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2017年10月10日

脳卒中で海馬の神経新生に異常


Adult hippocampal neurogenesis poststroke: More new granule cells but aberrant morphology and impaired spatial memory
2017  9月  ドイツ

脳卒中を経験すると海馬の機能に障害がおきて記憶力が低下することがわかっている。

海馬の歯状回は 生涯をとおして新たな神経細胞がつねに生まれている箇所の1つである。

脳の虚血刺激によってこの神経新生が活発になることがわかっているが、なぜか記憶力が改善するわけではない。

最近の研究では代わりに異常な神経新生がおきている可能性が指摘されているので、実験でたしかめてみたそうな。


ネズミの行動が 海馬の記憶に基づくものか、海馬に依らない記憶によるものか を区別できるようにモリス水迷路試験を工夫した。

ネズミを人為的に脳虚血にしたのち水迷路試験を行い、さらに7週間後 海馬組織を顕微鏡観察した。

また 神経新生刺激の1つとして走行輪を与えたグループも作成した。


次のことがわかった。
・虚血刺激によって海馬の神経新生があきらかに増加していた。

・虚血ネズミは水迷路試験で時間がかかり、海馬記憶を活用していなかった。

・顕微鏡観察では虚血刺激で新生した神経細胞は形状が普通でなかった。

・ランニングによっても神経新生が促されたが、この細胞もまた異常形状だった。

脳の虚血経験により海馬歯状回に異常な神経新生が起き、海馬記憶に障害がおきた、


というおはなし。
図:脳卒中で海馬神経細胞の奇形


感想:

新しい細胞が生まれるだけじゃ問題は解決しないんだな。まともな形に育ってちゃんと機能しないと。

2017年9月18日

脳卒中の回復に本当に適した運動強度とは


Effects of High- Versus Moderate-Intensity Training on Neuroplasticity and Functional Recovery After Focal Ischemia
2017  9月  フランス

脳卒中からの回復には中強度の有酸素運動(MOD)が適しているとおおくの実験が示しているいっぽう、その効果は今ひとつである。

高強度のインターバルトレーニング(HIT)がより効果的であるという報告があるので動物で実験してみたそうな。


人為的に脳梗塞にしたネズミをMODもしくはHITのグループにわけ、トレッドミルを14日間継続した。

HITでは最大速度を下回りかつ乳酸の蓄積が解消しない強度以上で、MODと同じエネルギー消費量のトレッドミル走行を課した。

運動機能および脳組織の各種たんぱく質の発現量を測定したところ、


次のことがわかった。

・HITグループではMODよりも運動持久力と前脚握力の回復が早かった。

・梗塞側の脳の炎症関連サイトカインは HITグループで少なく、

・軸索の伸展に関わるニュートロフィン受容体p75が梗塞側の脳で非常におおく発現していた。

おなじエネルギー消費量であれば中強度の有酸素運動よりも高強度のインターバルトレーニングを短く行ったほうが運動機能は回復し脳の可塑性も促されるのかも、


というおはなし。
図:運動強度と脳卒中回復

感想:

昨年のいまごろ、腕立てMaxに挑戦したら騒音のような拍動性の耳鳴りが1日24時間x数週間とまらなくなった。

つよい運動は脳の血流改善によさそうだな、、、と 実感した。

2017年7月7日

落ちたら死ぬかも アクロバティック・トレーニングとは


Motor Skills Training Enhances α-Amino-3-hydroxy-5-methyl-4-isoxazolepropionic Acid Receptor Subunit mRNA Expression in the Ipsilateral Sensorimotor Cortex and Striatum of Rats Following Intracerebral Hemorrhage.
2017  6月  日本

脳内出血は脳卒中のなかでも死亡や重い障害が残る率がたかい。

この障害から回復させる方法として、失敗したら命にかかわるかもしれない環境で高度なスキルの要求される訓練を行う「アクロバティック・トレーニング」の有効性が動物実験で示されている。

