元
脳卒中を経験した人の多くが、その後に何らかの痛みを感じるようになる。
ところが、こうした痛みは医療現場で見過ごされやすく、しっかりと治療されていないことが多い。
これは、患者が自分から痛みを訴えることが少なく、医療者側も聞き出す機会がないためである。
また、脳卒中後の痛みに対して、どう対応すべきかという標準的なルールがまだ整っていない。
そこで、どのくらいの脳卒中患者がどんな種類の痛みを経験しているのかを明らかにし、どんな人に痛みが起こりやすいかをくわしくしらべてみたそうな。
アメリカ・ヒューストンの大学病院で、2020年から2022年にかけて脳卒中のあと外来通院していた患者を対象に調査を行った。
患者が事前に記入した健康状態のチェック表や電子カルテの情報をもとに、合計442人のデータを分析対象とした。
痛みを感じていると答えた人と、そうでない人とに分けて、年齢、性別、持病の有無、薬の使用状況などを比較した。
次のことが分かった。
・対象となった人のうち、およそ6割が何らかの痛みを訴えていた。
・その中でも、半分以上の人は2種類以上の痛みを同時に経験していた。
とくに多かったのは、筋肉や関節などの痛み、しびれやヒリヒリする神経の痛み、そして頭痛である。
・しかし、実際に痛み止めを処方されていたのは全体の2割にとどまっていた。
使われていた薬では、ガバペンチンという抗てんかん薬が最も多く、次いでオピオイドと呼ばれる強めの鎮痛薬が目立った。
・また、睡眠時無呼吸症候群(OSA)と診断されている人は、そうでない人に比べて痛みを訴える割合が3倍以上高かった。
過去に違法薬物を使ったことがある人も、痛みを感じている人が多かった。
性別の違いでは、女性のほうが痛みを訴える傾向がみられたが、年齢や他の病気の影響を考慮すると、その差ははっきりとは言えなかった。
脳卒中のあとに痛みを経験している人は非常に多く、その痛みの種類もさまざまである。
ところが、その痛みが十分に評価されず、適切な治療を受けていないケースが少なくない。
とくに、睡眠時無呼吸症候群を持つ人や、薬物使用歴がある人では、痛みを感じやすい傾向があることがわかった。
それにもかかわらず、呼吸を抑える副作用がある薬が、呼吸に問題を抱える人に処方されているという事実は、見逃せない問題である、
というおはなし。
感想:
『脳卒中患者に下手な疼痛治療を施すと呼吸が止まっちゃうかもよ、って言いたいの?この論文は』
✅ この論文が伝えたい「核心」はこう:
「脳卒中後の痛みは放置されがちだが、安易な薬物治療もまた危険である。特にOSA(睡眠時無呼吸)を持つ患者に対して、ガバペンチンやオピオイドを使うと、呼吸抑制で重大なリスクが生じる」
👁🗨 なぜ危ないのか(論文の主張構造)
- 脳卒中患者は痛みを多く抱えている(58%)
- でも痛み止めをもらっている人はわずか20%
- その処方薬の中身を見ると:
の割合が高い
- 一方でOSA(睡眠時無呼吸)を持っている患者が多く、そのOSAが痛みの報告と強く関連している
- OSA患者にガバペンチンやオピオイドを使うと:
- にもかかわらず、非薬物療法の記録はゼロ。医師の関心は薄く、治療も無秩序である
☠️ 言い換えればこう:
「脳卒中後の痛みは治さなきゃだけど、薬をまちがえると 夜に静かに死ぬ リスクがある。特に眠ってる間に」
🧩 著者がほんとうに言いたい裏のテーマ
- 「疼痛管理が“ないがしろ”にされていることの問題提起」
- 「投薬されていても“安全性が配慮されていない”現状への批判」
- 「標準的なガイドラインの不在によるカオス的治療状況」
- 「OSAのような併存疾患を無視した“定型投薬”の危うさ」