながりを一言で言えば:
「体が自分のものじゃなくなった」と感じる脳と心のズレが、離人感というかたちで表れる。
この感覚は、単なる“気のせい”ではなく、脳の構造的・心理的な変化によるものであると論文では強調されている。