この効果を分子レベルでたしかめてみたそうな。


人為的に脳内出血にしたネズミにアクロバティック・トレーニング(AT)を1日5回x3週間施した。

ATでは、落ちたら死んでしまいかねない足場を複数用意して歩かせた。

ATの有無、脳内出血の有無で4つのグループ分けを行った。

シナプス可塑性に寄与するたんぱく質PSD95に必要なAMPA受容体の遺伝子発現レベルを測定した。


次のことがわかった。
・脳内出血ネズミの前脚の感覚運動機能スコアは、ATありのほうがATなしよりもあきらかにすぐれていた。

・AMPA受容体のmRNAがATグループの同側の感覚運動野で有意に増えていた。

・脳内出血グループではAMPA受容体の4つのサブユニットのうちの2つが 同側の線条体で脳内出血なしグループよりも減少していた。

アクロバティック・トレーニングによる脳内出血からの運動機能の回復は シナプス伝達とその可塑的変化によるものかも、、


というおはなし。
図:アクロバティックトレーニング

感想:

○○ヨットスクールのような ときどき死人がでるほどの特別なリハビリコースをつくったら患者の家族に喜ばれるかな。

2017年6月1日

脳卒中がきっかけでアル中になるメカニズム


Stroke triggers nigrostriatal plasticity and increases alcohol consumption in rats
2017  5月  アメリカ

アルコールは脳卒中のリスク要因の1つであるが、逆に脳卒中をきっかけに飲酒がやめられなくなる患者もいるという。

このあたりのメカニズムをネズミでしらべてみたそうな。

アルコールを摂ることに慣れさせたネズミの

・習慣化行動をつかさどるとされる背側線条体の外側部を人為的に梗塞にしたところ、

・水よりもアルコールを好んで摂るようになった。

・このとき、背側線条体の内側部のD1受容体の活動が高まっていた。

・そこで薬物的にD1受容体の活動を抑制したところ、アルコールを摂る行動が低下した。

脳梗塞で背外側線条体による内側部D1受容体への抑制が外れてアル中になる、というメカニズムが考えられた、


というおはなし。

図:背内側線条体


感想:

ポテトチップやめられなくなったのもこれが原因かも。

2017年5月15日

上肢機能の回復はBDNF遺伝子の型で決まっていた


Association Between Brain-Derived Neurotrophic Factor Genotype and Upper Extremity Motor Outcome After Stroke
2017  5月  韓国

脳卒中後の回復の鍵となる神経可塑性には脳由来神経栄養因子(BDNF)が深くかかわっていると考えられている。

BDNFには遺伝子多型 "Val66Met"(66番目のアミノ酸がバリン→メチオニンに変化)があり、BDNFの分泌能低下との関係が報告されている。

そこで、脳卒中後の上肢運動機能とBDNF遺伝子型との関連をしらべてみたそうな。


脳卒中患者97人について3ヶ月後の上肢運動機能を測定した。

BDNFの遺伝子型 val/val, val/Met, Met/Met の3グループに患者を分け 関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・上肢麻痺が重症だった患者ではBDNF遺伝子が Met(メチオニン)へ変異したタイプがあきらかにおおかった。

BDNFの遺伝子型から脳卒中後の上肢機能の回復程度を予測できるかもしれない、


というおはなし。

図:BDNF遺伝子型と上肢運動機能

感想:

生まれつき治りにくい人もいるってことか。
努力やがんばりではどうにもならんね。

[BDNF]の関連記事

2017年4月6日

下肢運動機能の比例回復則からわかること


Proportional Recovery From Lower Limb Motor Impairment After Stroke
2017  3月  ニュージーランド

脳卒中のあと皮質脊髄路にダメージが無い場合、その後のリハビリ訓練量にかかわらず 低下した運動機能の一定の割合≒70%が3ヶ月後には自発的に回復するという経験則があり "Proportional Recovery Rule"(比例回復則)ともいわれている。

