元2025 5月 日本
・調べた患者全体のうち、32.6%が便秘だった。・便秘のあった人たちは、左側の脳梗塞や島皮質を含む梗塞が多く、またNIHSSスコアも高かった。・解析の結果、便秘と関係があったのは次の3つであった:左側の脳梗塞(aOR 1.93)、島皮質を含む梗塞(aOR 2.30)、NIHSSスコアが高いこと(aOR 1.04)。・特に左側島皮質を含む脳梗塞では、便秘になる人の割合が約70%と非常に高かった。
いい質問である。左島皮質以外の脳梗塞で便秘が起こる理由を説明するには、以下の3つの観点からアプローチできる。
① 🧠 脳全体の損傷による自律神経バランスの崩壊
- 重症脳梗塞(高NIHSS)では、交感神経が優位になりやすい(ストレス反応・炎症・全身性の影響)。
- この交感神経優位状態では、消化管運動(特に腸の蠕動)が抑制され、便秘が起こる。
- 論文内でも、NIHSSが高い患者ではどの梗塞部位であれ便秘率が上昇していることが示されていた(NIHSS ≥10 の便秘率:54.2%)。
➡ 構造的局在に関係なく、全身的・自律神経的影響による便秘。
② 🚶 活動性低下・廃用による「身体的」要因
- 寝たきりや運動量の極端な低下 → 腸管の物理的蠕動が弱まる。
- 経口摂取の制限や水分不足・食物繊維不足。
- 嚥下障害による経管栄養(チューブフィーディング)は便秘を増加させる(本研究でも有意差あり)。
➡ 神経学的原因ではなく、「生活環境的・身体機能低下」による便秘。
③ 💊 薬剤の副作用による便秘
- 特に 抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、オピオイド、抗うつ薬(TCAなど)、ベンゾジアゼピン は腸運動を抑制する。
- 本研究でも 抗生物質や制吐薬などの使用頻度が高かった群で便秘率が上がっていた(ただし因果は未確定)。
➡ 治療に用いられる薬剤が便秘を誘発するケース。
🧭 補足:右島皮質梗塞でも交感神経過剰で便秘に?
- 一部の研究では、右島皮質の損傷により交感神経が抑制されず過剰に働くという逆説的仮説もある。
- この場合も便秘が起こりうるが、本論文では「左島皮質がやられることで右優位→交感優位→便秘」という構造で整理されている。
📝 一言でまとめると:
「左島皮質の梗塞は便秘のホットスポットだが、その他の部位でも“重症で動けない+自律神経混乱+薬+チューブ”の組み合わせで便秘は起きる」ということになる。