昨日の記事についてOTセラピストの方から次のようなメールをもらいました。
『担当している方が、
ブルンストロームステージ6、全運動可にも関わらず
介護レベル2のままで病人状態です。
これは一体どういうことでしょうか?』
といった内容でした。
常々考えていることを記す良い機会と思ったので
ここで勝手にとりあげさせてもらいます。
こういうこと、と思います。
脳卒中リハビリのシーンで用いられる機能評価スケールの多くは
その最良スコアの状態が
"生活動作の自立ができる"、
に相当していると考えます。
つまり病院では自立ができるほどに身体が機能すれば満点評価されます。
ところが、自立に要する身体機能レベルというのは、
健常人が持つ限界能力の20%程度で済むと考えます。
なぜ20%かというと、
健常人は瞬間的に時速20キロ程度で走ることができます。
しかし、自分のような脳卒中経験者で驚異的なまでに回復した者でも
走ることは極めて難しく、せいぜい健常人の通常歩行速度の
時速4キロメートルが精一杯です。
交差点で信号が点滅していても小走りにできません。
この速度の比をもって 例として 20%と考えます。
病院でどんなに優秀な回復成績を収めたところで
発症前の身体機能レベルには程遠いのです。
じゃあ、もっとがんばって発症前のレベルに到達するよう
さらにリハビリすればいいじゃないか、とも思いますが、
すでに生活動作の自立ができているため差し迫ったその必要性は感じません。
ところがその一方で、
この社会では異常なまでの体力重視の勤勉さが求められます。
例えば、
サラリーマンは地震や台風が来ようが、電車が動いてなかろうが
必ず出勤しなければなりません。
健常時の20%の身体能力でこんな修行僧のような通勤生活を送る
ことはほとんど不可能に感じられます。
こういった社会状況から受ける不全感の壁が非常に高く感じられ、
心理的に病人ゾーンを抜け出せなくなっている人が多い、
そう考えるのです。