比例回復則は上肢機能についてはよく調べられているが下肢の報告は無いのでしらべてみたそうな。


脳卒中患者32人の下肢運動機能を3日後と3ヶ月後に評価した。

皮質脊髄路の健全性はTMSとMRIで評価した。
これらと運動機能の回復度、リハビリ訓練時間との関連を解析したところ、


次のようになった。

・3ヶ月後、低下した下肢運動機能の74%が回復した。

・皮質脊髄路の健全性は下肢回復度の予測の役に立たず、

・しかも回復度はリハビリ訓練時間にもよらず、初期の運動機能低下度のみで決まった。

・上肢の研究では患者の30%は比例回復則にフィットしないはずなのに、今回そういった患者群はなかった。

脳卒中での下肢運動機能の低下は 3ヶ月後にその70%まで回復した。上肢研究でみられた比例回復則に沿わない患者群がいなかったことは 微力ながら別の神経経路(網様体脊髄路)の寄与があったことをうかがわせる。訓練量にもよらなかったことから、比例回復則はもともと備わっている生体プロセスなのであろう、


というおはなし。
図:下肢の比例回復ルール
回復度ΔFMは訓練時間と相関しない。


感想:

比例回復則は2008年から話題になりはじめて、すでに失語や半側空間無視でも同様の効果が確認されている。

ようするに神経インフラさえ残っていれば、リハビリしようがしまいが 落ち込んだ機能スコアぶんの70%は勝手に回復する ってこと。

これ↓に通じるものがあるね。
題指向型訓練 いくらやっても役には立たない

2016年12月14日

心を改め運動を始めるだけで脳の可塑性は復活する


Physical Exercise Preserves Adult Visual Plasticity in Mice and Restores it after a Stroke in the Somatosensory Cortex
2016  12月  ドイツ

脳の可塑性を評価する方法に眼優位性可塑性(一方の眼を数日塞いだときに生じる脳視覚野の活動変化)がある。

この能力は加齢や脳損傷により低下することが知られている。
また刺激豊富な環境で育ったネズミでは眼優位性可塑性が生涯保たれ、刺激の無い環境のネズミではやがて消失することがわかっている。

そこで脳卒中後の運動が眼優位性可塑性に影響するものかどうか実験してみたそうな。


次のことがわかった。

・カゴの中に走行輪を置き自由に走れる環境で育ったネズミは脳卒中後でも眼優位可塑性を維持し、走行輪のないカゴのネズミでは脳卒中後に眼優位可塑性が消失した。

・もともと走行輪のない環境で育ったネズミでも、脳卒中から14日後に走行輪アクセスを2週間可能にしただけで眼優位性可塑性が復活した。

脳卒中のあとに自発的な運動を始めるだけで 失われつつあった脳の可塑性が復活した、


というおはなし。


図:眼優位可塑性

感想:

「自発的な」運動ってところがポイントだと思う。「強制」したら治るものも治らない、、
リハビリは動かせばイイってもんじゃぁない. 本人がやる気になるまで待て.

2016年10月21日

音の追加で上肢が改善 スパイクタイミング依存可塑性とは


Spike Timing-Dependent Plasticity in the Long-Latency Stretch Reflex Following Paired Stimulation from a Wearable Electronic Device
2016  10月  イギリス

上肢の運動伝達はおもに皮質脊髄路をとおる。 歩行や姿勢制御を司る網様体脊髄路も一部関わっている と考えられている。

脳卒中で損傷した皮質脊髄路の代わりに 網様体脊髄路のコネクションを強化できれば上肢麻痺のリハビリがはかどるかもしれないと考えた。

脳幹網様体の活性化には音刺激が有効であることから、クリック音と目標筋肉を収縮させる電気刺激を組み合わせて実験してみたそうな。


健常者の上腕二頭筋に電極を貼り、長潜時反射を観測した。

このとき電気刺激に先立つかまたは遅れてクリック音をイヤフォンから流し、反射強度との関連を調べた。

電気刺激装置は小さなウェアラブルタイプに設計し、身体に7時間装着して日常生活をさせたところ、


次のようになった。

・長潜時反射強度は 電気刺激→クリック音 の順番のとき49%アップし、

・クリック音→電気刺激の順だと31%低下して いわゆる "スパイクタイミング依存可塑性"を示すようになった。

ウェアラブル装置による音と電気刺激の組み合わせで脳幹網様体からの上肢運動経路の強化に成功した、


というおはなし。
図:Spike Timing-Dependent Plasticity

感想:

