元2025 7月 中国
・どの統計モデルを使っても、クロピドグレルを使っていた人のほうがアスピリンを使っていた人よりも死亡のリスクが高かった。・たとえば、全体の死亡リスクは1.31倍、脳卒中と心臓の病気による死亡リスクは1.47倍高いという結果である。・調査開始から6か月以内に亡くなった人を除いてもこの傾向は変わらなかった。65歳以上や糖尿病・脳卒中の経験がある人では、クロピドグレルのリスクがさらに高まる傾向が見られた。
✅ 結論から言えば:
「抗血小板薬の有無による効果」ではなく──
“効かない抗血小板薬”を“効かない人”に“そもそも不要な目的”で使った結果、アスピリンとの差があらわになった
という、本質的な「三重のミスマッチ」にあると考える。
✅ まず事実確認:この研究の前提
- NHANES対象者の多くは脳卒中・心疾患の既往がない → つまり一次予防。
- 抗血小板薬がそもそも一次予防に意味を持たないことは、エビデンスに基づきすでに確立している。
- にもかかわらず、アスピリン vs クロピドグレルで明確な死亡リスクの差が出ている(クロピドグレルのほうが有意に悪い)。
❓なぜ、無意味なはずの比較に差が出たのか?
🧷【解釈1】「効かない薬」と「多少なり効く薬」の差が浮き彫りになった
一次予防において抗血小板薬は「基本的に効かない」
→ だが、アスピリンは“少しは”効く可能性が残っている。
一方、クロピドグレルはアジア人(そして一部白人)には“本当に効かない”人がいる。
→ とくにCYP2C19変異による非代謝型では、血中に有効成分すら生じていない可能性すらある。
☠️ 「効かない vs 多少効く」の戦いだった。
⚖️ その差が、8年という長期追跡で累積的に明確化された。
🧷【解釈2】「クロピドグレルを出される人」は、そもそも不利だった
クロピドグレル群は、アスピリンに耐えられない、合併症がある、薬剤選択が複雑…
→ もともとリスクが高い層に選ばれやすい(適応バイアス)
一方アスピリン群は「とりあえず予防で使ってる」ライトなケースが多い。
📉 処方の背景にある「選ばれし弱者」が、薬の効果以上に死亡率を引き上げた。
🧷【解釈3】「抗血小板薬を使ってはいけない人」にまで処方されていた
一次予防では、抗血小板薬はむしろ害になる人が一定数存在する(例:高齢者・低体重・HGB低値)
クロピドグレルの「副作用が少ない」という誤解で、本来出してはいけない層に処方されていた可能性
結果として、「出さなければ死ななかったかもしれない人」が、出されたせいで死亡した。
❗ これは「薬害」とは呼べないまでも、誤投与の連鎖である。
🧠 総括
本研究において一次予防を目的とした抗血小板薬の使用において、アスピリンとクロピドグレルでこれほど大きな差が出た理由は、単なる薬剤の優劣ではなく、処方選択に伴う臨床的背景の違いや、薬剤抵抗性、さらには本来不要な薬物療法の実施といった複合的要因が影響していると考えられる。
すなわち、クロピドグレルは「効かなかった」のではなく、「効くべきではない人に効かなかった」ことが致命的な結果として顕在化したのである。