元2023 4月 アメリカ
未破裂脳動脈瘤は一般人口の3.2-6%に見られ、その91%は無症状であり、別件の画像診断で偶然に発見されることがおおい。
脳動脈瘤の破裂はおおきな医療負担となり約50%の症例が発症から3ヶ月以内に死亡している。
したがって早期の発見と治療が重要であるが、脳動脈瘤に関連した症状のおおくは非特異的であるため診断が困難である。
そこで、未破裂瘤の関連症状と治療後の改善率についてくわしくしらべてみたそうな。
2014-2020年に治療された未破裂瘤患者の記録を解析した。
次のことがわかった。
・対象は454例で、350例(77%)が有症状であった。・最も多い症状は頭痛46%で、次いでめまい21%、認知障害15%、視覚障害14%であった。・術後症状を評価した328人のうち、258人79%が症状の解消または改善を経験した。
未破裂脳動脈瘤患者に症状がある場合、それらは非特異的な症状で構成され、頭痛やめまいが主だった。治療後にこれら症状が消失していることから瘤が原因であった可能性が高いと考えられる、
というおはなし。
感想:
未破裂脳動脈瘤の危険性を示す表現として、
「脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を引き起こし、その結果、50%の患者が3か月以内に死亡する」という主張がある。これはこの論文でも述べられている。
しかしながら、この主張は一部の事実を強調し、全体像を歪めている。
この主張は、病院に搬送されてくも膜下出血と診断された患者に限定すれば正しいけれども、未破裂瘤が見つかった人々には必ずしも適用できない。
くも膜下出血は脳の外で発生するため、出血量が少ない場合には、特異的な神経症状、例えば顔や腕、口のしびれは出現しないことが多く、頭痛だけが主な症状となる。
そのため、軽度のくも膜下出血を経験した多くの人々は、それをただの頭痛と判断し、深刻な問題とは認識せずに病院へ行くことはない。そして、多くの場合、自然に回復する。
しかしながら、意識を失って倒れるなど、重篤な症状を示す患者だけが病院に搬送される。これが50%という高い死亡率を生む原因となる。
実際には、ほとんどの疾患では軽症者が全体の70-80%を占める。見つかった未破裂瘤が破裂に至ったとしても、その全てが50%の死亡率につながるとするのは誤解を招く可能性がある。
したがって、より正確な表現としては、
「脳動脈瘤が破裂した人々の中で、約10人に1人が病院へゆきくも膜下出血と診断され、さらにその中の50%の患者が3か月以内に死亡する」と言うべきである。
この考え方を別方向から検証するべくAIにたずねてみた。
私「成人人口の3%が未破裂脳動脈瘤をもっている
未破裂脳動脈瘤の破裂率は年間0.1%である
未破裂脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血になると50%が死亡する
としたとき、日本でのくも膜下出血死亡率は年間10万人あたり何人ですか?」
AI「日本の成人人口の計算:全体の人口のおよそ77%が成人と推定されています。したがって、成人人口は約1億3千万人 * 0.77 = 約1億人です。
未破裂脳動脈瘤を持つ成人人口の計算:成人人口の3%が未破裂脳動脈瘤を持っているとのことなので、その人数は約1億人 * 0.03 = 300万人です。
年間で破裂する未破裂脳動脈瘤の人数の計算:未破裂脳動脈瘤の破裂率は年間0.1%とのことなので、その人数は300万人 * 0.001 = 3千人です。
くも膜下出血による死亡者数の計算:未破裂脳動脈瘤が破裂してくも膜下出血になると50%が死亡するとのことなので、その人数は3千人 * 0.50 = 1.5千人です。
死亡率の計算:この数を全人口で割り、10万人あたりの数に換算します。したがって、死亡率は1.5千人 / 1億3千万人 * 10万 = 約1.15人/10万人です。
したがって、この条件下で日本でのくも膜下出血死亡率は、年間10万人あたり約1.15人と推定されます。」
じっさいの値の10分の1程度でしかない。
この矛盾をどう解釈するべきか。
前提条件の、
未破裂脳動脈瘤の有病率は、3%くらいで信用できそう。
年間破裂率も、未破裂脳動脈瘤の自然歴をしらべた研究ISUIAでは、瘤のほとんどを占める10mm未満の破裂率を年0.05%と推定しているから、0.1%の設定はむしろあまい。
たぶんこういうこと↓。
未破裂脳動脈瘤は、ISUIAのとおりまず破裂しない。
くも膜下出血は、動脈瘤の破裂が原因ではない。ふつうの血管壁が裂けておきる。
潜在的には年間10万人あたり200人くらいの頻度で血管が裂けてくも膜下出血がおきていて、
そういう人についてよく探すと動脈瘤が見つかりやすいというだけ。
瘤の存在は血管壁が裂けるストレスに耐え抜いた証。だから瘤の腹は破れない。