別のニュース記事だと あまりにも結果がよかったのでインドの病院で患者150人の臨床試験を開始して年末に成果がでる予定とある。

当初はTMSで動物実験してたんだけど、よくしらべると磁気刺激ではなくコイルの放電時に生じるバチンって音に反応していることがわかって 「よっしゃ 磁気は捨てて音刺激で行こう!」ってことになったという。↓
Reticular formation responses to magnetic brain stimulation of primary motor cortex

2016年6月20日

BDNFが7年かけて脳を修復してくれるという根拠について


Low Circulating Acute Brain-Derived Neurotrophic Factor Levels Are Associated With Poor Long-Term Functional Outcome After Ischemic Stroke.
2016  6月  スウェーデン

脳由来神経栄養因子(BDNF)は脳の可塑性、神経新生の重要な役割を担い、脳卒中の予後に大きく影響すると考えられている。

脳卒中で入院時の血中BDNF濃度が患者の短期的 長期的な回復にどう影響するのか調べてみたそうな。


脳梗塞患者491人の入院時血中BDNF濃度を測定し、健常者513人と比較した。

3ヶ月、2年、7年後の生活自立度を測定してBDNFとの関連を解析したところ、


次のことがわかった。

・脳梗塞患者のBDNF濃度は健常者に比べ明らかに低かった。

・BDNF濃度は3ヶ月後の回復度合いには関連しなかった。

・しかしBDNF濃度が特に低いグループでは2年後 7年後の回復不良リスクが高かった。

・この関連は高血圧や糖尿、脳卒中重症度に依らなかった。

急性期脳梗塞患者の血中BDNF濃度は低かった。そのうちさらに低い者は長期的な機能回復不良になりやすかった、


というおはなし。

図:BDNFと2年、7年後の回復

感想:

リハビリはすぐ頭打ちになって諦めがちになるけど、このBDNFのように早期には影響なくても 2年-7年かけてじっくりと脳と身体を癒やす仕組みが備わってるのかもね。

2016年4月28日

脳が回復する手の動かし方 運動前野腹側部


Increased ventral premotor cortex recruitment after arm training in an fMRI study with subacute stroke patients.
2016  4月  ドイツ

リハビリ訓練によって手が健常者なみに改善した脳卒中患者の脳の活動を調べてみたそうな。


発症から2-9週間経つ軽症-中等度麻痺の脳卒中患者12人および健常者について、

1日1時間の上肢機能訓練を3週間行った。

訓練前後でfMRIを撮影し脳の活動域を確認した。

fMRIは麻痺手または非麻痺手を能動的に握りしめる課題と 空気圧スプリントで受動的に開く課題とで測定した。


次のことがわかった。

・麻痺手の運動機能は大きく改善し健常者レベルに近くなった。

・病側脳の運動前野腹側部は麻痺手を能動的に動かす課題でのみ活動が増加した。

・このような変化は受動運動や非麻痺手の能動運動では見られなかった。

・さらに 麻痺手を能動的に動かした時のみ両側の運動前野腹側部に健常者よりも高い活動が見られた。

訓練によって手の運動機能が大きく改善した結果、脳の活動域が健常者と同じになるかと考えていたら追加の活動域が現れた。運動前野腹側部が重要な役割を担っているのではなかろうか、


というおはなし。

図:運動前野腹側部

感想:

能動的に動かさないと意味がないってことでもあるのかな。他人が指や手首を曲げ伸ばししてくれても 気持ちがいいだけで脳の肝心な場所はピクリとも反応しない。

2016年3月22日

磁気刺激が脳卒中の神経ネットワークに与えるえいきょう


Shaping Early Reorganization of Neural Networks Promotes Motor Function after Stroke.
2016  3月  ドイツ

