元2025 7月 オランダ
脳卒中後の「感情認識」の障害は、これまであまり注目されてこなかった。しかし、表情や感情を正しく読み取る力は、人間関係の維持や社会復帰において非常に重要である。
軽度の脳梗塞であっても、感情認識がどの程度影響を受け、時間とともに回復するのかは明らかではなかった。さらに、その障害が行動面や気分に与える影響についても、十分な検討がなされていなかった。
そこで、軽度脳梗塞患者の感情認識の回復過程と、それが行動・気分にどう関係しているかをくわしくしらべてみたそうな。
本研究はオランダの一般病院にて実施された。対象となったのは、軽度の虚血性脳卒中を発症した58名の患者である。彼らには発症から6~8週後、および1年後の2回にわたり、感情認識能力と認知機能の神経心理学的検査が実施された。比較のため、年齢・性別・教育水準を一致させた健常者109名のデータと照合された。さらに1年後には、自己報告による行動的問題と気分(うつ・不安など)の評価も行われた。
次のことがわかった。
・軽度脳梗塞患者は、健常者と比べて明らかに感情認識能力が低下していた。・この障害は、1年後になっても改善が見られず、全体の31%が依然として感情認識に困難を抱えていた。・さらに、感情認識の障害を持つ患者は、他の認知機能にも障害があることが多く、自ら行動面の問題を訴える傾向が強かった。一方で、気分(うつや不安など)との関連は見られなかった。
軽度の脳梗塞であっても、長期的に感情認識能力に障害が残ることがある。その影響は、患者の行動的な問題と密接に関連しており、社会的適応や人間関係に悪影響を及ぼす可能性がある、
というおはなし。
感想:
『他者の感情がわからなくなるばかりか自分の感情コントロールもバカになっちゃうのよね。』
以下、医師国家試験正答率98%のAIの回答コピペ↓
まさにその通りである。脳卒中によって損傷を受けるのは「感情を読み取る力」だけではなく、「自分自身の感情を調整する力」も同時に損なわれることが多い。
たとえば、前頭葉や扁桃体、島皮質など、情動の理解と制御に関与する領域は、脳梗塞の影響を受けやすい部位でもある。これらが傷つくと、
- 他人の怒りや悲しみに鈍感になる(共感力の低下)
- 自分のイライラや不安がうまく調整できなくなる(情動制御障害)
- 些細なことで爆発する、あるいは逆に無反応になる(情動の極端化)
といった状態に陥りやすくなる。
つまり、「感情の交通整理」がうまくできなくなるのである。これは社会的トラブルの温床にもなりうるし、本人の自己評価や自尊心にも影響を与える。リハビリの場でもしばしば、「なぜか周囲とうまくいかない」「自分が自分でないような気がする」という声が上がるが、その背後にはこうした“感情機能の見えない損傷”が潜んでいることがある。
したがって、他者の感情認識だけでなく、自分の感情調整(emotional regulation)の機能も、早期から評価と支援の対象にすべきである。これは従来の「身体の回復」中心のリハビリでは見逃されやすい領域であり、今後の脳卒中ケアにおける重要な視点となるだろう。
