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脳卒中を経験した人の多くが、その後の人生で「もの忘れ」や「考える力の低下」といった問題に悩まされる。実際、脳卒中から1年以内に約40%の人が認知障害を起こすとされており、重い場合は認知症になるリスクが普通の人の50倍になるという報告もある。
これまでの研究では、健康な高齢者を対象に「食事の内容が脳に影響を与える可能性」が示されてきたが、脳卒中を経験した人を対象にした研究は少なかった。そこで、「脳卒中後の人にとって、どんな食べ物や栄養が脳の働きにいいのか」をくわしくしらべてみたそうな。
世界中の論文データベース(MEDLINE、Scopus、EMBASE、CINAHL)にくわえ、Google Scholarなどを使って、脳卒中経験者を対象にした「栄養と認知機能」に関する研究を集めた。
2024年12月までに出された論文が対象で、観察研究と介入研究の両方を含んでいる。最終的に34件の研究(うちランダム化比較試験が16件、観察研究が18件)で、合計24,849人のデータが分析された。
次のことがわかった。
・ エネルギーやたんぱく質をしっかり補うと、脳の働きがよくなることがわかった。特に、脳卒中が起きてから早い時期に始めた場合に効果が大きかった(SMD: 0.62)。
・逆に、ビタミンB群(葉酸・B6・B12)を補うと、かえって認知機能が下がる傾向が見られた(SMD: -0.40)。
・MIND食(地中海食とDASH食を合わせて脳向けにアレンジしたもの)や、植物中心の食事、果物、牛乳、コーヒー、セレン、ビタミンEなどは、脳にいい影響があるようだった。
・バターや砂糖のとりすぎ、カルシウムのサプリメントは、脳の働きを悪くする傾向があった。
・オメガ3脂肪酸や植物のエキスについては、研究によって結果がバラバラで、まだはっきりしたことは言えない。
脳卒中のあとで「考える力」を保つためには、エネルギーとたんぱく質、特にアミノ酸の補給が役立つかもしれない。一方で、B群ビタミンのサプリメントは、特別な理由がない限りあまり意味がなく、むしろ悪い方向に働く可能性もある。野菜や果物など抗酸化物質を多く含む食事や、植物中心の食生活は、健康な人と同じように脳卒中後の人にも良さそうである。今後は、食事の内容だけでなく、「いつ・どのくらい・どんな人に」与えるのが効果的か、より詳しい研究が必要である、
というおはなし。
感想:
『結果で得られた条件を満たす1日に摂る食品例と量の目安を示して。』
✅1日に摂る食品例(脳卒中後の認知機能サポートを意図)
🥗 食品カテゴリ |
📝 食品例 |
📏 目安量 |
🔍 理由/根拠 |
🐟 魚類(オメガ3) |
焼きサケ、サバ水煮 |
1切れ(100g) |
EPA/DHAによる神経保護・血管保護 |
🍗 たんぱく源 |
鶏むね肉 or 豆腐 |
100〜120g |
高たんぱく+BCAAで認知回復に寄与 |
🥬 葉野菜 |
ほうれん草、ケール、モロヘイヤなど |
1〜2束(生換算100g以上) |
フォレート、抗酸化物質が豊富 |
🫐 果物(ベリー類) |
冷凍ブルーベリー or イチゴ |
1カップ(100g) |
ポリフェノールによる抗炎症作用 |
🫒 オリーブオイル |
エキストラバージン |
大さじ1(15g) |
MIND/地中海型の中心脂質源 |
🥜 ナッツ類 |
くるみ or アーモンド |
5〜10粒(10〜15g) |
セレン、ビタミンE、オメガ3脂肪酸代替源 |
🥛 牛乳・ヨーグルト |
無糖プレーン |
100〜150ml |
認知機能と関連報告あり(Ca補給ではなく食品由来で) |
🌰 豆類・全粒穀物 |
白インゲン豆、オートミール |