脳卒中患者への磁気刺激治療が脳活動にどう影響するのか調べてみたそうな。


発症から16日以内、手に麻痺のある脳卒中患者26人について1回45分の理学療法訓練を5日間行った。

各訓練の直前に5分間のシータバースト磁気刺激を 損傷脳側の運動野に与えた。
比較グループではつむじのあたりを刺激した。

直前、直後、3ヶ月後までの各段階での手の機能、安静時の脳機能MRIを測定したところ、


次のことがわかった。

・運動野へ刺激を受けたグループで握力が明らかに強くなった。

・運動ネットワーク結合度と手の機能回復には関連があり、

・特に比較グループで両半球間および半球内の結合性が低下した。これは運動野刺激グループには見られなかった。

脳卒中患者への理学療法訓練の直前にシータバースト磁気刺激を追加することで運動ネットワークの質の低下を食い止めたのかもしれない、


というおはなし。

図:結合度変化iTBSによる


感想:

最近ネットワーク評価おおい。たぶんデータ取得が異常に簡単で あとはソフトウェアの力だけで表現の自由度の高いグラフィカルな結果が得られるとこがウケてるんだと思う。
ディフュージョンテンソル描画も同じで、、、

2016年2月4日

脳ネットワークの可塑的変化をグラフ解析したところ、、


Functional reorganization and prediction of motor recovery after a stroke: A graph theoretical analysis of functional networks.
2015  10月  韓国

回復途上にある脳卒中患者の 脳機能ネットワークの可塑的変化をグラフ理論にもとづき解析してみたそうな。


12人の脳卒中患者について、発症後2週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の各時点で
安静時の脳機能MRI測定および上下肢の運動機能を評価した。

脳機能ネットワークの位相幾何学的な再編状況をグラフ理論で解析したところ、


次のことがわかった。

・損傷脳半球でネットワークの再編活動が起きていた。

・ネットワークのランダムネスは最初の3ヶ月間は非常に活発だったが、

・3ヶ月以降は止んでしまった。

・発症直後の損傷脳半球グラフの平均最短距離が小さいほど3ヶ月以降の回復度が良かった。

グラフ理論的アプローチは脳卒中患者の脳機能ネットワークの動的変化を理解するのに役立つだろう、


というおはなし。


図:脳機能MRI


感想:

3ヶ月で止まっちゃうのね、、、
2度めの脳卒中で可塑性が再び高まる可能性について

2016年1月14日

回復の良い脳卒中患者は脳のここが違う


Enhanced Effective Connectivity Between Primary Motor Cortex and Intraparietal Sulcus in Well-Recovered Stroke Patients.
2016  1月  ドイツ

脳梗塞での運動障害は脳の広範に影響を及ぼす。運動機能の回復過程での前頭葉と頭頂葉との関連の変化を調べてみたそうな。


発症3ヶ月時点で回復良好な脳卒中患者15人について、
麻痺手の握り動作時の脳活動をMRIで測定し、
損傷側の頭頂葉の頭頂間溝と 前頭葉の運動野の結合性を評価して
健常者のデータと比較したところ、


次のことがわかった。

・健常者に比べ 損傷側の一次運動野と頭頂間溝前部との結合性が明らかに強化されていた。

・さらに頭頂-前頭ネットワークの結合パターンが健常者のそれとほぼ同じだった。

損傷脳半球の頭頂-前頭ネットワークが脳卒中後の可塑的変化に大きく関わっていることが示された、


というおはなし。

図:頭頂間溝
頭頂間溝


感想:

頭頂間溝(Intraparietal Sulcus)って聞いたことないな、、とおもってグーグルトレンドみたら 以前からよく検索されているようだ。

2016年1月4日

2度めの脳卒中で可塑性が再び高まる可能性について


Paradoxical Motor Recovery From a First Stroke After Induction of a Second Stroke: Reopening a Postischemic Sensitive Period.
2015  12月  アメリカ

脳卒中のあとには 訓練に応じて回復がとてもはかどる期間がある。このときの脳の可塑性の高さは虚血によってもたらされたと考えられる。

そこで、脳卒中の慢性期にもう一度脳卒中になったら再び可塑性が高まるのではないか、、という仮説を動物で検証してみたそうな。


えさを掴む訓練を充分に施したネズミの運動野に脳卒中を起こして、
7日後から前肢のリハビリを19日間施した。

途中、別のグループには2度めの脳卒中を起こし その翌日から前肢リハビリを継続した。


次のようになった。

・2度めの脳卒中がないグループでは前肢の機能回復が不十分だった。

・2度めの脳卒中を起こしたグループは元のレベルにまで劇的に回復した。

あらたな虚血状態が脳の可塑性を再度促し、続くリハビリにより元の運動機能を取り戻すことができた、


というおはなし。
図:2度めの脳卒中


感想:

すごいはなしだ。となると脳卒中の再発はさらなる回復へのチャンスなのか!?

