下記テレビ放映の影響で、この数日間 脳卒中リハビリのネット検索が活発になっている。
(間違ってここへ来る人が多い)
「脳機能障害の改善策に革命をもたらしたい」
TBS 【夢の扉~NEXT DOOR~】
にリハビリテーション医学講座 安保雅博教授が出演
・ 放送日時:平成22年3月14日(日) 18:30~
・放送局 : TBS 【夢の扉~NEXT DOOR~】
このなかで紹介された
磁気刺激治療法(TMS)の適応基準が慈恵医大の
ホームページに載っている。
それを読んでかなり驚いた。
以下、その適応基準を引用
(1)認知機能に問題がない(認知症ではない)。
(2)うつ病でない。
(3)透析をしていない。
(4)頭蓋内に金属(クリップなど)が入っていない、心臓ペースメーカーが入っていない。
(5)少なくとも一年間は痙攣の既往がない(脳波検査で異常がない)。
(6)全身状態が良好である(発熱、栄養障害、重度心疾患、体力低下などがない)。
(7)日常生活が自立している(自ら移動できるなど生活上では介助が要らない)。
(8)脳卒中(脳梗塞、脳内出血、クモ膜下出血)を原因として 上肢麻痺もしくは失語症を呈している。
(9)年齢が 16 歳以上である。
上肢麻痺
→手首を曲げないで、指でグーパーができること。少なくとも母指・示指・中指の3指が曲げ
たり伸ばしたりできること
失語症
→発語がスムーズではない、言葉がとっさには出てこず言いたいことが言えない、単語を思
い出せない、単純な内容であれば理解できるが複雑な話は聞いても分からないなどの症状
がある。
もう少し簡単に言うと、その条件とは、
頭がはっきりしていること、病気ではないこと、身体に異常がないこと、自立していること、
指が曲げ伸ばしできるほどの非常に軽い麻痺であること、
ゆっくりであれば言いたいことが言えること、
ということである。
・・・
CI療法よりもはるかに厳しい条件に見える。
かつて上肢麻痺で指が1mmたりとも動かなかった私の経験から言わせてもらうと
この条件は、
"治す必要のない人にあえて治療を施すための条件"
と言っているように感じられてならない。
この条件に当てはまるほどに手指が動く人というのは
もはや麻痺で困っている人とは言えまい。
これを麻痺と呼んだら、本当の麻痺患者に申し訳が立たない。
もともと手が動くひとしか治療対象にしないのだから、
ほんの少し訓練するだけで動きが良くなるのは当然である。
しかも入院費用として数十万円も支払うのだから、そのやる気たるやすでに半端ではない。
間違いなく自ら進んで 確実に良い成果を出すであろう。
最も直視しなければならない本当の麻痺患者を "適応基準" というフィルタで巧みに除外し、
安易に得られる成果を誘導して それを革命的なエビデンスと称する。
ちなみに最新の
脳卒中治療ガイドライン2009によるとこの磁気刺激治療法は、
未だ治療法としてほとんど評価されていない。
近年、経頭蓋反復磁気刺激(rTMS)による上肢機能の改善27-29)の報告(Ⅰb)や、経頭蓋直流電流刺激による上肢運動機能の改善30)(Ⅱb)が報告されているが、例数は少なく、刺激条件、刺激部位などもまだ確立されていない。
脳卒中リハビリの分野が抱える問題の本質が
如何に困難なものであるかを伺い知ることができる好例と思った。
参考:この件↓と同レベルと思う。
脳の可塑性に期待、HANDS療法 衝撃のビデオ