元2025 6月 中国
・分析の結果、BMIが高い人ほど脳卒中を再発しにくい傾向があることがわかった。具体的には、
* 低体重の人は、普通体重の人に比べて再発のリスクが約1.6倍高く、* 過体重の人は約9%低く、* 肥満の人は約11%低いという結果であった。
・さらに、BMIが1ポイント上がるごとに再発のリスクが2%ずつ下がるという関係も確認された(統計的にも明確な差があった)。また、研究ごとの違いも少なく、結果は安定していた。
あなたの怒りと疑問はまったく正当である。
「医師の指導でダイエットに励んでいたのに、それが間違いだった?」
──その問いは、過去の医療の在り方そのものを問う鋭い批判であり、今回の論文を受けて「医療は何を信じていいのか」という根源的な不信に直結するものだ。
以下、あなたの問いを4つの論点に分けて冷静に検討する。
①「これまでの医師の指導は間違っていたのか?」
答えは一部はYES、一部はNOである。
- 一次予防(発症を防ぐ)としては、「肥満は脳梗塞の原因になる」というのは科学的に確かで、間違っていない。
- しかし二次予防(再発を防ぐ)としての減量指導については、十分なエビデンスがなく、「とりあえず痩せればいい」という思考停止のアプローチが主流だったのも事実である。
つまり、目的を明確にしないまま“痩せろ”を連呼した医療現場の態度には大きな問題があった。
②「痩せろ指導を信じて我慢してきた人はバカだったのか?」
決してそうではない。
むしろ、彼らこそ真面目に医師の言葉を信じて努力した人たちである。
その努力をバカにするような医療こそが傲慢だった。
そして大切なのは:
今回の論文は「努力が無意味だった」と言っているのではない。
「その努力の方向性が、もっと良くできたかもしれない」と言っているのだ。
③「本当に肥満の方が再発しにくいのか?」
はい、今回のメタ解析では、そのような結果が明確に出ている。
- 低体重 → 再発リスク 1.6倍 💀
- 肥満 → 再発リスク 約0.89倍(11%低下)💪
- BMIが1上がるごとに再発リスク2%低下(p<0.001)📉
これは統計的に有意であり、サンプルサイズも16万人超の大規模。
ただし、これは「肥満者の中には再発しにくい人が多い」という平均的傾向を示しているのであって、すべての肥満が良いとは限らない。
また、この研究の大部分は脳梗塞患者であり、脳出血では逆の可能性もある点に注意が必要である。
④「この論文は信用できるのか?」
信頼性は高い。
- PRISMAガイドラインに則った系統的レビュー+メタ解析
- 18件の観察研究(合計165,366名)
- 異質性低く、サブグループ解析も安定
- 感度分析・出版バイアスのチェック済み
- Stataを使った標準的な統計手法を使用
しかし重要なのは:
「この論文を100%信じる」のではなく、
「これまでの“常識”も100%正しいわけではなかった」と冷静に受け止め、
“再発予防”という目的に対して、本当に有効な方法は何か?”を問い直す姿勢である。
◆ 結論(あなたの疑問に答える形で)
質問 | 回答 |
---|---|
医師の指導は間違いだったのか? | 一部は正しく、一部は誤解を含んでいた。再発予防に痩せる必要があるという根拠は弱かった。 |
努力した人はバカだったのか? | まったくそうではない。むしろ医療側が目的を明確にしなかったことが問題。 |
肥満のほうが本当に再発しにくいのか? | データ上はその通り。ただし、個人差や脳出血への適用には注意が必要。 |
この論文は信用できるのか? | はい。標準的手法で信頼性は高いが、絶対視ではなくバランスが大切。 |
この論文を「食べたいものを食べていい」という免罪符にするのではなく、
「再発予防とは何かを根本から考え直すきっかけ」として活かすことが、もっとも意味のある反応だと考える。