2015年6月5日

健側ばかり使っていると脳に異常なシナプスが形成され麻痺手の回復が遅れる可能性について


Experience with the “Good” Limb Induces Aberrant Synaptic Plasticity in the Perilesion Cortex after Stroke
2015  6月  アメリカ

脳卒中のあと 麻痺していない側の手を使う「代償運動」が脳に与える影響を調べてみたそうな。


一方の脳半球を人為的に梗塞にしたネズミを使って 非麻痺手に頼る訓練をしたグループとそうでないグループを設け、その後のリハビリ効果および脳皮質活動、シナプス密度を比較した。


次のようになった。

・非麻痺手に頼る訓練をしたグループでは病巣近傍の運動野の活動が低下した。

・また、病巣周辺のシナプス密度が高くなったが その後の麻痺手のリハビリ成果は低くなった。


麻痺していない手に頼る訓練の結果、脳梁を介して病巣周辺に異常なシナプス形成がもたらされ、結果として麻痺手の回復が妨げられたのではないか、、


というおはなし。

シナプス形成

感想:

入院して間もないころ、左手は感覚ゼロ、グニャグニャでまったく使い物にならなかったけど 「右手があるからなんとかなるな、、」 と 妙に心強かった思い出。

2015年5月18日

手の指を繰り返し動かしてあげても脳への影響はゼロ


Continuous passive movement does not influence motor maps in healthy adults.
2015  4月  オーストラリア

手の指を繰り返し動かしてあげることで脳皮質と筋肉とのつながりが強化されるものなのか実験してみたそうな。


13人の健常者について、親指の外転筋をモーターで繰り返し動かす刺激を1日に30分間x3日間行った。TMSを使って運動誘発電位を測定し、脳皮質の対応マップを作成して運動刺激前後での変化を比較した結果、


次のようになった。

・運動誘発電位および対応する脳皮質マップに有意な差は生じなかった。


親指筋肉への持続的他動運動の結果、脳皮質への影響がまったく観測できなかった。脳卒中患者へ こういった類のリハビリを施してもおそらく効果はないだろう、


というおはなし。

持続的他動運動

感想:

機械にやらせるからそういう結果になる。社会的に高い地位にある人に指を動かしてもらえれば、きっと 良くなる患者が続出すると思うんだ。まえにNHKでみた、

2014年10月12日

ダメージを負った脳組織が勝手に再生する仕組みが明らかに


Mechanism that repairs brain after stroke discovered

A latent neurogenic program in astrocytes regulated by Notch signaling in the mouse
2014  10月  スウェーデン


脳卒中で死んだ脳神経細胞が新生するメカニズムを発見したそうな。


人為的に脳梗塞にしたネズミの脳を調べたところ、次のことがわかった。

・神経繊維の構造支持を担っているアストロサイトという細胞が神経細胞に生まれ変わっていた。

・この生まれ変わりを普段抑制しているシグナル経路(Notch1)を特定できた。

・梗塞によりNotch1シグナル伝達が弱くなるとアストロサイトの神経細胞への生まれ変わりのきっかけになった。

・新生した神経細胞群がどのような機能を担うのかはよくわかっていない。


脳卒中で壊死した神経細胞を補うべく 構造支持材として働いていた細胞が神経細胞に生まれ変わることがわかった。この謎のプロセスを制御しているシグナル経路も明らかにすることができた、


というおはなし。
 NOTCH-1 receptor


感想:

ips細胞に頼らずに 自分のちからで治せるようになるのか、、、

2014年8月12日

痙縮は脳の可塑性で治るのか


Functional Brain Correlates of Upper Limb Spasticity and Its Mitigation following Rehabilitation in Chronic Stroke Survivors.
2014  7月  アメリカ

脳卒中後の痙縮と脳機能活動との関連を調べてみたそうな。


発症6ヶ月以降の慢性期脳卒中患者23人について手の運動学習、痙縮リハビリを週5日x12週間行った。

この前後で、痙縮度、触覚、手の動作中の脳機能MRIを測定した。


次のことがわかった。

・痙縮が強いほど、運動機能は低下し感覚も弱かった。

・リハビリによって上肢の痙縮と運動機能が改善した。

・リハビリ前、痙縮が強いほど損傷脳側の視床で脳機能活動が高かった。

・痙縮が緩和するにしたがい反対側の一次運動野、感覚野周辺の活動が高まり、運動機能も変化した。


損傷側と反対の脳半球が慢性期脳卒中患者の筋緊張コントロールに関係していそうである、


というおはなし。

脳機能画像


感想:

痙縮って通常 反射がどうのこうので片付けられてしまうけど、もとはといえば脳に原因があるわけで、ダメージを負ったとは言っても脳と手が完全に無関係になったわけではない。

ちょうど いい検査機も入ったし「いっちょ脳を調べてみよか?」 という話と理解した。


これおもしろかった
痙縮の神経機構-再 訪

2014年6月18日

脳卒中患者のデフォルト・モード・ネットワークは…


Significance of longitudinal changes in the default-mode network for cognitive recovery after stroke.
2014  6月  韓国

脳卒中患者の認知機能の回復過程はよくわかっていない。

そこで、基底状態にある脳活動を表すデフォルト・モード・ネットワークとの関連を脳機能MRIを使って調べてみたそうな。


右脳損傷の11人の脳卒中患者と11人の健常人について安静時のfMRIを発症1か月、3ヶ月、6ヶ月後に撮影し、デフォルト・モード・ネットワークと認知機能の回復状況との関連を解析した。


次のようになった。

・発症1か月後の脳卒中患者では後帯状皮質、楔前部、内側前頭回のデフォルト・モード・ネットワーク連結性が大きく低下していた。

・3ヶ月後にはこれら脳領域のデフォルト・モード・ネットワーク連結性は元に戻っていた。

・損傷を受けていない側の脳の背外側前頭前野のデフォルト・モード・ネットワーク連結性が認知機能の回復と著しい相関があった。

・これは脳損傷で低下した認知機能の代償的なプロセスと考えられた。


回復過程にある脳卒中患者のデフォルト・モード・ネットワークの変化と認知機能に影響する脳領域を示すことができた、


というおはなし。


感想:

デフォルト・モード・ネットワークってなんぞや?と思い検索してみると、、、面白かった。
浮かび上がる脳の陰の活動
キーワードトレンドをみると、4,5年まえから急に注目されている。


2014年1月9日

身体パラフレニア患者のラバーハンド錯覚はどうなるのか?


The Rubber Hand Illusion in a patient with hand disownership.
2013  12月  オランダ

右脳の感覚運動野が梗塞になった78歳の患者が、左手の所有感に問題(身体パラフレニア)を抱えていた。

運動機能が回復した後も、この身体所有感の問題は残っていた。


そこで、ラバーハンド錯覚テストを左右おのおのの手について行い、どのような違いがでるか実験してみたそうな。


次のようになった。

・錯覚の程度は右手よりも梗塞と反対側の左手で顕著だった。

・左手をラバーハンドで錯覚させるためには視覚的な刺激だけで十分だった。


身体所有感覚に異常のある患者は、作り物の手をいとも簡単に自分の手と思い込んでしまうようだ、

というおはなし。


ラバーハンド錯覚とはこのこと



感想:

なっとくいかない。

普段自分のからだにぶらさがっている手ですら自分のものと認識できないのに、どうしてゴム手を横に置いただけで自分の手と錯覚すると言うのだろうか?
きっと触覚も鈍いはずだからなおさら錯覚しにくいと思うのだが…

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